第十四話 外れる予言という日常
しばらくして私は、ドラゴンによる地球消滅の可能性は低いと判断し、次は地上の様子を見ることにした。
大きなモニターに都市の様子を映し出す。
「地球がそんな簡単に消滅するわけないだろ。
滅びる日は未来ということにして、今は安全と思い込みたかっただけさ。
いつもの迷惑な話さ。」
「でも何か起きているかもしれないじゃない。」
「まだ、びびってるのか。どこもかしこもいつも通りじゃないか。」
「ほらな、古文書の予言なんてあてにならないのさ。
古文書の予言なんか信じていたら地球が何個あっても足りないよ。
そもそも、未来の技術が本当にあったかどうかだって疑わしい。」
「わかった、わかったから、早く仕事に戻りな。」
予言の日が何事もなくすぎると、星は急速に落ち着きを取り戻しはじめた。
その雰囲気を感じ取ったのか、逃げていた人たちも、「休暇していただけ」と言い訳しながら、そそくさと仕事に戻った。
ひと月前に行われた打ち合わせの情報も、まるで最初から存在しなかったかのように、議事録ごと消されていた。
古文書の予言が外れたことで、予言に惑わされていた特権階級の人たちは、関連するすべてのことをなかったことにしたようだ。
自室のモニターで星の様子を確認していたホープ様が、静かに部屋から出てきた。
両手を胸の前で強く握り、まだ半信半疑の様子。
「これって……うまくいったってことよね?」
「ええ。大成功です。おめでとうございます、ホープ様!」
「そうよね……これって成功よね。いまいち実感がわかないのだけど。」
「メルトドラゴンは周囲の環境に合わせて爆発、中和していたようです。
どちらも必要ないと判断すると、ただ食べるだけのかわいい子ドラゴンになるみたいですね。
それと、この生物学者もすごいですよ。すでにこの子ドラゴンを利用して一つ新しい中和剤を見つけたみたいです。」
ホープ様は、うれし涙に満面の笑顔で、様々な星の様子をモニターで見ては「すごーい」と、繰り返しはしゃいでいた。
こんなに喜んでいるホープ様を見るのは、初めてだった。
「ちょっと疲れたから、長めに休む……ふぁ~。」
ホープ様は、メルトドラゴンに関する追加情報をまとめ天界に送ると、そう言い残して、再び自室へ戻った。
古文書の予言が外れたという事実の裏に、過去何度も繰り返してきたホープ様と人々の挑戦があったこと、そして、
過去の歴史の中では生まれなかった唯一の閃きがあったこと、地上の人々が気づくことは、きっとない。
「ホープ様。本当にお疲れさまでした。ゆっくりとおやすみなさい。」
私は、これから先、永遠に続くであろう日常をモニターで眺めながら、
ホープ様と人の試行錯誤について静かに振り返り、余韻に浸っていた。
「ホープ様はいつも人をほめたたえているけれど……ホープ様も、十分すごいですよ。」
気づかないうちに、私は独り言をつぶやいていた。
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