春の出会い
2019年4月1日。7時ちょうどにアラーム音で起きたのは、如月結愛。春から一人暮らしを始めて今日は入社式だ。目覚めはいいほうで緊張しながら、朝の準備をする。長い黒髪を低い位置で1つに結んで、新しいスーツを来て初出勤。
入口で受付をして、会場に入り着席した。
入社式を終えてお昼を食べると、すぐにオリエンテーションが開かれる。事前に言われていた場所に行き自分の名前が書いてある席に着席した。長机に二つ椅子が置かれている。隣の人はまだ来ていない。渡されいた書類と筆記用具を机の上に置いて準備をしていた。
「初めまして。藤野佳都です。よろしくお願いします。」
顔が整っていて、長い脚でスタイルも良くスーツを着こなしている。何より笑顔がさわやかだった。隣の彼が挨拶した。緊張していて彼女はずっと彼の顔を見つめていた。
「あ、初めまして。如月結愛です。よろしくお願いします。」
緊張していたからだろうか。それもあるが彼女はきっとこの時から彼に惹かれていた。また彼も彼女に惹かれていく。偶然というかそれは必然だった。
「ではオリエンテーションを始めます。私は営業を担当している長谷川旭です。まずは入社おめでとうございます。今日は会社について説明したあと、皆さんが今後一週間取り組んでもらう課題をお伝えします。では早速……。」
オリエンテーションが始まった。私はこの時、彼が気になってあまり聞いていなかった。
でも流石に課題は聞いておかないといけない。
彼女はしっかり話を聞き始めた。
「じゃあ早速課題を発表していきます。今スクリーンに映っている商品は販売前のものです。
この商品がヒットするにはどう売り込めばいいか考えてください。何を使ってもいいです。パソコン、紙、段ボール…ほんとになんでもいいです。今回は今隣にいる人とペアでやってもらいます。発表は今週の金曜日。分からないことがあれば僕でも今日ここにいるスタッフでもいいので聞いてください。」
ペアって言ったよね。彼と一緒にやらなきゃいけないのか。緊張する。足引っ張らないかな。彼女は頭が混乱していた。
「…らぎさん。如月さん?」
オリエンテーションが終わり彼が話しかけてきた。彼女は反応に遅れた。
「あ、はい。」
「大丈夫?」
「大丈夫です。それより一緒に頑張りましょう!」
「うん、よろしく。」
ここから2人の関係は始まった。
作業は順調だった。意見が合った2人はアイディアもたくさん出てくる。協力して課題に取り組んだ。あっという間に金曜日。プレゼンも終わり、明日は土曜日で初めての休み。親睦も兼ねて男女何人かで飲みに行くことになった。
彼女は正直、2人で飲みに行きたいと思っていた。彼とは席が遠くて悲しくなっていた。
「そういえばさ、今回俺らの担当してた長谷川さんって、如月さんと同じ大学なんでしょ?」
前の席にいた男の人が話しかけてきた。名前がうる覚えで思い出せない。そのせいで一気に彼女に視線が集中する。
「あ、そうです。2個上でした。」
彼女がそう答えると皆んな盛り上がった。
でもなんで知ってるんだろう。私はみんなのこと全然知らないのに。
「あの人かっこいいよね。」
「男の俺から見てもかっこいい。優しいし、あんな人の下に就きたい。」
確かにそうだ。大学の時に一時期憧れていたことがあったから。皆んながそう言うのも納得する。
「話したことあったりしないの?知り合いだったり?」
女の人が彼女に話しかけた。
「ないよ、先輩だったし接点なかったから。」
咄嗟に嘘をついてしまった。めんどくさくなりそうと思ったからだ。それに彼に誤解されては困ると思ってしまったから。気になって彼のほうを向いた。目があったがすぐ逸らされた。
色んな話が飛び交い、時間が過ぎていった。ほとんど全員が酔っていた。
「よし、2次会いくぞ!!」
ノリのいい男が言った。
「如月さんだっけ?行くよね?」
結愛の隣にいた同僚の女の子が話しかけてきた。どうやって断ろうと悩んでいると、
「俺もう無理そうだから帰るわ、如月さん送って。」
彼がそう言った。周りのみんなは驚く。
「なんでだよ、もしかして如月さん狙い?」
またノリのいい男がからかってきた。
帰りたかったからちょうど良かった。でもこの雰囲気だと彼と帰りづらい。そう思っていると、
「ただ同じペアだったし、他に仲良い人いないから。じゃあまた。」
そう言って彼は彼女の手を掴み歩き始めた。
タクシーを拾って乗り込んだ。
「如月さん、送ってく。」
「えっ?」
「帰りたかったでしょ。そうゆう顔してた。違ったらごめん。」
彼は酔っていたはずなのに普通になった。
助けてくれたんだと彼女は嬉しくなった。
「ありがとう。でも本当に具合悪いなら先に帰ったほうが…」
「大丈夫だから。」
と彼は言うので彼女は、運転手に住所を伝え出発した。
「俺の家近いかも。会ったことあるかもね。」
「そうなんだ!」
「如月さんの住所聞いちゃったから、俺のも言ったほうがいいと思って。」
「ありがとう。私、引越ししてきたばっかりだから美味しいお店とか色々教えて!」
それから彼と話していると彼女の家の近くに着いた。
彼はこっから歩いて帰るらしく一緒に降りた。
「じゃあまた来週。今日はありがとう。」
「うん、また会社で。」
お互いの家の方向に歩き始めていた。
「如月さん!」
彼が戻ってきた。
「今日帰りたいところを助けたのもあるけど、話があって。」
「なに?」
真剣な顔で彼は話そうとする。
「俺、如月さんのこと好きです。初めて会った日から可愛いと思ってて、一緒に課題やってた時も楽しくて俺で良ければ付き合ってほしい。」
彼の突然の告白に彼女はびっくりした。
数秒、沈黙が続いた。
「えーと…」
「返事は今日じゃなくていいから。困らせてごめん。でも伝えておきたくて。じゃあまた。」
「うん、ありがとう。」
帰ったあとも彼女はずっとさっきの言葉を思い出して嬉しくなってしまう。
嬉しかったけど、彼女も彼のことを気になっていたけどまだ会って一週間。
悩んでいて眠れなかった。