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かわいそうな状況の説明始めます。前編

白一色の部屋で俺は目を覚ました。体はロープで椅子に固定されている。

「何か聞きたいことある―?」

「聞きたいことしかないんですが...」

部屋には男一人だけ。俺と机一つはさんで向かい側に座っている。さっきのやつだ。こいつらは警察じゃなかったんだろう。こんな仕打ち、カタギとは思えない。おそらくは暴力団か何かだ。

「あははーまぁそうだよねー。何から説明しようかなー。」

今は何時ぐらいだろうか。一人暮らしの上、今日は金曜日(もう今日ではないかもしれないが)。通報されるまで時間がかかるだろうな。

そんなことを考えていると男が部屋の隅からホワイトボードを持ってきた。

「とりあえず簡単に今起こっていることを説明するねー。最近、東京で連続殺人事件が起きてるのは知ってるよねー?」

東京に住んでいるのだから知らないわけがない。いやでも毎日ニュースから聞こえてくる。東京無差別連続殺人事件。先月、一人目の死体が見つかったにもかかわらずこれまでに十数人が犠牲になっている。

「一応僕、その事件を担当しててー。」

は?ちょっと待て。こいつら警察なのか?警察がこんなことをしているのか?

「ニュースでは被害者に共通点がないから無差別ってことにしてるけど、実は共通点があるんだよねー。」

そういうと男は俺の左手首を指さした。

「え?これ...ですか?」

「そうそう。これまでの被害者も左手首になにかしらの文字が浮き出ていたんだ。ただ、その文字がどうやって書かれたのか、いつ書かれたのか、まだまったく分かってないんだよねー。」

男は数枚の写真をホワイトボードに張り出した。おそらくは人の手首。ものによっては血だらけになっているのもあるが、どれも文字が書かれている。

「これなんだけどー。」

「勤倹力行、一視同仁、一路邁進、滅私奉公...」

書かれていたのはすべて四字熟語だ。一応文系なのでこれぐらいはわかる。

「でさー君の手首見てみてー」

「我武者羅...」

同じく四字熟語が書かれていた。俺が文字を確認したのを見て男はなぜか笑顔になり、自分の袖をまくって見せてきた。

「七転八起。実は僕にも出てるんだよねーこの文字。」

七転八起。割と縁起のいい四字熟語だ。俺の好きな四字熟語の一つでもある。

袖を元に戻すと男は真面目な顔つきになり、

「驚かないで聞いてほしいんだけど実は僕、二回死んでるんだよね。一回目は事故で、二回目は容疑者を取り押さえるときにグサッとね。それで思ったんだ。僕は多分、七回死ねる。それがこの七転八起の意味なんじゃないかって。そして死ぬたびになにかギフトがもらえるんだと思う。もともと僕は体が弱くて激しい運動をするとすぐ息が上がってたんだけど一回目の死以降、それがまったくなくなった。そして二回目の死で身体能力が大幅に上がった。今の僕はどのスポーツでも世界一位をとれる。馬鹿な話だなって思うかもしれないけど、これが事実だ。」

あたまのおかしい人だとは思っていたが、ここまで重症だったとは。しかしここで話をさえぎってもどうにもならない。まず最初に聞くべきは

「そうなんですね...で、僕はいつ帰れるんでしょうか?」

「帰れないよ?君言ったよね。僕たちと一緒に働くって。君はもう死んだことになってる。戸籍も消えてる。多分今頃家は燃えてるんじゃないかな。君はもう元の生活には戻れないよ。その文字が出た以上は最低限、僕たちの監視下で生活してもらう。」

声が出ない。これが絶句というものか。こいつの言ってることが本当なら俺はもうこの世にいないことになってる。家にも帰れない。親にも会えない。彼女にも(彼女なんていないが)一生会えない。

「そんな...身勝手すぎますよ!こんなこといくら警察だって認められていいはずがない!」

「それだけ君の存在はまずいんだよ。なんらかの能力を持っている以上、野放しにしておくわけにはいかないんだ。というか死んだことになってるんだから、ここで僕がキミを殺したっていいんだよ?」

さっきから思っていたが、語尾の伸ばしが消えている。わざとか無意識か。ひょっとするとひょっとするかもしれない。

「えっと、要するに俺は超能力を持っていて危ないから、あなた方の監視下に置かれる、ということですか?」

「うん、まぁそういうこと。」

「この言葉と殺人事件との関連性は?」

「まだ全くと言っていいほどわかっていない。被害者全員の左手首に四字熟語が浮かび上がっているということだけだ。ただ、今回は現行犯だったから一応犯人の体を手に入れることができた。これでもしかしたらこの事件も少しは早く終わるかもね。それと一つ、最近の日本の犯罪の傾向を知ってるかい?実はね、不可解な事件が全国で多数発生してるんだ。おそらくは...」

バン!と勢いよくドアが開いた。そんなところにドアがあったのか。白一色だから全く気付かなかった。

「先ほどの男の死体がありません!」

敬語を使っているからおそらく後輩だろう。というかすごい汗だな。

「へぇ~。まずいことになったね。そうだ!君もちょっとついてきてよ。今言ったことが真実ということを証明してあげよう。百聞は一見に如かず、だ!」






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