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1回目のやり直し ①

クローゼットの手前のラックにかかっている新品のスーツ。懐かしいと思いながらスーツの袖に腕を通し、入社式に向かう。

前回と同じ見覚えのある入社式。そして昼食を終えオリエンテーションの会場に行き着席した。

結愛は緊張していた。会れるのは嬉しい。でも自分だけが記憶にある。どんな反応したら良いだろう。色々考えていると、


「初めまして。藤野佳都です。よろしくお願いします。」


彼が挨拶した。彼女は彼を見た瞬間、感極まる。5年前の彼。そしてまた会えたことが本当に嬉しかった。

目がうるうるしていた彼女に


「大丈夫?」


と声をかけた。


「大丈夫?私は如月結愛です。よろしくお願いします。」


涙を堪えて話した。

そして、同じようにオリエンテーションを終え、課題をこなした。

前回でもあった飲み会。帰りの出来事だって同じだった。


「如月さん!」


一度別れたが引き止められる。告白されるんだ。


「俺、如月さんの好きです。初めて会った日から可愛いと思ってて、一緒に課題やってた時も楽しくて俺で良ければ付き合ってほしい。」


彼女はここで前回と違う選択をした。


「はい。私も好きです。」

「えっ?」


彼は驚いた反応をした。


週明け仕事に行くと2人とも営業に配属されることになった。そこには、オリエンテーションの担当をしていた長谷川旭がいた。

彼女は長谷川さんのもとで研修することになる。

前回も今回もこれは同じ。別に嫌ではない。


「久しぶり、如月だよね。よろしく。」

「お久しぶりです。よろしくお願いします。」

「プレゼン見てておもいだしたんだよ。あいかわらず面白い発想するな。」

「ありがとうございます。」


覚えててくれたのは嬉しいが、まだ同僚や先輩が近くにいるので気まずかった。


「2人知り合いなの?」


と長谷川さんの同僚だろうか。話に入ってきた。


「大学一緒で同じサークルだったんだよ。」

「そうだったのか。優しく教えてやれよ。」

「はいはい。」


この会話を彼には聞かれたくなかった。

でも前回と同じで彼はこの会話を聞いていた。今のところ変わったのは2人がもう付き合っていることだけ。あとは何も変わらない。

昼休憩、彼とご飯を食べる。


「長谷川さんと知り合いだったんだね。」

彼女には彼が少し怒っているようにも聞こえた。そう彼は嫉妬していた。こないだの飲み会の時に接点はないと言っていたはずなのに親しげにしていたから。付き合えたとはいえ心配だった。


「うん、気になる?」

「気になる。けど気にならない。」

「なにそれ。同じサークルなだけだから。」

「うん、信じる。」


彼女は考えていた。同じサークルなだけか。確かに今はその程度の関係だが、前回は3ヶ月後くらいに告白される。そのことで少し2人の間に溝ができた。今回は、そんなことになりたくない。たとえ仲直りが出来たとしても、会えない、話せない時間が惜しい。

死ぬ運命なら少しでも長く一緒にいたい。


「藤野さん、私はあなたのことが好きです。」

「うん、急にびっくりした。俺も好き。」

「だから何があってもそれだけは忘れないで。」


昼休憩の帰り道。彼女は彼に突然言った。

長谷川さんにこれから告白されるなんて言えない。それで誤解されても困る。だから今は口下手かもしれないけど伝えられることは伝えた。

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