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義確認飛行化学生命体  作者: 鮭之氷頭
6/10

誰かがムショからやってくる

折角なので今回はいつもと違う始まり方をしたい。

だがクソみたいなアイデアしか浮かばないのでこのまま始めよう。

私は誰に話しかけているんだ?


「博士!大変です!」

「なんだなんだ!何が起きた!」


トイレで用を足していると、ロボットが大慌てでドアを開けて来た。(まさにクソな始まり方だな)

出そうだったのに引っ込んでしまったじゃないか。


「お金がもう無いです!」

「は?」


そんなはずは…金は少し前に沢山奪って来たばかりだ。


「どうして無いんだ?」

「財布を焼却炉に落としてしまいました…」

「何だその程度か…」


財布を無くした程度なら問題ない。

だが取ってこなくてはならない。

引っ込んだ物はしょうがないとズボンを上げて、ベルトを締めた。


「銀行に行くか。」

「強盗ですか?」

「違うよ…」


奪った金は全て、魔界の銀行に移してある。

どうせ明後日にも行ことしたところだ。


「ちょっと金を下ろしに行ってくる。」

「お供しましょうか?」

「来なくてよろしい。ポルターガイストと行ってくる。」


魔界に行くためには幽霊たちの助けが必要だ。

幽霊は語尾のカタカナを打つのがめんどくさいので連れて行かない。

世話が焼けるがポルターガイストと行くか。


「酷いですね、優秀なワタシより幽霊小娘の方が良いのですか?」

「当たり前だ。」

「博士のバカ!反社会主義のレイシスト!ついでにウンコタレ!」


ロボットは走り去ってしまった。

バカは失礼だがそれ以外は当てはまるな。

土産でも買って来れば機嫌は直るだろう。


「博士もひどい事言うね。」

「全くだぞ。」

「お前ら…まぁいい、幽霊小娘、行くぞ。」


ちょうどいい所にポルターガイストとマイがやって来た。

そういえばこいつの世話を任せていたな。

どうやら気が合うそうだ、最悪な事に。


「えー魔界やだー」

「文句を言うな、飯が食えなくなるぞ。」

「臭いんだよ、魔界って。」


確かに匂いは気になるがそれさえ慣れてしまえば結構、良い所だ。

治安も何故か高い。


「楽器を買ってやろう。」

「魔界サイコー!早くイコー!」


扱いやすいが現金な奴だな。


「良いな…マイも何か欲しい。」

「なんだ?なんでも言ってみろ。」

「ピンクのブルブル震える棒。」

「………さーて行くか!」


過度なシモにはあえて触れないでおこう。

最悪な事になりそうだ。

ちなみに魔界への行き方は超簡単!

真空電磁波分解装置に高密度生命体をぶつけた時に起きる電磁波逆流現象を発動させる。

そうしてできた合法的な異次元潜入口をビームエネルギー調節パネルで弄ると…


「魔界への入り口が出来る。みんなもやってみよう!」


そして一般人が魔界に行く際には非化学知的生命体の同伴が必要だ。

その為にポルターガイストが居なければならない。


「相変わらず魔界は涼しいな。ずっと居たいぐらいだ。」

「そんな事言ってないで早く行こーよ!」


一般人が見たら卒倒しそうな見た目の奴らが多いが。

案外、優しい者ばかりだ。

ちなみに魔界に居る間は何故か幽霊やポルターガイストに触ることが出来る。

飛ぶことも出来ない様だ。

時空の歪みが原因なのだろうか?

