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最後の時間

 

「っぐ………」


 グレスビーは魔法が使えるのに、こちら側が使うことは不利になる。圧倒的な不利な関係になる故、闇化属性との闘いは慎重さが求められる。一瞬で、確実に仕留めなければ負けなのだ。


 誰かが魔法を防ぎ、誰かが物理的なダメージを与える。複数人の連携が必要となる。



 グレスビーの動きを長く止めることは出来ない。

だが、ミオラたちが作ったこの少しの間に、多くの準備が整った。



「突撃しろっ」

 その声を皮切りに、大勢の応援がかけつける。多数の矢が放たれ、的となる魔獣たちにふりかかる。刺さる寸前まで透明化の術をかけられた矢に気づいた時には、防ぎようがない。


 あまりにも大きな、そして鋭利な矢に、魔獣たちはのたうち回る。その隙をつき、なんとか体勢を立て直したエドルド、ホア爺でとどめを刺す。





「っ!?」

 ミオラの持つ手を数人の屈強な隊たちが支え持つ。




 グレスビーの前にロナルドが現れる。

 っ!?

「この野郎っ…………」


 ロナルドの剣の腕は、武を極めたものに比べれば大したものではない。だが、彼の能力は相手の急所を一瞬で見抜く。それ故、学園の安全を司る精鋭たちのトップを任されているのだ。



 最小限の動きで、一気にグレスビーの魔力の核を破壊する。魔力の源を壊されれば、それはただの獣になる。体勢を崩すその頭を鷲掴みにし、精神に介入する。


「っ!?」

 全ての気力を絶たれ、意識を保てなくなったグレスビーは、そのまま後ろへと倒れた。



 大きな砂埃からアリシアを守るように抱えているのは、彼女の父、ハッベルトだ。


「アリシア……」


 アリシアの魔力が枯渇しており、なんとか生命保持をぎりぎり保っていることに気づく。前に抱えた時もそうだったが、娘を抱くなど、いつぶりだろう。



 彼女が生まれた日、妻に感謝し、元気に生まれてくれたことを喜び抱き上げた。

顔色、産声、手足の力強さ、どれをとっても健康そのもので、愛しいと思った。


 自分とは違う、周りから愛される人生を送って欲しいと願い、数少ない知り合いの中でも、最も心の広いロナルドのミドルネーム『フロム』をつけた。



 だがその直後、身体の弱かった妻の状態は急変し、それから回復するまで長い時間を要した。必死に財を回し、治療法を探して研究する日々で、アリシアが体調を崩したと聞いた日も、症状で指示をするだけで、顔を見に行っても寝ていることがほとんどだった。


 彼女は強く、健康に生まれてくれたおかげで、妻に集中することが出来たが、気づいた時にはもう、大人のレディへと成長していたのだ。



 塔に来る時、妻から父親らしいことをする最後のチャンスと背中を押された。もう彼女は大人なのだ。地位の低い立場ではあるが、薬で名を上げれば、妻の体調にも、アリシアの良い縁談相手を探すチャンスだ。自分には、これしか出来ないのだから。


 そう思っていたが……冷たくなった娘に後悔が押し寄せる。



「禁忌を使ったのだな……ミオラ君」

「はい」

 急いでかけつけてきたミオラは、優秀な助手で、身分が下のはずの自分に熱心に教えを乞い、一緒に治療や、闇化属性への策を講じてきた。透明化の矢も2人で作った。



「私の魔力をアリシアへ、頼む」

「……任せてください」


 親子であれば、少量の魔力でも効果は強く期待でき、コントロールもしやすい。





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