第五話 文明の進化
「そんなにお金つかって大丈夫ですか?」
「啓示の後、様子を確認していますか?」
「人には伝わっていないようですよ。
それにアロマ焚いても人には届きませんよ。」
ミカエルの言葉に、私はハッとする。
最近の文明の様子を思い返す。
この文明に合わせて、私もオシャレして、匂いにも気を使ったつもりだった。
まさか、まったく伝わっていなかったなんて……。
ミカエルのやつ、最近ずっとニヤニヤしてた。
さては、前から気づいていたな。
早く言ってよ…。あ~、腹立ってきた。
確かにこの文明の人たちは睡眠時間が少ない。
夢の中で語り掛けて、そろそろ反応が返ってきそうって頃に、多くの場合、騒音に邪魔される。
今になって、あのうるさい目覚まし時計にもイライラしてきた……。
落ち着け、私。そう、私は神、全知全能なんだから。
ミカエルのいうことは正しい。
たとえ啓示を伝えられたとしても、夢としてすぐに忘れ去られてしまう。
覚えていたとしても、日々の生活が忙しすぎて、夢を振り返る時間なんてない。
やっぱり、ミカエルは正しい。
もっと前に助言されていても、結局何も変えられなかった。
そう思うと、ミカエルの笑顔には、どことなく暗さもあったような気がする。
啓示を与えるには、文明が成熟しすぎている。
それか、もっと工夫して伝える必要がある。
落ち着いてこの文明を見返してみると――とても優れていることがわかる。
物理学、化学、社会学、農学、etc。
衣、食、住、それに、移動や観察、物体の操作など、神様にとってはどれも簡単な技術。
神様だから当たり前に使えている技術を、地球上で人が実現するには、どれをとっても膨大な学びと努力が必要だ。
気楽に生きている神とは比べ物にならないほど、文明は進化している。
私は、気に入ったアロマを焚きながら思考を巡らせる。
私には神の力がある。なのに何かが足りていない。
無理だからあきらめる?そんなことではだめ。
人々はどうしてきた?神の力なんて持たないのに、驚くほど多くのことを成し遂げてきた。
もし私が人だったら、どう考える?――解決方法のヒントは、そこにある気がする。
……そんなことよりも、お金使いすぎた。
オシャレアイテムって、どうしてこんなに高いのかしら。
かといって、自分で作ると、なんだか幼稚に見えるし……。
経費で落とせないかしら……。
私はそっと、神のアルバイト情報誌に手を添えた。
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