ちなみにこの作品は一応!ファンタジーだったな…


「銀行に着いたら静かにしろよ。」

「分かった!黙ってる!」

「動くなよ?」

「…うん。」


危なかった、前に大変な事になったからな。

もうあんな目に遭うのは御免だ。


「さて銀行に着いたわけだが…なぜ中へ入らない?」

「動くなって…」

「そういう意味じゃなくて…私の周りに居ろ。」


2人一緒に列に並ぶわけだが…この時間だけはどうも苦手だ…

なんたって前の奴の背中を待っている間、見なくてはならないからな。

見る必要はないが周りをキョロキョロすると怪しまれてしまう。


「おい!前のお前!」


急に後ろの奴に声を掛けられた。

振り返ると、居たのは…ガイコツだった。


「何か用でも?」

「お前のとこのガキが俺の肋骨を抜いたんだよ!」

「え?」


ポルターガイストを見ると細い骨を握っていた。


「バカタレ!何やってんだ!」


今は触ることが出来るので、思いっきり頭を叩いた。

全力で叩いたので手がジンジン痛む。


「酷いよ…抜くなとは言われて無いもん…」

「じゃあ抜くな!返せ!」


ポルターガイストの握っていた骨を取って、本人?に返した。


「どうも本当に…お前も謝れ。」

「すまん。」


もう一回叩いた。


「ごめんなさい…」

「いや、もういいけどよ…叩くのは良くないな、バカになるから。」

「もう立派なおバカなので。」


気を取り直して、再び退屈な時間が始まる。

今日はわりとマシな日だな…いつもはもっと混んでいる。


「お嬢さん、キャンディはいかが?」


少しするとボウルを持った銀行の職員に話しかけられるポルターガイスト。

だがキャンディは取ろうとしない。


「どうした?取らないのか?」

「抜くなって。」

「抜くと取るは違うからな、取っても良いぞ。」

「やったー!」


ポルターガイストは飴を取った。

ついでに肋骨も取った。


「取るな!」

「取っても良いって…」

「骨に関することは何もするな!」


再度、肋骨を返して謝罪した。

こいつと居ると本当に疲れる…

だが報われる時が来た…遂に私の番がやって来たのだ!


「本日のご用件は。」

「お金を下ろしに、地上ドルを魔界レートで4500万ほど。」

「それではそちらの生物に右手を。」


これ、苦手なんだよな…

魔界の銀行では証明書の代わりに肉塊の様な生物の口に手を入れ、個人情報を読み取るのだ。

だがどうも、これが気持ち悪い。


「う……生温かい…」


口の中は生温かく、グチョグチョしている。

10秒程入れると認証されるが、手は粘液塗れだ。


「新しい財布も買おう、圧縮タイプの物を、中に全額入れてくれ。」

「了解しました。」


直ぐに新しい財布に入った大金が差し出された。

圧縮タイプは持ち運びにも便利。

もちろん、描写も楽ちんだ。

服で粘液を拭きとると、財布を受け取り、すぐに銀行を出た。


「楽器買ってよー」

「しょうがないな。」


約束は約束だ、ちゃんと守るのが義務だ。

近くの楽器屋に入店した。


「すごーい!楽器が沢山!」


ポルターガイストは目をキラキラ輝かせて楽器を眺める。


「博士!これ欲しい!」

「ドラムセットなんて置き場所が無いぞ。」

「じゃあこの笛!すごく安いよ!」


禍々しい笛だな…値段もかなり安いが…流石に怪しい。

これ以上、屋敷をカオスにするのは勘弁だな。


「駄目だ……これなんてピッタリだぞ。」

「えータンバリン?」

「鳴らしてみろよ。」


ポルターガイストがタンバリンを鳴らすとシャリシャリと小気味良い音が鳴る。


「こんなもの楽しいわけ……ぐ!楽しい…!」


どうやらお気に召した様だな、良かった良かった。

タンバリンを購入して、ついでに道中で土産を買うと、屋敷へ戻った。

それにしても地上は寒いな、これぐらい寒かったら来年の夏は氷河期だな。


「意外と早かったね、お土産買ってきてくれたか?」

「棒は売ってなかったが、菓子は買って来たぞ。」


マイには魔界銘菓のお饅頭を渡した。

キャッチコピーは確か「微妙、微妙すぎる。」だったような気がする。

見た目は青色で綺麗だが、食欲が失せる見た目だ。


「うわー!マズそう!ありがとう博士!」

「喜んでいるのか?それは。」


次にロボットの部屋の前まで向かった。

部屋と言ってもボイラー室だが。


「おい、ちょっと良いか?」

「何ですか…」


私の問いかけにロボットは扉越しに答えた。


「機嫌直してくれよ。」

「…」

「お土産、あるぞ。」

「お土産大好き!博士大好き!」


フフフ、誰もお土産には逆らえないのだ。


「ほらよ、お前にピッタリだと思ってな。」

「…?何ですか、コレ。」


私が渡したのは(ギャグじゃ無いぞ)魚の剥製だ。

でもただの剥製ではない。


「魚の剥製だ。ボタンを押してみろ。」

「これをですね。」


ロボットが剥製のボタンを押すと…


「人生とは常に前に進むことである。」


なんと深そうな言葉を喋るのだ!


