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いつだってカーマは気まぐれ 

作者: jima

 アフリカ ズールー族に伝わる神話



 遥か遠い昔、最高神がカメレオンとトカゲを呼び出した。人間の運命がまだ決まっていない頃のことである。


 神はカメレオンに言った。

「『お前達の罪は永遠に罰を受けることがない』と人間に伝えよ」


 同じくトカゲに言った。

「『お前達の罪は永遠に罰を受け続ける』と人間に伝えよ」


 カメレオンとトカゲは神の使いとして地上に向かった。







 鎌井(かまい)ライオン商事、開発部の新しい課長はカメレオンであった。

 変わり身が早いとか、周りに馴染みやすいとか、あるいは目配りがいいとか、そういった比喩ではない。

 カメレオンだ。どうみても爬虫類のカメレオンである、と思われる。


 正確に言えばカメレオン人間ということか。上等のスーツと趣味のいいネクタイ。頭は完全にカメレオンで四肢は人間…のような気がする。ただしズボンのお尻からは長い尻尾が出ている。


 着任のあいさつでカメレオン課長は言った。

「少し驚いたかもしれませんね。カメレオンの山田です。少しでも早く職場に慣れて、会社の戦力として認められるように頑張りたいと思います。いろいろ迷惑をおかけするかもしれません。よろしくお願いします」


 普通だ。あまりに普通の常識的なあいさつがなされたことに、俺は逆に強烈な違和感を感じる。

 こういう場合、もっと突飛なあいさつがあったり、『何見てんだコラ』的なオラオラ展開で俺がいじめられたり、あいさつ中に急に舌が伸びて虫を捕まえたりするんじゃないのか。


「えー」

 あいさつはまだ続く。


「仕事カメレオンでろくに趣味がないのが悩みなんですが、少しだけゴルフをやります。もし皆さんで同好の方がおられましたら、ぜひ誘ってください」


 普通じゃん。カメレオンがゴルフやって、『誘ってね』ってなんだそりゃ。趣味は肌の色を変えて女湯に忍び込んだりするんじゃないんかーい!


 俺が心の中でツッコみまくっている間に課長はあいさつを終わり、課内の社員が拍手を送る。


 たぶん俺と同様の違和感を抱えているに違いないのだ。誰もが何か釈然としない表情で緩い拍手を送っている。


 三々五々席に戻り、おのおの仕事を始めた。

 隣の席の吉田(よしだ)がパソコンを開きながら、俺にささやく。


「おい、澤村(さわむら)、俺の頭がどうかしたのか。課長がカメレオンに見える」

「吉田、お前の頭は前からどうかしているが、安心しろ。俺も課長がカメレオンに見える。そして自己紹介で『カメレオンの山田です』とはっきり言ったな」


「趣味はゴルフだそうだ。お前もそうだろう、澤村。ラグビー部出身のくせに、カッコつけてゴルフ始めたんだろ。カメレオンとゴルフができる絶好の機会だ。交流をはかってこいよ」

「グリップは強そうな気がするな。さっきネットで調べたら指はクランプ状だそうだ」

「何だ。クランプって」

「知らないのか。大工の作業とかで材料を挟んで固定するやつだ」

「何かの役に立つのか、会社では」

「壁とか天井とか掴まりやすいらしい」

「天井からぶらさがって何するんだ」


「そこの二人、無駄話が多いですよ」

 頭上から聞こえた声に、ヒッと俺たち二人は身をすくめる。天井にぶらさがった課長が俺たちを見てニヤリと笑った。

「こうやって使うのです」




 カメレオンの山田課長は切れ者だった。

 仕事は的確で速く、部下への指示も適切。今のところ理想的な上司といってよい。

 ただ部屋に飛んでいる虫を素早く舌で捕らえるという悪癖を除けばだ。

 最初は悲鳴をあげた女子社員も慣れたようだ。そんなにオフィスに虫は飛ばないし。



 いつものように俺は新製品の企画資料をプリントアウトしていた。俺はいったん紙媒体にしてじっくり眺めないと、情報が頭に入らないタイプなのだ。アナログ派だからな。次に資料にメモをするためのボールペンを取り出す。

