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3話

 カズキをエルデランへ送ってから数日後。私は手続きを終え、エリスとともにお茶を楽しんでいた。明るい日差しが差し込む窓辺で、忙しい日々から開放された私達は穏やかなひとときを楽しんでいた。


「それにしても、アーク様。良かったですよね、無事に転生が行えて。カズキさんもいい人そうでしたし」エリスが微笑みながら言った。


「ええ、そうですわね。聞くところによると、神界に来て暴れ出す転生者もいるようですわ」私はカップを軽く揺らしながら答えた。


「それはなんとも気の毒に。ところで、カズキさんの転生先であるエルデランは最近魔王軍が非常に力をつけているようですが、無事に魔王を倒すことができるでしょうか?」


 エリスが少し心配そうに訪ねた。


「それについては問題ないでしょう。彼は仲間との協力の大切さを理解しているようでしたし、彼自身も非常に優秀ですし、きっと今頃もう頭角を現していたりして」


 私は自身満々に答えた。カズキさんと交わした会話は少ないが、彼ならやり遂げてくれるという確信が私の中にはあった。


「それに超回復と剣技スキル、そして大防衛と素晴らしいスキルを3つ授けましたから」


 自慢するようにそう続けると、エリスは驚いた顔をした。


「アーク様、もう一度カズキさんに授けたスキルを教えて下さい」


「え、だから、超回復と剣技、大防衛の3つよ。超回復なんてすごいんだから……」


「アーク様! エルデランにおいて人間が魔王軍に苦戦している理由である、闇の防御魔法をお忘れですか!」


「あ……」私の心臓が一瞬止まりそうになった。


「闇の防御魔法は光属性の攻撃でしか解除できず、その光属性はエルデランでは異世界人以外にはめったに発現しないんですよ!」


「ど、ど、どうしましょう! カズキさんに追加でスキルをお渡しすることはできませんの?」私は焦りながら尋ねた。


「ええと、資料によるとカズキさんにはスキル枠は3つしかない上、これからも増える予定はないです!」


「あ、スキルを1個取り上げるのはどうですか」


「スキルは体を構成する部品である以上そんなことしたら、彼の体がどうなるかわかりませんよ」


「ああ、ひとまず現在、エルデランで光属性スキルが使える人はどれくらいいるか至急調べてください」


「かしこまりました。では、失礼します」


 エリスは急いで部屋を出ていった。


「はぁ、大変な事になってしまったわ」私は深い溜め息をつきながら、カップをテーブルにそっと置いた。カズキのことが心配だ。なんとか彼を助けることはできないだろうか。


 ――


「アーク様。入ります」


「どうぞ、それでどんな状況ですか」


「エルデランにはおよそ10人の光属性スキル保持者がいます」


「10人ですか。少ないですね。カズキさんの近くにはいませんの?」


「それが、一緒に行動している魔法使いの方がちょうど光属性魔法を使えるようです」


「ああ、それは良かったわ! これで解決かしら?」


「それが、通常の闇防御魔法ならなんとかなるですが、幹部クラスが使う上位魔法には効果が薄く、魔王が使う最上位魔法には全く効かないようです」


「それでは、カズキさんが幹部クラスと接敵するまでにどうにかしないといけないですわね」


「それなんですけど、確認してみたところ、現在カズキさんは魔王軍幹部の1人、ゾルガスと交戦中とのことです。ゾルガスは過去に何百もの街を滅ぼした非常に高い残虐性を持った相手です」

 

 私は驚きでカップを倒しそうになりながら声を上げた。

「ええっ!? ちょっと早すぎません!? 幹部なんて1ヶ月後くらいでしょ、普通!」


「関心している場合ではないですが、さすが優秀な方ですね……」


「ここから応援してどうにかなったりはしないかしら」


「そんなことで解決できたら、わたしたちの仕事は楽になりますよ」


「そうわよね。いったいどうしたらいいのかしら」


 私は困惑した。


「つかぬことお聞きしますが、アーク様、お仕事って一段落してますよね?」

 

 エリスがジッと私を見つめた。


「そうですね、しばらくゆっくりできると思います」

 

「そうですよね、神界と地上世界は時間の流れが異なるので、地上での換算で1年間はありますよね」


「まぁ、ざっくり計算するとそのくらいはあると思いますわ」


「そして、アーク様は光属性が得意ですよね。地上に降りる際の制限を受けても、魔王に対抗できるぐらいには」


「待って! なにか、いけない方向に話が進んでいる気がする! エリス! 深呼吸してお茶を飲みなさい。ここは一旦落ち着いて」


「アーク様、エルデランに降りてください!」


「私が直接!?」


「ええ、そうですとも!」

 

 エリスが頷きながら、次々と私の外堀を埋め始める。


「そもそも、この危機の原因はアーク様が光属性スキルを渡し忘れたことですし」


「そ、そうだけど!」


「エルデランが魔王の手に落ちてしまえば、神界と悪魔界のバランスも崩れてしまうような重要な地ですし」


「ええ、だから今回特別に異世界人であるカズキさんを送りました」


「さらに、エルデランの神様も『アーク様が動くなら特例で許可します』と快諾されていましたよ」


「な、なんでそんな話が勝手に進んでるの!? ていうか、私、現場仕事は――」


「アーク様の偉業は後世にまで語り継がれることでしょう」


「そ、それは、うれしいけども」


「ちなみに、明日予定されていた女神ティヤ様とのお茶会はすでにキャンセルしておきました」


「え、ちょっと! 私楽しみにしてたのに。こ、この補佐官仕事早すぎ……」

 

「お任せください、アーク様の旅支度はこちらで全て準備しますので!」


 エリスはにっこり微笑みながら最後の一押しをした。


「断る理由がことごとく潰されている!」


(でも、今回の発端は私のミス。エリスだってこんなに準備してくれて。これも、地上世界を直接見るいい機会とも考えられるわね)


 私は決意を胸に、拳を強く握りしめた。


「エリス! 私行くわ!」

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