「…」

「ど、どうした?気に入らなかったか?」

「いや、面白いですよ。けどなんて言えば良いか分からなくて。」


ロボットはまたボタンを押した。


「地上では1分の時が流れる間に、宇宙では60秒が経過する。」

「…」

「…」



「気を取り直して昼食にしよう!」

「イエーイ!」


時刻は昼時、お腹が空くのは当たり前だ。

ロボットとダイニングへ向かった。


「なんだ、何も用意してないのか?」


いつもなら色々、適当に並んでいるがテーブルは真っ平だ。

だが皆は揃っている。


「ごめんネ、コンロが使えなくテ。たまには宅配でも頼もうヨ」

「なら仕方がないな…何を頼もうか。」

「アタイはピザが良いすね。」

「ピザか…今日は違うものでも頼まないか?」


この前、買ったばかりの「新しい」電話帳を開いた。

この中には老人介護施設から軍事基地の電話番号まで書いてある。

なによりこの分厚さが良い感じだ。


「なんか候補はないか?探してみよう。」

「アイは奴隷が良い!」

「清潔な物で頼む。」

「スシ?なんてのはどうかナ。」

「スシか…」


デカルタの料理だが…あそこの料理はな…


「スシってあれだろ?サメとかイルカを生で食うやつだろ?」

「気持ち悪いっすね…」

「食い物とセッ○スは生が良いって言ってる国だぜ?食べたら脳が臭くなりそうだ。」

「それもそうだネ…病気になっちゃうかモ。」


だが宅配だってそんなに種類は無い…ピザやハンバーガーがほとんどだ。

しかも範囲外なんてのもあり得る。

都会の方はチェーン店が角を曲がるたび、あるのに。


「やっぱりピザになるな…」

「いつものピザバットすか?それともピーザラ?」


結局、迷いに迷って王道やいつものところに頼んでしまうのだ。

でもいかんせん、ピザは高い。

冷凍の物とあまり変わらないくせに人件費などと言う馬鹿げた事を言って値上げするのだ。

奴隷にでも作らせれば、安くなるはずだ。

何故、奴隷は禁止されたのだ?法を決める奴も奴隷を使っていた。

自分の事じゃ無いからどうでもいいはずじゃないか。

それに解放された奴隷のほとんどは仕事が見つからずに半数が貧困で死んだ。

政府は彼らを無慈悲に解放すると、放置した。

それこそ間違いじゃ…って何を考えているんだ…さっさと頼もう。


「注文するが、何が食いたい?」

「ピザ。」

「パスタ。」

「奴隷。」


まぁ、随分大雑把だが電話帳を見ながら電話かけた。

適当に注文してやろう。


「はい、ピザバットです。食中毒が起きても良いならご注文をどうぞ。」

「えーっとだな…クソ高いミックスとシーフードのピザをLサイズ2つずつとあんまり美味しくないパスタを6つ、あと奴隷ってやってる?」


「すいません、当店ではちょっと…マネーロンダリングならやってますけど。」

「それはもう間に合ってるな。それからピザなんだけど、シーフードの片方はチーズ多めで、ミックスの片方はお肉みたいなペラペラを多めにできる?」


「ペパロニですか?できますけど。」

「じゃあやっといて。ソーダ4つで以上。」

「承りました。住所の方は?」


住所か…いつも曖昧なんだよな…


「飛び降り岬って知ってる?そこら辺のお屋敷がそうだよ。」

「あー…わかりました、では50分ほどお待ちください。」


電話が切れた。

何とか住所は理解してもらった様だ。

何回も注文しているから当たり前か。


「注文出来たぞ、50分だとよ。」

「長いっすねー」

「適当に何か話でもしましょうか。」


1時間後


「だから俺様が思うにっすねー結婚していない人の料理を食べると性病にかかると思うっす。」

「それなら酒はどうだ?飲めば男だって騒ぎまくるし、運転が下手になる。」

「つまりお酒を飲むト、女っぽくなるって事?」

「その話止めませんか?怒られますよ。」


熱い議論に夢中になっていたが、1時間ほど経ってるじゃないか。

ピザはまだか?


