怪奇!!宇宙からの未知なる無知
某日の昼下がり、諸事情でトカゲ人間に変身した助手とドS変態ロボットと共に私は庭に居る。
理由は簡単だ。
前に埋めようとした死体を放置してた為、本人達から苦情を受けたのだ。
コンクリで埋めようと思ったがシンプルにそのまま埋めることにした。
外の気温はクソ寒いのでとっとと終わらせよう。
「この深さなら大丈夫でしょうか?」
「どうせ動物が来たら追い払えばいいだけさ。」
「なら、早く埋めるっす。」
最初はちゃんと二人分掘ったのだが、間隔が狭かったために繋がってしまった。
まぁいいやと言う事で大きい穴に二人共埋めることにした。
「遺品は返さなくて良いっすか?」
「過去を思い出して辛いからって返却された。」
そして遺品と一緒に二人の遺体を並べた。
どうせだしなんか一緒に埋めるか。
「記念に何か埋めてみないか?」
「超悪不謹慎な事言わないで欲しいっす。」
「そんなこと言うからバカって言われるのですよ?]
「やかんし。バカとは言われてねぇよ。」
特に何も持って無いので止めた。
埋めたら上に畑でも作ろうか?
そうして育った野菜を食べたらカニバリズムになるだろうか?
そんな事を考えながら私達は穴を埋めた。
だが埋めたら埋めたで目立つな…
後で墓石でも立てておこうかな。
「いやー寒いっすね。早く屋敷へ戻るっす。」
「ワタシはロボットなので寒さは感じませんが疲れは感じます。」
「そうだな…うん?何だアレは?」
何となく空を見上げると上に光る物体を見つけた。
あれが噂の火球か?
「きっと流れ星っすね!博士と結婚できますように!」
「三回言わなければ意味無いし、この国では同性婚はタブーですよ?」
「お前らそういう問題か?何かおかしいぞ。」
火球が大きく…いや!落ちて来ている!
「やばいっす!隕石っすよ!早く机の下に隠れて!」
「落ち着いてください!それは地震の時です!こういう時は冷蔵庫に隠れましょう!」
「違う!それは核爆発の時だ!とりあえず、屋敷に入れ!」
急いで屋敷に戻り、三人で机の下に隠れた。
隠れる意味は無いが、念のためだ。
しかし、しばらく隠れていたが何の音もしないし衝撃も来なかった。
「何も起きないっすね…」
「外に出てみるか?」
机の下から出て、庭の方を見ると信じられない光景が。
謎の乗り物?が庭に置かれている…
「う…宇宙人でも攻めて来たのか?」
かなり危険な行為だが庭に出て、謎の乗り物に近づいた。
「爆弾じゃないっすよね?」
「窓が付いているから違うと思うが…」
眺めていると、急に窓が開いた。
慌てて屋敷に戻り、窓から外を眺めた。
「宇宙人が降りて来るっす!もうダメだ!虐殺される!」
「落ち着け!友好的かもしれないぞ?虐殺が目的なら無人兵器を送る方を選ぶはずだ。」
「誰か降りてきましたよ!宇宙服を着てますね。」
謎の乗り物から宇宙服を着た2人組が降りる。
私達を窓越しに見つけると慌てて乗り物へ戻った。
敵対生物と思われているのだろうか?
意思の疎通が可能か実験してみるか。
「ちょっと!危ないっすよ!外に出るなんて!」
「殺されるかもしれませんよ。」
「このまま放置ってわけにもいかないだろ?」
再度、外に出ると私はゆっくりと乗り物に近づいた。
敵意が無い事を知らせるため、両手を上げてみる。
それを理解したのか、乗り物から降りて来た。
「下がれ!宇宙人!」
「同じ言語を話せるのか。」
どうやら同じ言葉を喋れる様だが機械を通しているのだろうか?
