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義確認飛行化学生命体  作者: 鮭之氷頭
4/10

変な奴らとおかしな奴ら

ある日の朝、いつもの日課では無いが新聞を読んでいると、気になる記事を見つけた。


「企業戦士?」


どうやら最近、企業戦士を名乗る武装した変質者が頻繁に目撃されている様だ。

最近の奴は暇だなぁ…こういう変態が居るから世間は安定しない。

テロリストは平和がある限り、必ず存在するのだ。


「私には関係ない話だ。」


気楽に考えているとロボットが一通の手紙を持ってきた。


「企業戦士と書かれていますね。」

「早速かい。」


どうせこうなると分かっていた。

私が何かの話題に触れるたび、必ず向こうからやって来る。


「えーっと、どれどれ…」


オレ達はイカした企業戦士だ!

お前の首をもらってやる!

行くのはめんどいから書かれた住所に直接来い!

絶対来てね?

PS、手ぶらで結構コケコッコー 

住所 オフィス街、クール・グラウンド・スリーパー通り、ビル「ヤマコブラ」37階


「何だこれは…」

「紙は環境に優しい再生紙ですね。」


日にちが書いて無いな…


「無視したら来そうだ、こっちから行ってやるか。」

「それはそれは…いつ行くのですか?」

「思い立ったが吉日、今日だ!」


こちらの住所を知っている奴らを生かすわけにはいかない。

それに私達の事を知っている様だ…

この際、ぶっ潰してやるか!


「おい!助手!」


廊下に叫ぶと、奥から助手が走ってやって来た。


「なんすか?」

「宣戦布告を受け取った、ドンパチしに行くぞ。」

「久しぶりっすねー、サムライマフィア以来っすか。」

「あと、ロボットお前もだ。」


多分、こいつが一番強いと思う。


「オート全面反射バリアに、携帯殺戮ロイド…ダイナマイトも持って行こう。」

「精神破壊光線銃はどうっすかね?眼球溶解ライトも捨てがたいっす。」


喧嘩を売られたからにはマジでヤりに行く…それこそが正しい対応だ。

私は例え赤子に喧嘩を売られても核弾頭を使うだろう。


「よし、2人ともバリアを装備しろ、重火器は持たなくていい。攻撃は勝手に反射する。」

「文明の利器は偉大っすね!」

「化学を制する者が世界を制するのですね。」


企業戦士…奴らには壊滅してもらおう。


オフィス街 ビルの前


「ここか…立派なビルだな。」


ヤマコブラと言うビルは40階建ての立派なビルだ。

警備も厳しいな。


「ロボット、お前はビルの周りにダイナマイトを仕掛けろ、終わったら上まで来い。」

「了解しました。」

「助手は私と来い。」

「ドンパチデートすね!」


何だそれは…

手始めに警備員を一人やるか。


「なんだ、お前?怪しい奴だな。」


こちらが呼ぶ前に警備員がやって来た。

それにしても失礼な奴だ、白衣に弾帯でガスマスクの二人組の何処が怪しいのだ?

こいつは速攻、処分だ。


「助手、やれ。」

「何だそのおもちゃはああああああ!」


私が合図すると助手は精神破壊光線銃を放った。

コレを喰らった者は当然、タダでは済まない。


「あああー!ウンチ出た!取って!ママー!」


この警備員は一生このままだな。

哀れな奴め、有休を取っていればこんな事にはならなかったはずだ。

群衆がやって来てドン引きしている間に私達はビルへ入った。


「わ!何だお前らは?外で何が起きている?」


中へ入るともう一人の警備員に声を掛けられてしまった。

また騒ぎを起こすと面倒なので適当にかわすか。


「変な奴が外で暴れているんだ何とかしてくれ。」

「またかよ!」


もう一人の警備員は外へ慌てて走って行った。

私って俳優に向いてるな。

助手とエレベーターに乗ると37階のボタンを押す。

流石に時間が掛かるし3階で止まってしまった。


「く、苦しい!このエレベーターだけ酸素が無いぞ!」

「もう…駄目っす…」

「え…(何だコイツら…)」


「がー!ああああ!ぎぎぎぎ!」

「ぶぶぶぶぶぶ!だー!」

「わぁ!原住民だ!」


途中で乗られない様に演技したり叫んで威嚇した。

当たり前だが皆、ビビッて乗ってこなかった。

そして、37階…!


