第二話 神の啓示
私は自室に戻り、即席で作ったソファーに腰を下ろし、コーヒーを飲みながら思考を巡らせる。
「まずはメルトドラゴンのおさらいね。」そう言って、天界の生命図鑑を開いた。
見た目はいわゆるドラゴン。
成体のドラゴンは、誕生したばかりの星に卵を産み付ける。
卵は植物のように根を張り、星に固定される。
そして約2000年かけて孵化する。
孵化したばかりのドラゴンは、まず星を無に帰し、それを食べて成長する。
少しずつ食いちぎって食べるのが面倒だからって、一度粉々にしてしまうだなんて……。
それにそのバカげたエネルギーを、卵に生える根で寄生した星自身から吸い取っている。
考えただけで、なんて大胆で凶悪な寄生生物なのかしら。
でも、原因がわかったのであれば解決は簡単ね。卵を壊せばいい。
幸いこの星には人がいる。人に啓示を与えて、卵を破壊してもらおう。
人に啓示を与えるため、夢に入る準備をしなくちゃ。
神の啓示といえば――頭上に黄色く光るリング、白が基調のワンピース、手には分厚い本、それと後光ね。
後光で顔を隠したいわけじゃないの。私は神様の中でも、かなりの美人なんだから。
夢の中で話しかけるのだから、少しぐらい影があった方が信じてもらいやすいの……たぶん、きっと。
若い女性の夢の中に入り、そっと啓示を与える。
「日沈む方角、洞窟奥深く、根をはる災厄の卵眠る。
その卵はこの世界を崩壊へと導くだろう。
卵を砕き、星を救いたまへ。」
あまりの滑稽な様子に、ミカエルは苦笑しているようだった。
自室を薄暗くし、黄色いリングを頭上にぶら下げ、旧時代風の白い服をまとい、神様のマニュアル本を手に、
後ろから弱い白光をあてながら、ぶつぶつと啓示を唱える私――もし私だったら大爆笑していたわ。
神の啓示ごっこはこの辺で終わり。もう十分伝わったはず。
そして、2000年の歳月が流れた。
文明は進化し続けるかに見えた――
「うまくいかなかったようですね。」
「ええ、失敗だわ。」
神の啓示が伝わらなかったわけではない。
ただ、卵を壊すには文明が未熟すぎた。
宇宙を飛び回る生物の卵には、木や鉄の道具では傷ひとつつけられなかった。
あまりに壊せないため、卵は逆に信仰の対象となり、卵を破壊しようとする者を弾圧するようになった。
やがて文明の発展とともに、卵を守る奇妙な宗教となり、文明とは隔離され洞窟で暮らすようになってしまった。
「最期、卵を見守っていた人たちの表情みた?」落胆した私は、ミカエルに同情を求める。
「ええ。星が壊されるとも知らず、ついに自分たちの時代が来たと、心から喜んでいました。」
「天界で解決策がないということを、甘く見ていたわ。簡単に片付く問題ではないということね。」
私は、自身の無力さを振り払うように、再び地球の時間を戻した。
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