降りて来た2人の内、片方は螺旋状の鉄の杭みたいな物を持っている。
武器だとしたら…弱そうだ。
「まぁ、待ってくれ。私達からすればお前らの方が宇宙人だ。」
正確に言えば、宇宙に存在する生命体は全て宇宙人だ。
「言われてみればそうだね…」
「納得するな!…この星の代表は誰だ。」
武器を持っていない方は好戦的では無いな。
問題はもう一人だ。
「星の代表なんて戦争が起きるほどの問題だ。この星には居ないね。」
「低文明な星だ…お前はこの星の代表的な知的生物の一種か?」
「残念ながらこの星に知的生命体は居ないな。居るとしたら蟻だ。」
それにしても人間と同じ様な姿をしているな。
「何をジロジロと見ている…」
「人間とあまり変わりはないのだな。」
「逆に思うが、全く同じ条件で生まれる生物が違う姿をしてると思うか?」
何故か納得してしまう自分が居る…
「それよりお腹空いた。」
「自由な奴だな…お前ら。」
「こちらにも事情がある、仲間が腹を空かせているのでなんか恵んでくれないか?」
「低文明の奴から飯をたかるのか…」
私達からすれば猿に飯を恵んで貰うと同じ考えだが…
気にしない様にするか、殺されそうだ。
「お前らの口に合うかは知らないぞ?死ぬかも。」
「この星については調査済みだ、私達の星とそんなに変わらない様だ。」
「それはともかく、最低限の礼儀として名前は聞かせろ。」
私に名乗るほどの名前は無いが、こいつらにはあるはずだ。
宇宙人のネーミングセンスも気になる。
「お前らでは発音できない名前だが…自分の事はアイと呼んでいる。自分と言う意味だ。」
「私はマイだね。マイも自分と言う意味だよ。」
「私で言う私みたいな感じか…意味が分からなくなってきた…」
これ以上話がややこしくならない様に宇宙人のアイとマイを屋敷に招いた。
「宇宙人と仲良くなれたっすか?」
「うわぁ!トカゲ型原住民だ!」
助手を見て驚く宇宙人だが、普通の人が見ても同じことを言いそうだ。
私でさえまだ慣れない。
「安心しろ、こいつは私の助手で私の命令は絶対だ。」
「なんだペットか。」
「原住民の事は否定して欲しかったっす…」
「そんな事より、幽霊は何処だ?」
私がそう言うと、直ぐに幽霊が上から透けて来た。
これは意外に慣れた。
「なんか用?」
「こいつらになんか食わせてやれ。」
「何で私なんダ?」
「この屋敷で料理できるのお前だけだろ。」
幽霊は面倒くさそうに厨房へ向かった。
なんか申し訳ないな…あとで何かあげよう。
「お前ら宇宙人は普段、何を食べてるんだ?」
「宇宙食っすかね?」
「安直な発想だな、アイの惑星は資源枯渇により、普段は栄養剤とガムで空腹を紛らわせている。」
「この星に来た理由もそれが目的だよ。」
「なんだ?資源を探しに来たのか?」
まさか、大量の宇宙人が移住してくるなんて…無いよな?
「いや、ひもじいのは辛いから、マイと一緒に逃げて来た。」
「仲間や家族なんてクソ喰らえだね。」
「酷いっすね。」
「3年かけて何千回もワープを繰り返したよ、だから追手は来ないはず。」
こいつらが薄情な連中だと同時に、追加は来ないと知ったら、少し安心した。
「栄養剤もカツカツで1ヶ月前から、肌を舐めて我慢したよ。」
「悲惨だな…お前らこの後どうするんだ?この国に住むのか?」
「それに関して、一つだけお願いが…」
「駄目っすね。」
私が言うよりも早く、助手が断った。
これ以上、変な奴がこの屋敷に住むと、冗談抜きで化け物屋敷だ。
だが断るのもかわいそうだ…
「ええー!エアコン付いてるならマイと1室で良いから!」
「エアコンなんて物、この屋敷には1個も無いぞ。」
「何だってするから!」
そう言われると…確かに最近、人手不足と思う事は…あまり無いな…
だが、最近ポルターガイストが暇そうだしな…こいつらが居れば、少しは静かになるだろうか?
それに幽霊も一人で炊事、洗濯、裁縫を全て一人でやっている。
二人ぐらいは増えても良いか?…ネズミは知らん。
「子守と家事はできるか?」
「それは安心!マイはねーベビーキラーで有名なんだよ。」
「アイも料理は出来ないけど、洗濯とかは得意だ。」
「…まぁ、良いか。面倒見てやるよ。」
ポルターガイストはもう死んでるし…大丈夫か。
幽霊も少しは喜ぶだろう。
「ラッキー!お家決まった!」
「なんでっすか!俺様が居るじゃないっすか!」
関係あるのか?
「話し方から見て、どうせまだ子供だろ?」
「そうっすか?宇宙服は大人サイズっすよ。」
「コレはただの宇宙服ではない!なんと子供でも大人みたいな力が出せるようになるよ!」
「何でそんな物、持ってるんだ…」
もしかしてこいつらの星では子供も働かせているのか?