「ねーまだー?」

「遅いな…何をやっているんだ?」


席を立とうとした瞬間、チャイムが鳴った。

ようやく来たか。

財布を持って玄関の扉を開けると、制服を着たドライバーが大きな袋を持って、立っていた。


「どうもーピザバットです。」

「全く、遅いって…あれ?」


荷物を受け取って、ドライバーの顔を見るとやけに見覚えがあった。


「なぁ、何処かで会ったこと無いか?」


ナンパ野郎みたいなセリフだな。


「………スーパーのお客さん?」


そうだ!この前スーパーでレジをやっていた奴だ。

あの時の作り笑顔は忘れるはずがない。


「そうだった!…クビになったのか?」

「ええ…お恥ずかしながら…」


もしかして私のせいでもあるのだろうか?

だとしたら何か悪いことしたな…


「それでお会計ですけど、158ドルになります。」

「細かいのが無いから…100ドル2枚で釣りは不要だ。あと、これはチップだ。」

「ああ、どうも。それでは。」


お金を渡すと、ドアを閉めて、荷物をダイニングへ持って行った。


「やっと来たっすか。」

「もう冷めてるだろうけどよ、食ってやってくれよ。」

「博士は食わないっすか?」

「一口だけ。」


ペパロニだっけ?が増量されていると思われる箱を開けた。

だが中に入っていたのは。


「うわぁ!なんだコレ!」

「どうかしたっすか?」


中に入っていたのは恐ろしい程にペパロニが乗ったピザ。

乗っていると言うか…もうそれじゃん。


「限度って物があるだろ!何だよこれ!こんなんもうペパロニじゃん!そのものじゃん!」

「キモイっすねー」

「断面を見てくださいよ!凝縮されていますよ!それに重さも異常です!」

「うわー!そんなもの見せるな!」


こんなもの食べたら塩分過多で即死だよ。

もはや持ち上げた時点で手が塩漬けされそうだ。


「早くそれを燃やせ!捨てろ!」

「そこまで言わなくてモ…私が後で食べるヨ。」


幽霊はピザの箱を遠ざけた…

もうピザを見たくは無いがチーズ増量の方も見ておくか…


「これがシーフードのチーズ増量だな。」


箱がやけに重いな…それに動いている様な気が…

構わず箱を開けると…


「ヂーズ…」

「は?…!?」


一瞬だがチーズのスライムみたいな生物が見えたが、すぐに私の視界は暗闇に閉ざされた。


「(なんだ!?息が…)」

「ギャアア!博士がピザに食われてるっす!」


どうやら中のモンスターが私の顔を箱で噛みついているらしい。

って冷静に分析している場合ではない!息が出来ない!


「おい!コレを取ってくれ!」

「ちょっと待ってて欲しいっす……これで良し。」

「何をした?」

「顔の部分がちょうど平らなので顔を書いたっす。」

「バカヤロウ!本気で怒るぞ!」


やばい!息がもう…


「じゃあこれで良いすか?」

「今度は何をした?」

「怒っている眉毛を。」

「この野郎!もう…」


最初から自分でやればよかったのだ。

幸いにもピザモンスターの力はそんなに強くなかったので簡単に取れた。


「はぁ…はぁ…お前ら…」

「冗談すよ、そのモンスターどうするっすか?」

「冗談ってお前…もういいよ!こんなピザお化けつまみ出せ!」

「ヂー!」


助手はピザお化けにブルーチーズ与えた…何故?


