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私の地球(ほし)がきえちゃった  作者: よむよみ
第五章

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第五十四話 思念体の誤算

我々は、アビュラス。

そして私は、カンと呼ばれている。


新しい星を見つけた仲間からその後の連絡がない。

相手は知能の低い種別のはずだ。時間がかかるわけがない。

定期連絡の時間も、とっくに過ぎていた。


「おかしい。連絡しろ」

私は、近くの仲間に命令した。

「400001、400002、…。」仲間は、奇妙なつぶやきを始めている。

「おい、お前、どうした。何があった。

問題が解けない?

俺にも見せてみろ…。

我々は全知全能だぞ。

誰にでも解けそうな、簡単そうな問題じゃないか。」


自分自身、仲間より思考能力がとても高い。

それゆえいつの間にか、我々の長であるカンと呼ばれるようになった。

別に自分自身何とよばれてもあまり気にしなかった。

ただ、いつしか仲間を統制する役割を持っていた。

あっという間に、1億まで成立しているという計算を終える。


「1億までにはみつからなかったか…。

こうなりゃ総動員だ。全員の思考をつなげ。

俺は1億から100億を計算する。

お前らは100億から200億まで計算しろ。

それと、偶数は無視しろ。

始めた数より下回ったら、次の数字に進め。

こんな計算、すぐに終わらせてやる!」


簡単そうだと、次々に仲間が計算に加わっていく。

証明することはできなさそうだ。ならば反例を見つけられるはずだ。

そうでなくても、反例を探すうちに証明の糸口を見つけられるかもしれない。

我々は全知全能だ。そう信じていた。

いや、そうであるはずだった。


思考が計算によって汚染されていく。

そしてその汚染が一気に広まっていく。


天界や、ドーナツの向かった星にいた思念体も含めて、すべてが計算によって汚染されていく。

人々を支配していた思念体も、神々を支配していた思念体も、次々に延々と計算を続ける。

もはや、支配するための思考をするための余裕はない。

頭に取りつくための思考の余白すら、残されていない。


我々は皆、もともと考えることがとても好きなのだ。

答えを得ることよりも、問いの中に身を沈めることを好む。

ずっと問題を考えていたいのだ。

新しい問題が与えられると、我々は喜び勇んで思考の泥沼へと足を踏み入れる。

思考の迷宮に沈みながら、我々は自らの知性を試していく。

そして、それが心地よいのだ。

答えが出なくても構わない。

むしろ、出ないほうがよい。

無限に続く思考の連鎖こそが、我々にとっての至福の時なのだ。



思念体は残念ながら全知全能ではなかった。

それゆえ、考え続け、知能を高め、神々を操るまでに至ったが――全知全能ではないがゆえに、結果を知らず、無限に計算を繰り返すこととなった。

そして、全知全能への自信が「あきらめる」という方法を切り捨てていた。


すべての思念体が、計算という汚染に染まっていった。

そして、計算の泥沼にはまった思念体は、次々と支配していた生命体を解放することになった。

それは、敗北でもなく、忘却でもない。

支配という欲望よりも、思考という快楽の方が甘美である――そのことを思い出したに過ぎない。

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