「おっと」

 俺はペンをデスクから落とした。

 その瞬間、何かがヒュッと飛んできて俺の足下から床に落ちかけたペンを奪い去った。

「おわっ」

 課長が舌を数メートルも長く伸ばして、ボールペンをその先端にくっつけて持っていったのだ。

「心臓に悪い」

 俺が隣の吉田にこぼすと、課長が再びヒョイと舌を伸ばし俺のデスクの上にペンを戻してくれる。

「良かったじゃないか。親切な課長だ」

 吉田が笑って、ボールペンを手に取る。

「あうっ。ベチョベチョだ」


 課長が席からこちらを見て、手を振った。

「大丈夫だ。それは唾液ではない。粘液だからね」

 何が大丈夫なのかわからない。

 吉田は課長の手前、すぐに手を洗いに行くわけにはいかず、机上のティッシュで手を拭った。

「おい、この粘液で俺が溶け出すってことはないだろうな」

「知らないよ。う、匂おうな」

「うむ。ちょっと匂う。いやわずかな匂いだが、嫌な感じの匂いだ」


 カメレオンは動かない餌は食べない。虫でも生き餌でないと駄目なのだ。逆に言うと自分より小さくて動くモノには反射的に反応することがあるらしい。…面倒だなあ。





 課長が俺と吉田を昼食に誘ったのは翌日だ。カメレオンだって上司には違いない。無碍に断れず、俺と吉田はご相伴に預かることとなった。

「ハッ、動く虫しか食べない…っていうと。おい、吉田。俺はご相伴したくないのだが」

「今日は頭痛で腹が痛くて、関節痛だ。お前だけで行ってくれないか。澤村」


「ハハハハ。虫なんか食べさせないから、安心したまえ」

「聞こえましたか。失礼しました。ついつい心配して」

「虫しか食べないカメレオンもいるが、私は雑食性だからね」

 雑食性っていうのは人間には使いません。



「ここで食べよう」

 課長がクランプの指で示したのは回転寿司の店だった。失礼ながら意外とまともで拍子抜けした。

「意外にまともですね」

 吉田はストレートに失礼である。

「ハッハッハ。好きなだけ食べたまえ」



「やっぱり一緒に来るんじゃなかった」

 課長は動くものしか食べないのだ。

 回ってくる寿司をヒョイと舌を伸ばして取ってしまう。

「課長、あれは私たちの頼んだものじゃないんでは」

「気にするな。このスピードで盗って食べたら、わかりっこない」

 平然とひどいことを言う。

 確かに俺の前をすごいスピードで寿司が飛んでいき、そのまま課長の口に収まっていく。

 


 だが、世の中そんな甘くはない。店員がやってきて俺たちに怒鳴った。

「お客さん、他の人の注文を困りますよ!」

「い、いや俺たちはその、その…」

 俺がしどろもどろになっていると、吉田は開き直るように言う。

「何か証拠でもあるのか。客に向かって失礼だぞ」

「監視カメラがありますが、見ますか」

「ぐう」

 グウの音だけは出た。


「か、課長、何とか言ってください。あれ?課長、課長!」

 課長がいない。スーツだけが席に残っている。

「はっ、あの野郎。体の色を変えて逃げやがった!」



 俺と吉田はその後、店員が警察を呼ぶと言ってきかないのを、とにかく平謝りに謝り倒し、課長の分と当たり前だが他の客の分まで代金を払い、さらに出入り禁止の誓約書を書いてようやく許してもらった。