「何やってんだお前…」

「つまみ出せって。」

「そうそう、このブルーチーズの苦みがワインに…殺すぞ?」

「そんな怒る事無いじゃないですか、先輩だってワザとやったわけじゃないですよ。」


ロボットが止めに入るが…ワザと以外にあるかよ。


「そうっすよ、許してくれなきゃ泣いちゃうっすよ?」

「だったら泣け、そうした方がよっぽど楽しい。」

「もう、そんな二人共!止めましょうよ!パスタでも食べてさー」


怒りはデカいが腹の虫には勝てんな。

まぁ、今回の事は水に流そう。


「…今回だけだぞ?」

「博士ってやっぱり人が良いすね!ところでモンスターが居ませんすけど。」

「アイが捨てといたよ。」

「じゃあ、パスタを食うか!」


でもそう言ってもやっぱりちょっと警戒してしまう…


「油断は出来ないぞ…空を飛んだり、宗教を始めたりするかもしれん。」

「そんな事あるわけないっすよ。」

「それもそうだな…」


考えすぎか…

某日、談話室


「お前、それ好きだな。」

「ええ、面白いですから。」


私は談話室でロボットと一緒にテレビドラマを見ている。

普段はテレビなんて見ない。

たまたま一緒に鉢合わせただけだ。


【さて二人はどうなってしまうのでしょう!続きは明日の同じ時間、同じチャンネルで!】

「いつも同じ様な終わり方してんなこのドラマ。」

「どうしても気になって、続きを見てしまうのですよ。」


良くあるが、古い手だな。

だがテレビ局も必死なのだろう、いくら面白くても数字が取れなければ意味が無い。


「はー面白かった。」

【…アンにいじめられたよー何か道具【番組の途中ですが臨時ニュースです。】


ロボットがテレビを消そうとした瞬間、ニュースに切り替わった。


「こんな時間帯に急だな。何かあったのか?」

「まぁ、ニュースですから。」

【レナ・バトス国立刑務所から受刑者が脱走した模様です。】


まじかよ…けどまぁ、ここからは遠いからな。

安全だろう。


【受刑者の名前はプライバシーによる問題で公表できませんが、顔はこんなマヌケ面です。】


テレビに映し出されたのは何か…普通の奴だった。

わざわざニュースにするぐらいだからてっきり殺人犯かと。

次にニュースでは顔が隠された看守のインタビューが始まった。


【アイツはヤバイよ、ヤバイって…何がヤバイってさ、平気で他の奴とか泣かせるし、静かにしてって言いながら屁とかするし…とにかくヤバイの、すごくそれはもう…でも補助輪を片方、外して自転車に乗るのはすごいと思った、誰にもマネできないね、うん。】


よかった、バカそうだ。


「ここまで来ることはなさそうだな。」

【ちなみに受刑者は万引きで2日の懲役にされていた模様です。】

「ワタシよりマヌケそうですね。」


そしてニュースはまだ続き、今度は専門家の話が始まった。


【このノートは受刑者の自宅の部屋から見つかった物です。このノートにはダークブラッドやインフィニティフェニックス等の意味不明な言葉や絵が描かれています。専門的観点で見ると、この受刑者にはサイコパスの気質がありますね。それに受刑者はよく、上着を着ていたようです。と言う事は上着を着るという行為には殺人欲求を高める効果があるとされます。その証拠に凶悪犯罪者のほとんどが上着を着ています。なので皆さんには上着を着ないことを推奨します。以上。】


