第四十六話 未来予知
天界では、未来予知は封印されている。
未来の変更を容易に行ってはいけない決まり。
未来を予知した場合は、その予知通りに行動することが義務付けられている。
そして結局、予知通りの行動しかできないのであれば、そもそも未来予知を禁止にした方がよい。
そんな天界でも、唯一未来予知が許されている神がいる。
それが、文明発展コンテストに参加したディアノアの父、天界の未来を司るオルディア。
オルディアは、新聞を読み、未来予知で読んだ新聞と異なる箇所を報告する――それが“未来予知”としての彼の仕事である。
オルディアは、異なる箇所を見つけても、決して自分で対応しようとはしない。
淡々と報告する姿こそが、“予知された自分”なのだ。
地球には、バタフライエフェクトという言葉がある。
“ブラジルで一匹の蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる”
初期条件のわずかな違いが、時間とともに予測不能なほど結果を変えてしまうという――これはカオス理論の一部である。
小さな動きの差でも、未来に大きく影響を与えてしまう可能性がある。だからこそ、未来予知の仕事には、淡々とした姿勢が求められる。
差異を見つけてすぐに行動を起こしてしまうような、大胆な神は、未来予知の職には向いていない。
オルディアは前職、天界の警備をしていた頃から、黙々と真面目に淡々と仕事をしていた。
むしろ真面目すぎて、「多少大目に見てよ。」「少しはこっちの気にもなってくれよ。」「もっと全体を見て行動してくれよ。」といったように、融通の利かない真面目な男と周囲から評されていた。
そんな評価されない前職ではあったが、“未来予知”の仕事ではその性格が必要とされた。
オルディアは、どんな時でも淡々と仕事をすると期待され、天界で唯一、未来予知の仕事を任されることになった。
もちろん、コンテストなどプライベートの時は、未来予知は封印されている。
コンテストの時ディアノアの様子に「誰よりもかわいいだろう!」と叫ぶぐらいの親ばかっぷりは誰にも予想できなかった。
もし予知していたら、馬鹿正直なオルディアの事、緊張して動けなくなっていたに違いない。
馬鹿正直さで認められているが、親ばかが過ぎるのは大きな懸念点ではあった。
ただ、新聞を読む一時の間、注意して行動するだけの話で、さほど問題ではないと考えられていた。
ここは天界の中央区画の一室。
不安定さ、不確定さが嫌われる、未来予知の仕事場所であるこの一室は、椅子や机は固定され、不要なものは一切置かれていない。
そんな一室で、いつも通り新聞を読み、いつも通り予知された新聞と差異がないことを確認すると、いつも通り「異常なし」と報告する。
それが、真面目で融通の利かないオルディアの日常であった。
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