第六十六話 星の痛み
樹の精霊ミリスが、私の心に語り掛けてくる…。
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以前はとても調和がとれていました。
文明は自然と共に発展し、同時に、自然も文明と共に栄えました。
人も、自然も、植物も、動物も。時には、ゴーレムを作ったり、他の精霊を呼び出したりもした。
とても豊かで調和がとれていて、居心地がよかった。この星に生まれてよかったと思っていました。
しかし、その時は、静かに、そして、突然に訪れます。
私を奪おうとする人が現れます。
多くの人が、私を守ってくれました。
しかし、その分、私を奪おうとする人も増えていきました。
私を守ろうとする人を欺く人も現れました。
私に近づき、私自身を欺く人も現れました。
両者の対立はどんどん深くなり、やがて、戦争がはじまります。
初めは小競り合いでしたが、次第に激しくなり、結果、致死性の強い毒ガスが星中に撒かれました。
自分の周辺だけは、なんとか私の力で守りぬくことができました。
人々は毒ガスの影響で生産力が低下すると、最後まで醜く、そして、激しく、残ったものを奪い合いました。
今は生き残っている者はいないようです。
人がいなくなっても、星の力は、毒ガスによって失われ続けています。
私には、この星を戻す力は残っていません。
それ以来、私は、幻覚を使い、この星におびき寄せ、眠らせ、星のエネルギーにしています。
もう近づくものを信じることはできません。もう、近づくものには容赦はしない…。
今は、ここに眠っているこの子のためにも、星をもとに戻す必要があるのです…。
どうかこんな醜い精霊の事など忘れ、立ち去りなさい。
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私は泣いていた…。
穏やかな言葉の中に、激しい怒りを感じる。
もう誰かを傷つけることでしか道がない、そして、そんな姿を見られたくはない。
激しい憎悪の中に優しい精霊としての尊厳と、子供を守り育てる覚悟を感じた。
「一度だけチャンスをください…。毒ガスはきっと解消できます。」
-- この星の精霊である私でも、これ以上はできないのですよ。神であるホープでさえそれは難しい。
「おそらく、大丈夫。どうか私に少しだけ時間をください。」
精霊の声は聞こえない…。おそらく私はまだ信用されていない…。
「きっと大丈夫。」
私は、メモリナと一緒に家に戻ることにした。
この星の痛み、私はずっと忘れない…。
私は、メモリナの手を強く握りながら、心の中で誓った。
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