英雄ソルノッテは闇を穿つ
この物語はフィクションです。
文明が栄える遥か昔。人々は闇に覆われた世界を生きていた。
闇の使徒「イグヴァイス」に因って侵されたこの地に、その青年は突然現れた。
高い城壁に囲まれた城門の元までやってきたその青年は、王への謁見を願った。城門の門兵は追い返そうとしたが、慈悲深い王によって迎えられた。
王座まで案内された青年は片膝をつき、王に頭を下げた。青年の名はソルノッテ。闇の使徒を倒すべく、地平線のはるか向こうからやってきたという。
「私の父は太陽神ソールデウスにございます。父はこの世界に光をもたらすべく、私を作りました。故に、私は太陽の力を持ち、闇を祓う力を宿しております。必ずや闇の使徒を打ち滅ぼし、世界に希望の光を射してみせましょう。」
城の者は、ソルノッテの言うことを全く信じなかった。事実、闇を祓おうと立ち上がった勇敢な者たちは、これまで何人も現れた。しかし、その全てが闇に飲み込まれていった。
ソルノッテと真正面から向かい合い、灼熱の太陽のように輝きを放つ瞳を見た王だけは、ソルノッテを信じた。支援を申し出た王に対してソルノッテは深い感謝を述べた後、「水と食料を少し分けていただきたく存じます。」と恭しく言った。
王は武具の用意も申し出たが、ソルノッテは首を横に振った。王はせめて命を懸ける勇敢な青年を称えたいと、王家に伝わる秘宝であるエメラルドの腕輪を贈った。
「その腕輪は持ち主の望む道を照らしてくれる。闇の使徒の元まで案内してくれるだろう。闇を晴らした暁には、主の望むもの全てを与えよう。」
ソルノッテは王の厚意に感謝を伝え、深く礼をした。王の用意した水と食料を受け取り、ソルノッテは旅立った。
エメラルドの腕輪は王城を出て東の方角へ緑の光を伸ばしていた。
闇の使徒「イグヴァイス」の生み出した闇に包まれた世界は、目を瞑っているときのように真っ暗である。先ほど王から贈られたエメラルドの腕輪は、王城を出て東の方角へ緑の光を伸ばしていた。光はかすかなものであったが、常闇において希望にも似た輝きであった。
光に従って東に進むと、険しい森がソルノッテを飲み込んだ。木の葉が激しく風に揺れる。辺りが異様に騒がしくなった。ソルノッテは姿勢を低くし、周囲を警戒する。音は次第に大きくなり、人の笑い声のようにも聞こえてきた。
「おいおい。こんな森に人がいるぞ。」
甲高い声が響いた。瞬間、その声に聞き入るかのように風は止んだ。エメラルドの腕輪が放つ光だけでは、周囲を照らすことはできない。声は反響したため、どこから聞こえたのかは分からなかった。ソルノッテは警戒しながらも、声の主に呼びかけた。
「声の主よ、姿を現せ。私はここにいるぞ。」
返事はない。ソルノッテは続けた。
「私の名はソルノッテ。地平線の彼方、太陽のいずる地で生まれ、闇を祓うべく千里の道を越えてきた。声の主よ。あなたは何者だ。」
答えは返ってこない。代わりに、せせら笑う声が響いた。
「闇の使徒を倒す?おいおい。こいつ正気じゃねぇぜ。
お前みたいな命知らずはこれまでにもたくさんいたが、全員使徒の元に辿り着く前に闇に飲まれて消えていった。お前もそうなるだろうさ。」
「それがどうした。例え体が闇に飲まれたとしても、太陽のように燃える魂は決して飲まれない。世界に光をもたらすその日まで、私は何度でも蘇ろう。」
ソルノッテの言葉は一切の迷いが無く、自信と希望に満ちていた。
しかし、声の主はソルノッテを馬鹿にするように鼻で笑うだけであった。
「そこまで言うのなら打ち滅ぼしてみせよ。その魂ごと飲まれぬようにな。」
その言葉を最後に、声は聞こえなくなった。
ソルノッテは決意を新たに森の中を進むのであった。