だとしたらとんでもない奴らだ。
発展とは愚かで知性的なのだ。
「マイ達はね健康で五体満足だから、すぐに働かされるんだよ。」
「やっぱ、お前らの星怖いよ…」
「アイがやらされたのは物乞いが多かったかな…たまに人さらいも。」
「そしてマイは淫売と美人局が主流だねー」
「それはそれは…事細かく詳細に、尚且つ激しく聞かせてください!」
ロボットはグイグイと興味を示す。
本当にロボットだよな?
中に変な奴が乗っているとか無いよな?
冗談はさておき、幽霊が呼びにやって来た。
ダイニングへ行くと、オートミールが置いてあった。
アイとマイは宇宙服のヘルメットを少し開けて、食べる。
脱げよ…
「なにこれ?穀物?」
「オートミールって言うんだ。私は好きだな。」
「これ、味がするね。」
「そんな悲しい事、言わないデ…」
久しぶりの食事が気に入ったのか、2人はすぐに食べ終えた。
「食べ終わったなら付いて来い、部屋へ案内しよう。」
私は二人を部屋へ案内した。
助手とロボットには倉庫へ色々、取りに行かせた。
ところで寝るときは宇宙服を脱ぐのだろうか?
流石に取るよな…てか息は吸えるのか?
「この部屋なんてどうだ?隣は助手の部屋だ。」
「良いねこの部屋、臭くないし、風も吹いてないね。」
「逢引宿より快適。」
「生々しい事言うんじゃねぇよ…」
この部屋は空き部屋だが…その理由が助手にある。
ロボットが少しの間だけこの部屋を使っていたが、隣から苦しそうな声がして気になって仕方がないらしい。
助手に注意するのはトラウマになりそうなのでしていない。
「変な声が聞こえるかもしれないが…気にしない様に。」
「え…怖い。」
「どうしても気になるなら壁を叩け、多分収まる。」
「もっと怖いよ…」
この部屋だけ壁が薄いのだろうが?
他はかなり防音されているのに?
やはりこの屋敷は不気味だ…
「寝床さえ置いてあれば良いよな?」
「自室なんて寝る以外に使わないよ。」
「極端な奴らだな。」
何もない部屋にとりあえず、マットレスを一枚だけ置くことにした。
酷い殺風景になるが、我慢してもらおう。
寝る所があるだけ移民の生活よりは快適だ。
「その服は脱がないのか?」
「脱げるけど、何かと便利だからね。」
「寝るときもか?」
「風呂と寝るときは流石に脱ぐよ…排泄は中で行うけど。」
臭そうだな…オムツの様な感じに吸収するのだろうか?
それともチューブを通して外に送るのか?
どちらにしても落ち着かないし、やろうとも思わない。
だがこいつらの星では排泄は恥ずかしい行為ではない可能性もある。
逆に他人を殺すことが違う星では普通の可能性もあり得る。
宇宙と知能とは分からない物だな。
「にしても、アイ達の星以外に生命体って居たんだね。」
「そりゃ当たり前だ、呆れるほど広い宇宙に自分たち以外、居ないなんて怖いだろ。」
「居たとしても怖いけどね。」
時に、この宇宙とは誰かが造った物で、そこに住んでいる私達は、創作の人間なのかと思う時がある。
もしも、そんな馬鹿げた事が事実だったら…笑えるな。
だが不可解な事が度々、起こる。
特に自分の名前を言う事が出来ない…名乗ろうともしたくないのだ。
「博士?博士!」
「う!…何だ?」
「マットレスを持ってきたっす。」
「毛布と枕もついでに。」
変な事を考えていたら、いつの間に没頭してしまったらしい。
もうこの話題は考えない様にしよう。
「置いてみたっすけど…独房見たいっすねー」
「お前の部屋と似たり寄ったりだよ。」
「住めば都と言いますよ?」
「都って何?こんぶ?アイは海藻きらいだよ。」
またこの屋敷に不愉快な仲間が増えた…
だが悪い気はしないな、騒がしいのは好きだ。
うるさいのは嫌だが…
…
「博士は前世って有ると思うすか?」
「急だな…無いと思うよ。」
談話室での不定期開催行動であるダラダラ怠けるを開催中、前王者である助手が質問を私に投げかけた。
「どうしてっすか?」
「現実的じゃ無いからな。」
科学的に証明出来る、出来ないとかの次元では無い話は信じないことにしている。
これは自分のモットーでもある。
風呂上がりに毎回、決まった手順で服を着るのもモットーにしている。
「そんな事言ったら…宇宙を信じないことになるっすけど。」
「そうか?宇宙は現実そのものだ。現に今現在、私達は生きている。」
「まぁ、こんなどうでもいい話は置いといて、この前テレビで面白い話を聞いたっす。」
「またテレビか…お前はテレビ好きだな。」
私は新聞以外のメディアをあまり信用しない。
何故か、信用できないのだ。
「テレビは良いすよ、知性と引き換えにエンターテイメントを楽しむことが出来るっすから。」
「そうかい…」
「さっきの続きっすけど。小さな村に関する話っす。」
「村?」
怖い話だろうか?
