転機
その日、領主館に一人の来訪者がいた。
帝国を根城にする教会の使いだ。
平時なら教会で政務を行っているはずの男がすこし後味の悪そうな顔で訪れたことに、マルクスは多少の不安を覚えていた。
応接室に通された男は、現れた領主に向かって一礼をするとすぐに口を開いた。
余り時間が無いからか、用件だけを伝えるつもりのようだ。
「領主様、緊急のご連絡がございます。本日早朝、魔王の大軍が国境を越えました」
「な、何だと!」
「その数、約五千。やつらは本気です」
「はい。すでに先発隊と思われる魔物達は、国境を越え侵攻しております。後発隊の到着も、それ程時間の開きはないと予想されます」
「なんてことだ……」
領主は頭を抱えた。
魔王軍の本隊が動くことは稀であり、今回のような動きは数百年に一度あるかないかのものである。
それだけに、その衝撃は計り知れないものだった。
教会の男が一礼すると足早に去っていく中、領主は我に返ると、慌てて部下達を呼び出す。
そして、領主館にいる騎士達を集め、号令をかける。
その数は百に満たないが、それでも領民の避難をさせるには十分な数だ。
騎士達は領主からの指示を受けて、領民の避難誘導と護衛を始めた。
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