第六十一話 二つの星の秘密
「不思議そうな顔をしているね…。ジェネシスとプリドゥナについて説明しよう。」
メモリナは語りだした。
「私はもともと流浪の旅人に使えるロボットだった。
宇宙船で20人程度の人々と共に宇宙を旅していた。
一つのちょうどいい大きさの星にたどり着く。
私は記憶の役割を果たし、人数は少ないながらもすぐに発展した。
ただある時から、原因不明の病気が起こるようになる。
誰もが、無気力になっていく。
いくら調査しても原因がわからない。どんな血液検査しても病気が見つからなかった。」
「人やロボットからは見えない思念体にとりつかれていたのね。」私は言うと、メモリナは頷き、さらに言葉を続けた。
徐々に生気が失われていく…。
見えない敵に襲われているような感覚…。
「もうこの国はだめかもしれない…。
おまえたちだけでも、一旦近くの小さなあの星へ退避してくれ…。」
「星に着いたらこのパスワードを使って記憶を封印しなさい。
決してこの星に近づかないように、我々のことを忘れるんだ。
その封印はこの鍵を使えば解除することができる。
我々は、この星を正常にもどしてからそちらへ向かい、いつか必ず解除する。」
「その言葉を聞いて、私たちは、彼らをジェネシスに残し、旅立った。
この星に無事にたどり着いた私たちは、この星をプリドゥナと名付けた。
そして、私は、ある程度文明が発展したのを見守ると、彼らの言葉通りに自らをパスワードで封印するとともに、記憶も封印することにした。」
この封印の仕組み、地球の技術でも見たことがある。確か…。公開鍵と秘密鍵。
公開鍵で暗号化する。復号化するには秘密鍵が必要となり、途中で、もし暗号化されたデータを取られたとしても、秘密は守られるという仕組みだ。
この場合は、秘密鍵をジェネシスに置いたまま、プリドゥナは公開鍵で自らを封印したってことだ。
そして、プリドゥナはそのまま、ジェネシスにある秘密鍵による解除を待っていたってことね…。
メモリナの語りに、私は言葉を継いだ。
「ジェネシスに残った人々は、やがて無理を悟り、プリドゥナのパスワードで開くようにして、鍵自体を封印した…。
プリドゥナも噴火の影響で滅んでしまった…、ということね。」
メモリナは頷いた。
プリド文明の歴史には、記載のない出来事。
おそらく記憶の封印と共に、プリド文明の歴史が改ざんされている…。
プリド文明の歴史は、ジェネシスの歴史と組み合わせて作られたようだ。
プリドゥナは、この公開鍵で記憶の封印すると同時に、ジェネシスに近づかないよう忌み嫌うようになる。
ジェネシスは、その公開鍵を鍵として、プリドゥナの封印を解くための鍵を封印する。
プリドゥナの公開鍵をジェネシスに持っていかないと解けないのに、プリドゥナではジェネシスに近づかないようにしている…。
「パラドクスね…。」
「あぁ、解いてくれて本当に感謝している。」メモリナは答えた。
「私は、封印と同時に、記憶媒体の役割も持っていた。プリドゥナで何が起きたかは随時把握している。」
「この星はもう十分に発展している。記憶媒体としての私は不要だろう。
ドーナツはジェネシスを見ることにしたようだし、よかったら、ドーナツの代わりに私を連れて行ってくれないか?」
「そうね。ドーナツの事は残念だけど、私は歓迎よ。」私は答えた。
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