第五十六話 天界
ここは天界の中央区画の一室。
ふと目を覚ます。
椅子に座っているようだ。
何気なく見渡すと、思念体が転がっている。
私は、駆除を依頼した。
「もうこんな時間か、若干時間感覚がおかしいようだが、いつも通り未来予知をはじめよう。」
そんなオルディアの日常と同じように、天界では徐々に日常が取り戻されていった。
ときおり、「問題ないと言っていただろう」「言っていない」という食い違いの言い争いが起こっているようだが、
そこは神様、大きな問題にならず、そっと元通り、日常に戻っていく。
思念体があちこちに散らばっていた以上、違和感を感じる神々も多かったが、
特に大きな影響は出なかったため、「何も問題はなかった」ということになっている。
そんな中、天界の上層部だけは様子が違っていた。
他の皆は何となく違和感のある日常を過ごしていたが、上層部は、一時的に天界の大部分の機能が損なわれていたことに気付いていた。
ひっきりなしに思念体の駆除の依頼が届いている。間違いなく、思念体に思考を乗っ取られていたということを示していた。
上層部のみで緊急の集会が開かれることになった。
集会の空気は重い。
「我々は全知全能であるはずだ。思念体に乗っ取られるなんてことがあるのか?」
「しかし、現に様々な報告が上がっている、乗っ取られていたことは事実だ。」
「では、なぜ思念体から解放された?だれが思念体から解放してくれた?
それを口にする神が現れないではないか。」
神々は、語るよりも沈黙することを選び始めていた。
「星の観察」の報告としてホープの代理ミカエルから地球の報告が届き、場をさらに重くした。
「小説にでてくる数学の予想を考えている地球人が、思念体を撃退した。」との報告だ。
さらにミカエルの報告書にはこう追記されている。
「思念体は、人の読む小説にでてくる数学の予想について考え始め、思考が止まらなくなったものと推測される。」
思念体は思考を念波により共有することがあることは知られている。
この報告が正しいとすると、この地球人が天界をも救ったということになる。
我々が思念体に易々と乗っ取られている中、それを救ったのがもしかしたらこの地球人かもしれない…?
簡単には信じられない。この報告は真偽不明として一旦隠蔽された。
思念体による天界乗っ取り事件は、「時限的なもの」、つまり、もともと時が解決するようなものだった――とされた。
思念体の調査を徹底的に行う必要がある。
ただ調査しようにも、迂闊に近づくと再び思考を乗っ取られる恐れがあるし、思念体である以上、物理的に拘束はできない。
神の体はすべてを司る以上、思念体でさえ触ることはできるのだが、手で拘束し続けるのは難しい。
まずは、調査方法というより、そもそも調査のために思念体をどのように確保するかを考えねばならない。
思念体の調査には時間がかかりそうとわかると、次の策を考えないといけない。
この集会はとても長引きそうだと、参加している神々は、静かに覚悟し始めた。
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