「なんだと!白衣の私はどうれば良いんだ!」

【白衣は大丈夫です。】

「それなら良かった。テレビって中々、便利だな。」


次からは違うチャンネルとも契約でもしてみよう。


「いや、そんな事を考えている暇はない!何か嫌な予感がする、急いで戸締りを。」

「博士、お客が見えてるっす。」

「来るのが早いよ…」


たった今、ニュースで見ただけなのに…こんなの対策の使用が無いじゃないか…

だが客と言っているなら、私に用があるはずだ。


「どんな奴だ?」

「ほら、この前、襲撃したじゃ無いすか。起床紳士の人っす。」

「ああ移動壊死の…」

「機○戦士ですよ。」

「企業戦士だ!」


本人がツッコミにわざわざ部屋までやって来た。

そういえば屋敷まで来るって言ってたな。


「勝手に上がってんじゃねぇよ。」

「そうだった…邪魔するぞ。」

「お前ごときがよくぞ、ここまで来たな、企業戦士。」


一度は言ってみたかったセリフだ。


「このクソ外道の魔王め!俺の土産を喰らいな!」


スーツの男はロールケーキを取り出した。

結構、良い所の奴だ。


「悪いな、気を使わせてしまって。」

「一応礼儀だからな。」

「ロボット、茶でも出してやれ。」


此処で立ち話は何なので、応接室へ案内した。


「驚いたぜ、お前みたいな奴でも、豪華な屋敷に住んでて高性能なロボットを所有しているなんて…それに、トカゲのペットまで。」


「羨ましいか?割とポンコツだぞ。」

「酷いですね、ワタシだって7割は真面目にやってますよ。」

「そうっすよ、自分だって好きでトカゲになったわけじゃないっすから。気に入ってますけど。」


残りの3割と助手は置いといて、本題に入ろう。


「単刀直入に言うが何しにやって来た?ガラス代か?」

「それもあるが…お前は脱獄した受刑者って知ってるか?」

「今さっきテレビでやってたな。」

「実はあいつの正体とお前には少し関係がありそうだぜ。」


脱獄した奴が私に?

あんな顔なんて全然、見たこと無い。


「どういう意味だ?あいつは誰なんだ。」

「説明が難しいな…あいつに名前は無いんだ。当の本人も名乗らないし、一つ分かるとすれば裏の業界では知る人ぞ知るような、凄腕の暗殺者兼便利屋と自称しているらしい。」


「…ヒシ―・ワッツではないか?」


地下街で働いている時に噂で聞いた事がある。

見るたびに姿が変わったり、死んだ奴の亡霊として出てくるとか。

謎が多い、人物だ…だがそんな奴が何故、私に関係が?


「多分な…」

「まさか、そいつは私を殺しに?」

「可能性の話だ。最近、ムーン・ヴァンプという会社の関係者が次々と行け不明になっている。」

「おいおい!何でお前が私が勤めていたと知っているんだ。」

「あまり企業戦士を舐めてもらわないで欲しい。お前が銀行を襲った事も、妊婦を殺していることも知っているんだぜ?」


それはそれで何で逮捕しないかが気になるが…

マジこいつらは何者なんだ?

というか私の首を取りに来たのじゃないのか?


「わざわざそれを忠告しに来てくれたのか?」

「まぁな、それにお前の首を取るのは私達、企業戦士の務めだ。」


結局は取るのか…


「だから先を越される前に、お前を殺しに来た。」

「なにぃ!」


スーツの男は懐からナイフを取り出した。


「マジで殺すのか?」

「当たり前だのビスケット。」

「博士に仕える助手として、そうは問屋が大根おろしっすよ。」


クソ…こいつら、つまらんギャグばかり言いやがって…!

真面目にやれ!


「私もそう易々と死ぬわけにはイカの塩辛だ。」

「そうですね。だったらワタシも戦いマスカルポーネ。」


しまった!私とロボットですらノリで言ってしまった…


「それでは3対1だな…不公平だぜ。」

「公平な戦いなんてあってたまるか。」


だがこちらは武器を持っていない…

私は体力があまりないので真っ向勝負には向いていないのだ。


「それでは礼儀正しく、3つ数えてから一斉にとブァ!!」

「…なんだ!?」


スーツの男が急に血を吐き出した。


「これでアタクシこそが一番のりだねー?」


誰かの声が響くと、男の腹が赤く染まり、刃の様な物が飛び出して来た。

そしてスーツの男は床に倒れ、後ろの受刑者が姿を現した。

だが武器は持っていない…


「誰だ!」

「ニュースで見なかったか?お前の頭は空っぽなのか?ハロー?」


なんとも変な話し方をする奴だ…こいつがヒシ―・ワッツなのか…?


