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油断しました


「…………」

 ホア爺の作った食事はそれはそれは美味しかった。だが、

「すごい、お肉の量ですね……」


 今までの量でも十分だったのだが、今日はいつにも増して多い。特にお肉が!!


「ミオラ殿からの指示ですので。何でも、お肉は筋肉に良いとか」


「そうです、か。でも、残してしまうのはもったいないですので……こんなには食べれないかなぁと」


 メインが2つ、それもお皿ぎりぎりに乗る特大サイズのステーキが乗っている。いくら移動魔法で食材を調達できるとはいえ、今まで限られた予算で食材を調達してきた身としては、気が引けてしまう。


「問題ない。もし残れば……」


「残ればなんです?」

 すぐにホア爺がつっこむ。発言に気をつけてくださいと言うメッセージを含ませる。アリシアは不安そうにこちらを見ている。


 まさか捨てれば良いとか言わないですわよね?

僕が食べるとか? いや、でもそんな……いえ、本来、残すのが勿体無いなど、身分の高い方からすれば卑しい考え方なのかもしれないですわ……でも、でも……



「ゴホンッ……ホア爺が……リメイクする」


「リメイク……ですか?」


「昔、エドルド様と修行で山にこもったことがございまして。その時は山の食材でやりくりしていたこともございました。懐かしゅうございますね」



「そうなんですね……私も、恥ずかしながらおやつ代わりに森の木の実や薬草で蒸し料理を作ったりしてたんです」


「それは素晴らしい。小動物の動きをよく見れば、どこに何があるか、自然と読めるものです。アリシアお嬢様の力も自然とそこで磨かれたので?」


「そんな……ただ、自然と空気や気配に気づきやすくなったのは、森での生活のおかげかもしれません」


「あぁ。確かに自然では常に弱肉強食があるな。殺意のない崖崩れや木の腐敗、底なし沼なんかの猛威もある……幼いながらに、夜の闇の深さに驚いたものだ」


「ふふっ、エドルド様もそんなサバイバルな生活を送られていたことがあったんですね」


 まさかの森トークが出来るとはと、少しテンション高めのアリシアに、内心ホッとする。


 ホア爺のフォローがなければ、危うく軽率な発言で傷つけてしまうところだった。


 いつのまにか、贅沢が当たり前となっていた自分の感覚に反省する。





 なんとかいつもより、多めのメイン皿を1つは完食できたものの、やはりもうひと皿は手をつけられなかった。


 こちらは、細かく切ってご飯と炒めますと大変美味なのです、とホア爺は言ってくれていたが、やはり作ってくれた料理を残すのは心が痛い。一度にたくさんは食べきれないので、食べる頻度を増やすことで手を打った。


 では、夜食を作ってまいりますとホア爺は片付けに行き、エドルドはアリシアに待っていろと伝え、シャワーを浴びに行っている。




 足の筋肉は思っていたより落ちており、変に力がかかればバランスを崩してしまいそうになる。


 自分の部屋に戻る前に、もう一度階段でトレーニングでもしておこうと、壁に手をつく。


 あっ……やってしまいましたわ。



 油断した。トラップを発動させてしまったのだ。


 それも……気配や殺意のないシンプルな落とし穴。塔の真下へと直結するやつだ。



「あっ…………」



 声を出す前に、穴を避けれないまま落下する。



「きゃあぁぁあっ」



 悲鳴が出た時には、もう落下してしまっていた。



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