第四十話 アルクの違和感
「おりゃぁぁぁっっ」
僕はオルドレムの額のクリスタルめがけて切りかかる。
キィィィン……。不思議なことに手ごたえは無かったが、クリスタルが砕ける音がする。
額のクリスタルが壊れ、オルドレムが砂となって溶けたことを確認すると僕は、振り返った。
「やった!倒せたよ!」
誰もいない。不思議だ――さっきまで、確かに誰かがいた気がするのに。
オルドレムを倒した証拠となるクリスタルのかけらを手にして、ギルドに戻る。
「親父、オルドレム倒したよ!」
「おぉ、ご苦労さん。さすがアルクだな。これからもよろしくな!ほら、報酬だ。」
“いつもの”ギルドの親父から、報酬を受け取った。ここでもどこか違和感を感じる。
自分は8才の頃、道で泣いていた。
酒飲みの父親に家を追い出された。
日ごろから、酒を飲むたびに殴られていた。ある時、ささいな理由から、家を追い出された。
今となっては、なんで追い出されたのか、どんな言葉で追い出されたのかなんて覚えていない。
酒飲みの親、殴られる子供。今ならわかる、どこにでもある話だ。そして、そんな子供たちを救う社会の優しさはある。
でも当時の自分には、家は世界の全てだった。
そんな家を追い出された。ただただ、何もわからず歩き続けた。そして、わけもわからず泣いていた。
そんな時、声をかけてくれる女の子がいた。自分より年下の女の子だ。
「大丈夫?家に帰れる?親は?えっと、困ったな。そうだ、宿屋に連れて行こう。あそこなら一部屋ぐらい空いているはず。
宿屋のおばさん優しいし、それに、お金に困ったらギルドに来るよう言っておけば大丈夫かな?
名前は?アルクっていうの?そっか、アルク、一緒に行こう!」
宿屋の一室で一晩中泣いた翌朝、朝食をいただき、宿屋のおばさんに言われた通りギルドへ向かった。
「あっ。おはようアルク。少しは元気出たみたいね。
う~ん。アルクのできそうなお仕事はっと。まずは、植物採取がいいかしら。
多分できると思うけど…。できる?う~ん。今日時間ありそうだし私もついていってあげる。」
声をかけてくれた女の子は、僕より小さいのに、ギルドの受付をやっているようだった。
自分の力で稼いだお金で食べたご飯は、よりおいしかったし、宿屋も安心できた。
僕は、その女の子に、生き方を教わった。
だんだん曖昧になっていく記憶。
今思い返すと、それは女の子ではなくギルドの親父だった気がするし、
宿屋のおばさんも…あれっ、宿屋の受付は“いつも”ミカエルじゃないか。
宿屋に着くと“いつも”通り声をかける。
「ミカエル、ただいまー。」
「あら、お帰り、今日の討伐、大変って話だったけどどうだったの?」
「あぁ、問題ない。いつも通り片づけたよ。そういえば今日ってついてきていなかったっけ?」
「何言っているの?私はいつもここにいるわよ。」
「なんか君によく似た女の子と一緒にでかけたような…。今までよくギルドで出会ったような…。」
「そんな子、見たことないわよ。……アルク、夢でも見たのかしら?」
「あっ。そうだよね、ごめん。」
「へんなアルク!」
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