「何しに来やがった!」

「君こそが一番知っているはずだねー」

「博士を殺しに来たわけっすね…」

「凄いね!君が知っているなんて!世紀の天才だ!」


奇妙って言うか…変な奴だな…


「今更ですが!アタクシの正体発表会を開きます!それでは開会の挨拶を。」

「何なんすか…こいつは…」

「今回は大変お日柄も良く、足元の悪い所をありがとうございます。それではスポーツマンシップにのっとり…カンパーイ!」


「この変態、ワタシより頭がおかしいです…」

「ええい!真面目にやれ!」

「オーウ…ブラザー頼むぜ、茶化さないでおくれ。それに捕まえるにはもっとデカい船が必要だ、だから二つで充分ですよ。」


埒が明かない、こっちから仕掛けるか。

まだ、茶の入ったティーカップを相手に投げつけた。


「テメェ何すんだ!シェフを呼べ!この茶を淹れたのは誰だ!ションベンみたいな味がするぞ!」

「よくわかりましたね。」

「全く…機械好みの浅ましい飲み物だ…まずはお前から死ね!」


暗殺者は目にも止まらぬ速さでロボットに突っ込むと、暗殺者の拳が槍の様に尖り、ロボットの腹に貫通した。


「ロボット!!」

「シシシ深刻な損傷が発生しましたたたたた自爆プロトコルを開始します。」

「自爆する前にアタクシが壊してしてやらぁ!」


暗殺者はロボットを腹から横に真っ二つにして、上半身を投げ捨てた。

ロボットの目は活動を完全に停止して、真っ黒になっている。

自爆は免れたようだが…


「この野郎!なんてことを!」

「そして次はトカゲ人間、貴様だ!」

「何が…グァァァ!!」


助手の両手が吹き飛んで、凄まじい程の血が噴き出す。

私は一体どうすれば…!


「トカゲの尻尾って簡単にもげるそうね。それに美味しそう!今晩はトカゲ肉のシシケバブよ!」

「アアアアァァァ!!」


暗殺者は今、助手の尻尾をもぎ取ろうとするのに必死だ…逃げるなら今しかない!

だが、逃げるのか…?助手やロボットを置いて、尻尾を巻いて逃げるのか?

でも今は、そんなつまらんプライドは捨てて、保身に徹底しなければ。

私はいつだって冷酷に生きて来た、これからもそうしてやる!

自分にそう言い聞かせて武器を取りに、研究室へ走った。


「(すまん…だが仇は取ってやる!絶対に!)」


だがもう一つ、心配なことがある。

幽霊や宇宙人たちの姿が見えない…あれだけ騒げば、様子を見に来るはずだ。


「あーあ、あの人逃げちゃったねー見捨てられたのかな!君は!」

「(何はどうあれ、博士には逃げて欲しいです…助手になれて光栄でした…)」



「な、なんとか研究室まで逃げて来れたが…」


だが道中は物静かで、不気味だった…

まさか全員とっくにやられてしまったのか…

だとしたらもう此処で戦うしかない。


「(とにかく使えそうなものを片っ端から集めるか。)」


机や棚の中を物色するが、あまり良い物が見つからない。

武器類はもっとカッコいい物を作ろうとして、全て解体してしまったのだ…

無駄な発明品ばかりが集まる。

異次元物資輸送機や特定時間逆流バッジ…ロクな物が無いな…

とりあえず、材料や発明品を持って何処かへ避難しなければ。

この屋敷で一番セキュリティが高い場所は…


「(ロボットの部屋か…あそこは唯一扉が合金製だ。)」


廊下には誰も居ないな…

恐ろしく、静まり返った館を歩くのは恐ろしい。

角を曲がるたび、ヒヤヒヤする。


「博士?」

「う!!お前か…」


かなり久しぶりに声が出ない驚き方をしてしまった。

足元に居たのはネズミだ。


「一体何が起きてるの?」

「敵が侵入して来た、お前も付いて来い。」

「わかった…」


ネズミと二人?で何とかボイラー室までたどり着いた。

やけに重圧な扉を閉めて、しっかりと鍵を閉ざした。


「みんなは何処に?」

「もうやられてしまった…」

「そんな…」


いつまでも隠れられるわけがない、早く何かを作らなくては。

でも、何を作れば…


「最強の武器とは知能である。」

「ごめん、何か気になって押しちゃった。」


剥製が喋る言葉にはあまり意味が無いかもしれない。

だが説得力はある。


「殺めることだけが勝利ではない。」

「面白いねこれ。」


輸送機にバッジ…これを使えば…だが…


「ところで博士、これ何。」

「それは…環境対応スーツだ…!」


ネズミが見ているのはどんな場所でも耐えることが出来るスーツ。

これは効果時間がたったの30秒しか持たないからお蔵入りにしたものだ。

しかも身体のラインがクッキリ出てしまう…だが!