苦手なんだよな…
「正確には村おこしの犠牲者達の話っすね…」
…
某農村
ここは静かで平和な村、だが辺境に在る故に人口はたったの100人程度だった。
その半分以上が高齢者なので村はいつも働き手に困っている。
村長達はどうしようかと悩んだ末に、でっち上げで人を呼ぶことにした。
そのでっち上げとは、神の魂を持つ子供の話。
だが安易な嘘ではすぐにバレてしまう。
「例の子供なんてのは…どうだ?」
村の男が考案したのはとある子供を使ったもの。
その子供は手が3本、足が4本の奇形児だった。
恐ろしい見た目から家族もろとも村八分状態にされている。
「…」
誰も何とも喋らなかった。
だがそれしか道は無い。
実際に四肢が多い神は存在する。
やるしかなかった…
次の日に早速、村長達はその家族の家へ向かい、話をした。
「…と言う訳だ。」
「何を馬鹿なことを…狂っている!」
当たり前だが、子供の両親は承諾しなかった。
「今まで散々、差別して…子供まで取り上げるのか!」
「タダでとは言わない、大金を渡そう。」
「金の問題ではない!」
「子供の為か?では尚更だ。神として崇められるのだぞ?」
村長達は大金を差し出した。
子供の父親は断ったが、母親は…
「これだけあれば…」
「お前…売る気か?自分の子供を!?」
「うるさい!あんな気持ち悪いの…早く連れて行きな!」
村の男達は家に上がり込み、子供を連れて行こうとした。
当然、父親は止めに入ったが、取り押さえられた。
「アー!アー!」
子供も抵抗したが、敵うはずが無く、連れて行かれた。
ついでに父親はリンチされた。
大金を渡した村長だがその晩、子供の家に火を点けた。
理由は邪魔になるから。
そんな理由で子供の両親は焼かれる、こんがりと。
「分かってると思うが、他言は無用だ。」
裏切者は容赦なく粛清される。
それは暗黙の了解だった。
子供は物を喋れぬ様に喉を潰された。
…
「凄まじい話だな。」
「そうっすね…続きですが。」
…
結果として策は成功。
村には連日、人が訪れる様になった。
神を信じる者の中には物珍しさに来訪する者も。
村は大いに賑わった…だが事が大きくなりすぎたのだ。
子供を寄こせと言う輩が出始めた。
無神論の奴らまで。
「村長!大変です!」
そしてある日、事件は起きた。
過激な教徒に子供が誘拐されたのだ。
直ぐに村の者達は後を追ったが、子供が見つかったのは死後…しかも遺体の半分は誘拐した者の腹に。
子供を食すことで己自信が神になろうとした様だ。
しかも嫌気がさした村の一人が世間に全て嘘だとチクった事により村に人は来なくなった。
皮肉なことに村の名は知れ渡った、世界中に。
…
「こんな感じっすね。」
「これほど奇怪な話は大袈裟に言って2世紀ぶりだ。」
「ちなみにこの話はセデネン・ドゥルクの話っす。」
「じゃあ嘘だな。」
アイツらの話はあまり信用しない様にしている。
前にひどい目にあったからな。
「酷いっすね。人種差別すか?」
「人種って言葉がある時点で差別もクソも無いだろ。」
「鶏は白と茶色で分けるっすよ。」
「鶏は馬鹿だから。」
レイシストと言われることが度々あるが、自分の意見を貫き通す事は悪い事では無い。
むしろ称賛されるべきだ。
「あ!今、最高に差別的な言葉を思い出したっす。」
「なんだ?言ってみろ。」
「私、今から買い物に行くけど万引きに疑われないか心配。冗談よ、だって私、外国人じゃ無いから。」
「随分前に聞いた事があるな。」
これはあくまでもこの世界の話だ。
何処かの世界とは何の一切も関係ない。
「ところで拙者、思うっす。」
「何がだ?」
「人間のピークって30歳までじゃ無いっすか?」
もしその話になると私のピークはもう終わることになる。
「興味深いな…何故そう思う?」
「若いうちは性欲も盛んで、好きな物をたくさん食べられるっす。」