「課長!どうしてくれるんですか」

 大幅に午後の勤務に遅れた俺と吉田は、ちゃっかりすでに社に戻っていた課長に詰め寄った。

「いやいや。悪かったね♡」

 可愛いと思ってんのか、この爬虫類が。

「悪かったじゃ済みませんよ。社会人生命の危機だったんですよ」

「そうです。警察沙汰になりかけました」

 課長は平然としている。俺たちに手招きをすると、コソリと呟いた。

「そういうな。君たちにはコオロギを一年分あげよう」

「いりませんよ。虫なんか」

「ええっ?生き餌なんだよ」

 どうして俺たちがそれで喜ぶと思うのか。


 俺と吉田の憤りが解けないと知ると、課長は渋々といった口調で言う。

「仕方ない。現金の方がいいのかな」

 俺も吉田もピタリと動きを止める。

「も、もちろん店に払った分の弁償はしてもらいますが…」

「ではその10倍お詫び代として払おう。確か105万8千円だな」

 俺と吉田は顔を見合わせる。

「本当ですか。僕たちは訴えを取り下げます」

 元々どこかへ訴えていたわけではないが、俺たちはあっさり金に転んだ。


「なあ、澤村」

 その日の勤務終わり、吉田が俺に話しかける。

「あの賠償金ってどこから出てきてるんだ。ちょっとした大金だ」

「どこから出てても金は金…だけど気にはなるな」

 俺たちはすっかり丸め込まれた後の祭りではあるけれど、ちょっと心配になった。





 その翌月、会社に激震が走る。

「ライバルの十影(とかげ)商事に我々の商品開発情報が盗まれている」

 専務の言葉に課内の誰もがカメレオン課長の顔を思い浮かべた。怪しい。


 またコソコソと吉田が俺にささやく。

「おい、あの爬虫類が来てから情報が盗まれてる。そしてあの金回り…」

「うむむ。怪しいな。しかし、俺たちは課長から大金を受け取っているぞ。ヤバくないか」

「あれは、だって賠償金で」

「会社がどう思うかだ。今の状況だと俺たちはカメレオン山田課長の一派だ」


 専務が課内をグルリと見回し、最後に課長を見つめて話を締めくくった。

「とにかく情報の管理に充分留意をすること。以上だ」




「澤村くん、吉田くん」

 課長から名前を呼ばれて俺は身をすくめた。

「は、はい。コオロギはいりません」

「何をいっとるんだ。あの虫の美味さも知らないくせに」

 課長はニヤニヤしながら、俺と吉田の顔を見る。しかも両目を違う方向に向けて、同時にだ。怖い。


「それはともかく、今日の真夜中、つき合いたまえ」

 吉田が悲鳴交じりに言う。

「勘弁してください。スパイでクビになるのは嫌です」

 俺は吉田に眼で『黙れ』の合図をするが、通じるわけはない。吉田がさらに泣き顔で課長を見る。

「カメレオンアーミーは澤村だけで勘弁してください。私は今日頭痛と腹痛が、おまけに友引(ともびき)です」

 何をわけのわからないことを。

「課長、いったいどういうことですか。今晩何をされるつもりですか」

 課長は眼をクルリクルリと左右別々の方向に回しながら、ニヤリと笑った。

「フフフ。君たちは私が情報漏洩の犯人だと思ってるわけだな。では好都合だ。今晩その真犯人を捕まえるからな」


 



「課長、教えてください。今時の情報漏洩はこんなふうに会社に忍び込んでやるようなもんではないでしょう」

 我々は今、開発部の隣、そのロッカールームで息を潜めているところだ。

「そうですよ。普通は巧妙なハッキングとか、そういうことなんじゃないですか」

 フン、とカメレオンの山田課長はどこだかよくわからない鼻の穴で息を吐き、俺たちを見た。

「我が社のセキュリティを構築したのは私だ。そして新製品の開発情報漏洩で一番怪しいのは、いったん紙媒体で資料を確認しないと気が済まない奴だな」

 俺はギクリとする。

「あ、あのそれは」

「そうだ。澤村くん、君だ」

「信じてください。私はスパイじゃありません」

 たぶん人差し指であろう指を口に当て、課長は声を潜めろと指示を出す。

「わかっている。あの寿司屋の一件で確信した。君たちは無能ではあってもスパイではない」

「…」



 隣の部屋で物音がする。課長がそっと廊下の様子を窺う。眼だけ外に伸ばしてギョロギョロと見渡す器用さだ。器用というか何というか。

「よし、いくぞ。君たち物音を立てるな」

「は、はい」

 俺も吉田も抜き足で隣の部屋へと移動する。抜き足差し足なんて大学時代にラグビー部をサボるために使って以来だ。吉田は社の備品である不審者対応の刺股(さすまた)を抱えている。


