チャット
訓練で疲れ切ったオークたちを寝かせたあと、ヤマ君から準備期間終了後の説明を受ける。
「準備期間が終了すると、県境の障壁が消失し人間の移動が自由になり、クリスタルに新しく宣戦布告、チャットが追加されます」
「宣戦布告はダンジョンマスターを指名して行い、クリスタルから生み出されたモンスターやダンジョンマスターがお互いの支配領域に入れるようになります」
「チャットはダンジョンマスターのみが閲覧でき、個人、グループ、全員のいずれかに向けて画像や動画や文字を投稿できます」
「要するに、他のダンジョンマスターに対してのアクションが解禁されるということか?」
「そのとおりです!」
ヤマくんから説明を受けている間に、準備期間が終了していたようだ。
俺は早速クリスタルに近づき、チャットを選んだ。
「こんにちは~」
「こんにちはー」
既に何人かのダンジョンマスターがチャットに参加しているようだ。
俺もとりあえず、こんにちはと打ち込んでみる。
「こんにちは」
すると何人かから、挨拶を返される。
どうやらこのチャットは匿名でしか参加できないようだ。
「皆さん情報交換しませんか?」
そこそこチャットが賑わってきた頃に、一人が提案した。
「いいですね」
すかさず何人かが肯定すると、
「では言い出しっぺの私から! 栃木を担当しています。種族はピクシーです!やっぱり平和が一番。みんなで協力していきましょう!」
一人が自己紹介をすると、数人が自己紹介をする。
「岩手を担当しています。種族はケルベロス。よろしくお願いします。」
「高知を担当している。種族はクイーンアント。よろしく」
「東京を担当しているレッドドラゴンです! よろしくおねがいします!」
俺は種族を明かすのは愚策だと考え、聞き役に徹する。
幸い投稿はすべて匿名だ。気づかれることはない。
「東京です! みなさん! 海の方向を探索してみたところ、結構離れたところに透明な壁がありました。どうやら日本は世界から隔離されているようです!」
なんということだろう。日本の食料自給率は4割ほど。
つまり、海外からの輸入が不可能となった今、日本は現在の人口を維持できない。
「それって、食料とか足りなくないですか?」
誰かが同じような危惧を書き込む。
「栃木です! それはまずいですね! 私はみんなが餓死するなんて嫌です! そこでオトクな情報!
チャクラという植物モンスターはコストも安くて美味しいです! 副官が栄養も満点って言ってました! 私今から残りの魔力を全部これに変えて栃木県民に配ってきます!」
これはいいことを見た。隣県の栃木のダンジョンマスターは相当な間抜けらしい。
コメんとくいてー! でも痩せたーい! ┐( ▔∇▔)┌