「完璧じゃないが、イイ感じの策を思いついたぞ!」

「え?」

「ネズミ、手伝え。」


かなり破天荒で危ないがこれに賭けるしかない。


「ネズミ、どうだ?」

「ちゃんとセットして来たよ。」

「こっちのスーツの準備も万端だ!」


作戦決行だ。

まず最初にヒシ―・ワッツをおびき出さなくては。


「おい!便利屋!出てこい!戦ってやるよ!」


廊下にそう叫ぶ…すると…


「こんなところに居たのかい!探しちゃったぜ!マイハニー!」


血塗れの奴が出て来た。


「ぶっ散る準備は出来たか?最高に派手な最後にしてやるよ!」

「此処じゃ汚れる、不安定だが屋根で戦おう。」

「立派な心掛けだな!心掛け大賞受賞だぞ!」


屋根の上


屋根裏を経由して屋根へ上ったが…怖いし足場が不安定だな。

だがこうするしか道は無い。


「良い風だな、そう思わないか?」


不思議と気分はスッとしている。


「風と共に死ぬなんてロマンチックな奴だね?それはそうと寒いので早くしよう。」


やるぞ…私はやるぞ!


「便利屋!私はただでは死なないぞ!」

「ならば抵抗しろ!戦え!」


そうして奴ともみ合いになった。

傍から見れば醜い喧嘩だが、私にとっては命がけの殺し合いなのだ!

私が奴の脇腹にパンチすれば、お返しが倍以上、帰って来る。

それでも必死に抵抗した…わけではない。

すべて計算済みだ、想定内だ。

こうやってもみ合っている間にも屋根の端へ、端へと追い込んでいる。

そして屋根から落ちる寸前に…


「今だ!起動しろ!」

「な、何を!?」


私が合図すると、庭に置いた輸送機がネズミによって起動された。

次元番号は適当に合わせているので何処につながるかは知らんが最低でも生命が存在できる所に繋がっている。


次元トンネルは上を向いている、成功だ。

そして私は一瞬の隙をついて、スーツの電源をオンにすると、奴と一緒に落ちた。


「何をする気だ!」

「ヒシ―・ワッツ!お前にこの次元は狭すぎる!何処か広い所で頭でも冷やしてろ!」


トンネルの先は真っ暗だが、宇宙の様に無重力だ。


「此処は何処だ!?」

「知るか。」


次に私は特定時間逆流バッジを起動して、奴から手を離した。

これは付けた物だけに時間の逆流が起きる、つまり私だけの時間が戻る。

なんか最後に挨拶でもしてやるか。


「。ツッワ・-シヒだ後最でれこ」

「一体どうなるんだ!?」

「。れくてせわ言けだ言一がいならかわはかるなうど」


ちょっとかわいそうだが…


「。さようなら」


私は奴を見送って、元の世界の屋根の上へ戻ってきた。

どうやら成功した様だ。

一息つくと、バッジをオフにして、下へ降りた。


「成功だ!」


そう言いながら輸送機をオフした後、ベコンベコンにぶち壊した。


「博士…でも皆は…」

「そうか…だが安心だ!」


犠牲は有ったがバッジもある!

これを使えば皆を蘇生することが出来るのだ!


「何が安心なんすか?」

「「うわぁ!!」」


助手が居る…何故!?

もしや次元の歪みか?


「なんすか、幽霊でも見たような顔して。」

「お前…死んだんじゃ…」

「トカゲの生命力を舐めないで欲しいっす。あれぐらい余裕っすよ。」


よかった…


「とりあえず、宇宙人達を見つけるぞ。」

「何言ってるすか?」

「は?」

「二人ならお化けたちと出掛けたじゃないっすか。」


え?聞いてないぞ…そんなこと…


「あ…博士には言うの忘れてたっす…」

「お前な!」

「そんな事より、ロボを修理しましょうよ。」

「……そうするか。」


怒りよりも何故か安心したという感情が自分の中で勝っている。

ちなみにロボットはバッジで修理は出来ない。

何故ならこのバッジは逆流する対象が一つしか設定できないのだ。

私は1つの生命として逆流できた。

ロボットは大雑把に言えばパーツの寄せ集めなので無理だ。

しんどいが自分で修理するか…だがそれより面倒くさい事がある。

応接室の掃除だ…ついでに企業戦士も蘇生してやるか。


つづく

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