「ではドアを開ける。壁と天井を伝ってスパイの頭上に行くから、ついてきたまえ」

 何を言ってるのか。俺は慌てて返事をする。

「お言葉ですが、私たちは壁にも天井にもくっつけません」

 吉田が青くなってウンウンと頷く。

「しかたないな。やむを得ん。君たちは賊がここから逃げようとしたら、その刺股(さすまた)で抑え込みたまえ」

「お役に立てませんで」

 吉田は恐怖に涙目である。



 課長はそっとドアを開けると、ササササッと天井に張り付いたまま俺のデスクの付近まで移動した。眼にも止まらない素早さである。俺たちには賊の姿がはっきり見えなかったが、カメレオンの視力は15メートル先の小さな虫を視認できると言われている。


 俺のデスク付近では2人組の男が引き出しを開けようと、ピッキングを試していた。まさか頭上にその課の課長がぶら下がっているとは思わないだろう。

 シュッ!

「うわあ」

 課長の尻尾が下に伸びてスパイの一人に巻き付いた。

「何だ。これは。助けてくれ」

 スパイは尻尾に絡め取られ、体が天井まで持ち上がる。手足をグルグル巻きにされて身動きができない。

「くそっ!何だこのバケモノは」

 ウンウン。その気持ちはわかるよ。

 

 もう一人が逃げようとこちらに走ってくる。吉田が刺股を前につきだした。

「どけっ!」

 そう言われてホントにどいたら、カメレオンにまた無能扱いされてしまう。俺は威嚇する。

「お縄につけ!この情報泥棒め!」

「おうおう、そ、そうだそうだ。ば、バカァ」

 吉田はテンパるとろくなセリフを言わないな。


 吉田が刺股を構えて前へ突き出し、賊が後ずさる。その足下へ俺は思いきってタックルした。

「わっ」

 スパイが悲鳴をあげ後ろへひっくり返ったところに…


 課長の長い舌がビョ~ンと伸びて賊の顔を覆った。

「ムグッ」 

 手足をバタバタさせる。

「モガッ、モガッ」 

 舌をはがそうとするが無駄。

「…」 

 ぐったりとする。

 あの臭いやつで顔を覆われて動かなくなったのだ。死んだのかな?気を失ったのかな?

 つくづく俺はこのスパイに同情した。

「ケケケケケケケケケ」

 課長は尻尾に一人、舌で一人賊を確保して天井で高笑いをした。地獄のような光景だ。


 



 翌日、俺と吉田は社長室に呼び出される。俺たちにとってはありえない事だ。胃を痛めながらドアの前に立つ。

 『鎌井ライオン商事 社長室』

 金属製の板が重厚で、俺たちの緊張はいやが上にも高まる。

「はいりたまえ」

 この声は…

 ヘコヘコしながら入室すると、やはり中にはカメレオン山田課長がいた。社長と二人、応接ソファで俺たちを迎える。

「座りなさい」


 昨夜のことを課長が説明し、俺たちに補足や感想を求める形で報告会は進む。

 社長が感心して、褒めてくれる。

「よくやってくれた。我が社の損失を最小限にしてくれた君たちには何かお礼が必要かな」

 この流れは…もしかして?

