5分で戻ります
「あぁ、助かった……」
ホア爺は片手で大蛇を叩きのめし、砕け散った魔石を拾い上がる。
「すぐに駆けつけられず申し訳ございません……自力で脱出されるとは、さすがでございますね」
「いや……アリシア嬢が魔力をくれたおかげでなんとかなった……」
守ると約束したのに、逆にアリシアの命をかけてしかあの状況を回避出来なかったことが許せないでいた。あれほど、魔力の枯渇となる状況は避けろとホア爺に叩き込まれたというのに。
アリシアの悲鳴が聞こえた瞬間、あとさき考えずに動いてしまった。もちろん、そうしなければ間に合わなかっただろう。だが、結局1人ではどうにも出来なかった。
アリシアの読みどおり、ホア爺でも中に閉じ込めれた2人を助けるのに手間取っていた。あのまま助けを待つだけでは、魔力はとっくに尽きていただろう。
「……それにしても、今までとは比にならない程のトラップが作動しましたね」
いつもなら小言の多いホア爺は静かに言葉を返す。エドルドの行動を戒めることも、フォローすることもしない。
自分で考えろ、ということだ。
「……あぁ……おそらく、先日の塔外からの侵入が刺激したのだろう……塔から拒絶されてるのに無理して入ろうとしただけじゃなく、幻覚魔法まで塔全体にかけようとしたんだろう。それが攻撃されたと、本格的に警鐘を鳴らしてしまったのだろう」
カレンたちの一件が刺激となっているのであれば、おそらく、幻覚を催すために焚いた香がゆっくりと塔に侵食し、それが今になって攻撃として捕らえられたのだと考えられる。
「それですと……」
「住人として見なされていたアリシア嬢も、無差別に攻撃される可能性が高い……もちろん、僕たちもだ……なるべく早く塔から退却した方がいいだろうな」
「……森は危険ですが、移動魔法は可能ですか?」
「いや、今日はもう使えないな……」
これも、制約の一つだ。特定の人物を追いかけた移動魔法を使えば、しばらくはその他の移動もできなくなる。それだけ、大きな魔力と制限がかかるのだ。
「かしこまりました。では、最低限の準備を整えて参ります」
そう言って、ホア爺は来ていた上着をエドルドにそっと羽織る。
「…………5分で戻ってきますので」
数多の襲撃やトラップを回避しながら、なんとか塔を出る。
ホア爺が5分で用意してくれた衣類に着替え、気を失ったままのアリシアをおぶる。
「私めが先頭を、エドルド様はなるべく気配を隠蔽する魔法をお願いします」
「分かっている」
今の状況でグレスビー、闇化したものに会えば、さすがに痛手を被る。
学園まで、どうか無事に着くことを願う。