「そうだな。」
「でも30過ぎた頃からすぐ疲れるし、すぐ胃がもたれるじゃないすか。」
そう聞くとなんか怖くなってきた。
私はまだ元気だ、油ものだってたくさん食べられる。
「極端すぎないか?ヨボヨボでもヤッてる奴は居るし、大食いの奴もいる。」
「そうっすよね…間違ってたっす…」
「だが、面白いじゃないか。一理はある。」
「そう言ってもらうとありがたいっす。」
実は科学の研究において、意味不明な事でも役に立つことがある。
日常から異常を見つけ出すのは頭が良いだけでは出来ない。
それほど客観的に見る事は大事な事なのだ。
それに、助手をフォローするのは私の役目でもある。
まだ時間はある、もう少しダラダラするか…
「話は逸れるっすけど、宗教には興味あるっすか?」
「あえてツッコミはしないが…どうも思わん。」
「神様の事は信じない事っすか?」
「必要な時以外はな。」
誰が何をいつ信仰しようと人の勝手だ。
なんならそこら辺の石ころを崇めるのも良い。
「山火事なんかは神からの天罰だって言うっすよね。」
「笑えるな、神は冷たいのに火事で山をあったかホカホカバーニングにするのか。」
「面白いと思うすか…そんなギャグ…」
「自分でも面白くないことを言う奴は居ない。」
最も神なんて存在、誰が造ったのだ?
そんな物言ったもん勝ちじゃないか。
よほどの頭グーチョキパーの単細胞が言い出したに違いない。
化学もこんなに進歩したのに未だに神は信じ続けられている。
全知全能の神が居るとしたならば、彼(または彼女?)は自分の事をどう認知するのだろう。
ちなみに神がほとんど人の姿をしているのは人間の悪い所が出たのだと思う。
「やはり神と言うのは…ちっぽけな私達が考えてはダメな物だ。」
「そうすか…」
…
次の日の真昼、私が分離装置を作っている時にロボットがやって来た。
なにか書類の束をもっている。
「お前から来るなんて珍しいな、どうかしたか?」
「博士!私、実は小説を書いてみたんです!」
このパターンは…自信満々で見せておいて後で恥ずかしくなるパターンだ。
誰にでもあるのだな、そういう時期が…ロボットにも?
「先にあらすじを伝えろ。変な物だったら困る。」
「これはですね…平凡な少年の親が実は魔法使いで魔法学校に…」
「完全なるパクリだな…やめておこう。」
作業を再開しようとする私の手をロボットはまたも止めた。
「そう言うと思って幾つか書いて来たんですよ。」
「お前はなぁ…もういいよ…とことん付き合ってやる。」
こうなれば静かになるまで構ってやるか…
適当に流せば満足するだろう。
「次の作品はSFで、光る剣を片手に悪の帝国に挑む感じです。」
「それは随分前に権利が映った奴じゃないか…駄目だ。」
「そうですか…次のは冒険もので鞭を使って古代遺跡を…」
「同じ監督作品のパクリだ、わざとやってるのか?」
こいつさては映画を見て書いたな?
この先もこんな感じなのか…
「指輪に関する話なんてのは?」
「駄目に決まってんだろ。」
「恋愛系で王女と新聞記者の話もありますよ。」
「チョイスが渋いよ…」
ヤバイ…このロボット、完全なる模倣品製造機と化している…!
これ以上はヤバイ!いろんな意味でヤバイ!
「待て!もういい!何も言うな。」
「どうしてそんな事言うのですか?」
「全部パクリだからっすよ。」
「何処から沸いたんだお前は…」
いつの間にか助手が沸いた…
こいつはトカゲになってから隠密度が上がっている様な気がする…
早く分離装置を完成させなくては、私の命が危ない。
「どういう物が良いのでしょう…」
「やっぱり主人公は強くなきゃ流行らないっす。それに女を侍らせるとか。」
「そんな変な物、流行るわけないだろ。」
「でも面白そうですね。」
駄目だ…こいつらのセンスにはついていけん…
それにそんな物が流行ったとして何処で見れると言うのだ?
