第二十話 筋肉のマスクル
俺はマスクル。
天界の外敵に真っ先に挑む特攻隊長だ。
正体不明の敵にも、真っ向からぶつかる。
生傷は絶えないが、俺はそれを誇りに思っている。
モットーはただ一つ――「よく食べ、よく鍛え、よく眠る。」
傷に強く、回復の早い、健康的な体を作る。
それが俺の信念だ。
だから、日々鍛える。筋肉は裏切らない。
この文明では、俺は冒険者としてギルドに所属している。
危険な動物やモンスターの情報が入れば、直ちに駆けつけ、即時解決。
最近では、俺の信念に共鳴した仲間も増えた。
穏やかな日には、一緒に筋肉を鍛えている。
モンスターを倒した後、筋トレの後、仲間と飲む酒は最高だ。
「いよいよ明日ですね。」
仲間の一人が声をかけてくる。
この世界では、コンテストのモンスター情報は天のお告げとしてギルド経由で伝えられている。
「ああ、そうだな。今日は早く寝ろ。
明日のモンスターはいつもよりだいぶ強いらしいが、やることは変わらない。」
「見つけ次第、速攻で倒す。ですね。」
「もちろんだ。」
俺たちは手をがっしりと握り合った。
翌日、仲間たちと山の中腹へ向かう。
普段と変わらぬ岩肌が広がる場所――ギルドの情報によれば、ここに現れるらしい。
地底から地響きが鳴る。
低く、不穏さをまき散らす音。
辺りの地面が波打っていく。
次の瞬間、地表が裂け、巨大な腕が粘土の中から突き出した。
オルドレム――ゴーレムだ。
人の三倍、いや四倍はあるか。
腕は異様に長く、足は岩柱のように太い。
体は岩石質、可動部は粘土状。
動くたびに粉塵が舞う。
額には青白く輝くクリスタルが埋まっている。
「おら!おでましのようだ!みんなでやるぞー!」
俺は、気合を入れなおして、叫んだ。
「現れたぞ!かかれー!」「いけー!」「やれー!」
仲間たちの掛け声が、地響きにも負けず響き渡る。
ゴーレムは動きこそ鈍いが、攻撃は重力まかせ。
多くの攻撃は避けられるが、時折負傷する者もいる。
だが、負傷者は下がって回復し、また前線に戻る。
一撃入れて、疲れたら、下がって、回復して、また殴る。
それが俺たちの流儀だ。筋肉は、休ませるとさらに育つ。
剣では効果が薄く、刃こぼれもひどい。
俺はすぐにハンマーに持ち替えた。
岩は筋肉でたたき割るしかない。ハンマーはそのための武器だ。
ハンマーの一撃が、ゴーレムの装甲を少しずつ削っていく。
そして――俺の一撃が、ゴーレムの左足を破壊した。
巨体がぐらつく。左足を失い自重を利用した攻撃の威力は半減、動きもさらに鈍くなる。
岩を持ち上げて投げる攻撃に変わったが、動きは単調でさらに読みやすくなった。
仲間たちも続けて次々に攻撃を打ち込んでいく。俺も、もう一度振りかぶる。
ついに、ゴーレムの動きが止まる。
「勝ったぞー!」「えいえい、おー!」
鬨の声が山肌に反響する。
俺たちの筋肉が、神の試練を超えた瞬間だ。
天界でも、歓声が上がっているようだ。
筋肉派の神々が拳を突き上げ、「筋肉を讃えよ!」と口々に叫んでいたらしい。
よく食べ、よく鍛え、よく眠る――それだけで、神の試練にも勝てるってもんだ。
そして、勝利の後は、筋肉にご褒美を。今日の酒は、間違いなく最高だ。
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