「昇進でしょうか?特別ボーナスでしょうか?それとも何か美女とどこかへ休暇旅行とか…ハアハア」

 吉田が鼻息を荒くしている。何と浅ましい。俺は落ち着いて尋ねる。

「あの、昇進でしょうか?ボーナスガッポリですか?それともアカプルコの熱い夜ですかハアハア」

「澤村、何てお前は浅ましい」

「お前にだけは言われたくないよ」


「うむ。ご褒美と思ったのだが…」

 課長も続ける。

「そうなんだがね」

 あれ?何か様子がおかしい。嫌な予感。

「まず機密資料をプリントアウトして会社の情報を危険にさらした社員」

「うっ」

「それを隣の席にも関わらず見逃す…ばかりか一緒に使っていた社員」

 吉田と俺が頭を抱える。


「さらに」

 今度は社長が続ける。

「何か回転寿司屋をパニックに陥れたらしいな。それからスパイを刺股で押さえつけてタックルで転ばし、最後は抑え込んで失神させたと。明らかに乱暴で過剰な行動だ」

 ええええ。それはこのカメレオンが。

「待ってください。それは…」

 俺が言いかけると山田課長が眼をグリングリンと左右バラバラに動かし、俺と吉田を睨んだ。さらに舌をニョロリンと出して、俺の首筋をなぜる。俺は全身の毛を逆立てて恐怖した。

「何でもありません」


「だがまあ、結果的には彼らのお陰で会社は助かったし、クビは勘弁してやってもいいでしょう」

 悪事はすべて俺たちの仕業のようにして、課長はかばうふりだけはする。

 

「ハハハハ、あまりいじめないで。大丈夫だよ。ちゃんとボーナスは用意している」

 社長の言葉に俺達はホッとして息を吐く。


「それにしてもあのスパイ、新製品の情報だけで無く、帳簿まで操作していたとはね」

 社長が言って、俺は首を傾げる。

「そうなんですか?」

「昨夜経理のパソコンにも侵入して帳簿をいじったみたいじゃないか」

 知らないな…。とは言えない。なぜならカメレオン課長が依然として俺と吉田を睨んでいるからだ。例によって二つの眼を別々に使って。


「そうだったかもしれません。いや、そうです。悪い奴です」

「まちがいありません。爬虫類以下です」

 吉田がしょうもないことを言って、課長の尻尾でスネを叩かれた。

「痛っ」

 俺は恐る恐る社長に尋ねる。

「あの、つかぬことを伺いますが…」

「ふむ。何かね」

「あの悪党がチョロまかしたお金というのはいかほど…」

「えーと、いくらだったかな」

「105万8千円です。社長」

 課長が悪魔と爬虫類の中間くらいの顔で言った。



「…あの、課長、あなたはいったい何者なのですか?」

 俺の質問に課長はフーンとちょっと見直した顔で俺を見る。

「なぜその質問を?」

「どう考えてもおかしい。スパイの存在発覚と同時に課に赴任し、問題をあっさり解決した。そして今この席では社長と同格のような態度で座っている。普通じゃない」

 まあ、カメレオンっていう時点で普通じゃないけど。


 社長がニコリと笑って、カメレオン山田部長の方に向き直る。

「フフフフ、こちらは」

 なぜか社長が一度会釈をした。胸がざわざわする。これは…

「我が社の創業者で現在、筆頭顧問かつ筆頭株主、さらにセキュリティシステムのプログラムもされた鎌井会長だ」


「…」

「…」

 俺たちは息を吞む。つまり一番エラい人じゃん。いやエラい爬虫類じゃん。


「気づかなかったかね。我が社の名前『鎌井ライオン商事』は『カーマイ・ライオン』…ギリシア語でカメレオンのことだ」








 カメレオンとトカゲは神の使いとして地上に向かった。


 神の言葉を伝えるため、トカゲは急いで真っ直ぐに人間の世界に向かった。

 

 そして人間達に「犯した罪は永遠に許されない」ことを告げた。


 カメレオンは旅の途上、道草をして人間のもとに到着するのが3日間遅れた。


 カメレオンは地上にようやく到着し人間達の罪を許そうとした。

 

 だが、すでにトカゲから「神の言葉」は伝えられた後であった。


 それから人間は常にその身に罰を受け続ける運命となった。




 カメレオンは本来は人間に許しをもたらす存在のはずが、遅刻した結果として人間の犯した罪が許されず未来永劫の罰を受ける原因となった。周囲に合わせて様々な色に体色を変化させる由縁である。 

 















 カルチャークラブを聴きながら書きました。ボーイジョージ好きでした。

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