「こんなのはどうっすか?仲間外れにされてから実は最強で見返すってのは。」
「良いですね!陰湿な人に受けそうです!」
「主人公はドロドロの奴にするっす!それから大きな盾を持ってて…」
「お前ら怒られるぞ…色んな奴から怒られるぞ…」
このままではまずいような気がする。
最悪、私ごと消されるような気がする…(誰にとは言わないが)
「お前ら!」
私がそう叫ぶと、助手とロボットは驚きながら、こちらを向いた。
少し可哀想だが致し方ない。
消えてもらおう。
「買い物に行け。」
「き、急にどうしたっすか…」
「いいからノギスを買って来い。」
「今からですか?」
「そうだ、二人共行け。」
…
「よし…行ったよな?」
無駄なカットを挟んだことで危機的状況はなんとか回避できたようだ。
カットは便利だ、無駄な描写をしないで済む。
とっとと分離装置を完成させてしまおう…作れるかどうかは別として。
「それにしても研究や発明って最高だな…」
一人で何かをするのは非常に好きだ。
自分のペースで好きなことが出来るからな。
だがこれは普通の事なのかもしれない。
普段は周りが騒がしいからな。
「あ…しまった…」
材料が圧倒的に足りない。
最近色んなものを作りすぎたな。
だが後悔はしていない、どれも素晴らしい物だ。
動物対話翻訳機なんてのは最高傑作だ、ハエに罵倒されて壊したけど…
イルカ男が付けている物だって私が直した…酷い出来だが。
…とりあえず材料だ、材料を調達しよう。
庭の方に良い感じのガラクタが置いてあるじゃないか。
「勝手に壊すわけにはいかないよな…」
宇宙人どもに許可を取るか。
ついでに異星人のテクノロジーを見てみたい。
…
「お前らが乗って来た機械、解体するぞ。」
「別にいいけど。」
「どうぞどうぞ。」
思っていた反応と違うな…嫌がると思ったのだが。
愛着は無いのか?
「アッサリしてるな…お前らも手伝え。」
「えー」
「自爆ボタンとか間違えて押しても文句言うなよ?」
「それはまずいな…威力が凄いんだよアレ。」
「あるのか…」
何故、威力を知っているかは置いといて、私と宇宙人で庭へ向かった。
「それにしても小さめだな、これに何年も乗って来たのか?」
「そんなわけないよ。コレは緊急脱出ポッドだよ。」
「本体は宇宙ステーションの残骸の近くに置いて来たね。」
「宇宙ステーション?何だそれは?」
初めて聞く単語だな…そんなものあったか?
「何を言ってるの?宇宙にあるでしょでっかい奴。」
「デカい奴?…もしかして古代遺跡の事か?」
「古代遺跡…?あれは宇宙ステーションでしょ、人が住むところだよ、中には誰も居なかったけど。」
なんかとんでもない秘密が暴かれようとされていないか?
あれは人が住むところなのか?
「もしかして…宇宙ステーション、知らないの…?」
「わからんな…意味不明だ。」
「アイ、やっぱりおかしいよ、この星。大きさだって異常にデカいし。」
「博士…大陸群を囲っている輪っかってわかる?」
「霧の壁のことか?」
それならわかる、誰だって知っている。
「霧の壁?何それ…」
「半径約1万キロメートルの霧の輪っかだ、霧の中に入ると元の場所に戻される。」
「何でそんな物があるの…」
「私に聞くな、誰だってわからないんだ。」
人類が自我を持つ前からあるらしい。
謎に満ちているが、誰もが気味悪がって研究しなくなる。
霧の壁の事を知ろうとする者は皆、不審な死を遂げている。
「お前ら宇宙から来たのだろう?どうなっていた?外は。」
「普通だよ、色んな島がある。」
「嘘だろ…じゃあ文明もあるのか…?」
なんか気持ち悪いな…だが好奇心もある。
壁の外の人間はどんな奴らなのだろうか?
「博士…やっぱりおかしいよ…宇宙ステーションは有るのに、この星の文明ははるかに遅れてるよ…」
「それに宇宙ステーションには人が居た形跡はあるけど出て行った後は無いしね。」
「お前ら…もうやめないかこの話題。誰かに見られている様な気がする…」
人類最大の謎が解明されそうだがこの話題はもうやめよう。
誰かに殺されるかもしれない。
気のせいかもしれないが…
私達は庭を後にして、屋敷に戻ると何事も無かった様に部屋に籠った。
きっと大丈夫だ、何も起きない…多分。
誰か来たら殺せばいいさ。
つづく…