「ここか!企業戦士の部屋は!」

「ふっふっふ…待っていたよ君の事を!」


広い部屋の奥に、一人のスーツ男が座っている…


「一人とはかなりの自信があるみたいっすね。」

「そうだな…油断するなよ。」

「ははは!今、部下は全員、お昼休憩だ!流石に留守と言うわけにはいかないだろ。」


そうか…今、お昼か。

どうりで道に人が多かったはずだ。


「茶を出そう、そこに座らんかい。」

「床にかよ…」


言わるがままに二人で床に座ると、茶と動物型のカラフルな砂糖が塗られたビスケットを出された。

素朴な味わいだ…悪くないな。


「えーっと、首なんだけど…貰えるか?」

「誰がやるか!」

「そうか!その前に名刺か!」


話を聞く気が無いな、こいつ。


「こういう者です。」


企業戦士代表 ×××


「コレはご丁寧に…ってそういう問題じゃねぇよ!」

「面白い奴だな、お前。」


こいつは私の首を狙っている!

言わば殺し屋なのだ!

懐から携帯殺戮ロイドを取り出し、床に投げた。


「コレは起動すれば、殺戮を繰り返す凶暴なマシンだ!」

「なにぃ!」


床に投げつけられた殺戮ロイドは起動する。


「起動シマシタ…殺戮!殺戮!」


起動した殺戮ロイドは銃口をスーツ男に突き付けたが…

発砲する気配が無い。


「究極ノ殺戮トハ…己モ死ヌコトニアリ!ヤー!」

「おい!何処へ行く!」


殺戮ロイドは近くの窓から身を投げた、自ら…

こんな事になるなら高度な計算機能を付けるべきでは無かった。


「………茶のおかわりはどうだ?」

「気を使わないでくれ…」


助手、相手、私が静かな部屋に取り残され、気まずい空気になってしまった…

だがその時!エレベーターがやって来た!

ロボットが来たか。


「馬鹿め!こっちにはもう一人ロボットが居るのだ!」

「まだ仲間が居たのか!」


そして、エレベーターはこの階で止まり…


「代表、昼食から…戻りました…お弁当を…」


エレベーターから出て来たのはスーツを着た大量の奴ら。

ロボットではなかった。

私達を見て、少し動揺している様だな。


「すみません。お客様がお見えになってるとは知らずに…」

「こいつらは例の科学者だ。客ではないぞ。」


それを聞いたスーツの者たちは懐から銃や刃物取り出した。


「そうとなれば話は早い!死ね!」


奴らは一斉に発砲してきた。

だが、バリアで跳ね返され、四方八方へ飛び散る。


「お前ら止め!発砲止め!」

「コレ撃ってからじゃダメですか?」

「バズーカなんて撃ったら、お前らも粉々だぞ?」


そして発砲を止めた者たちは刃物をこちらに向けてくる。

残念なことにバリアは刃物には対応していない、刺されたらあの世行きだ。


「待て!お前ら!この名刺が見えないか!」

「そ、それは!代表の名刺…!欲しい!」


先ほど貰った名刺を取り出した。

やはり企業と名が付いているだけあって名刺には敏感な様だな。

つまりこうすれば…


「こうしたらどうする?」


持った名刺を少し折り曲げる。


「ああ!名刺を折るなんて!惨い!」

「降伏しないとこれでケツ拭くぞ!…助手が。」

「痔なっちゃうっす…」


そう言うと奴らは一層、慌てる。

中には涙さえ流す者も居た…


「分かった!降伏する!もうしないでくれ…」

「バータレ!勝手に降伏すんじゃねぇ!面目丸潰れだよ!」

「そう言う事だ、じゃーな。」

「お前も勝手に立ち去るな!おい待て!本当にいかないで!」


私達はめんどくさくなって立ち去った。


「博士!設置終わりました!でも一つ問題が…」

「何だ…?」


1階に降りると早々、ロボットと出会った。

ダイナマイトを仕掛けていた事をすっかり忘れていたな。


「数が圧倒的に足りませんでした…」

「とりあえず、爆破だけでもするぞ。」


まぁ、被害は出るだろうという事でかなり離れた場所から起爆することに。


「ここまで来ればいいだろう、点火!」

「はい!」


ロボットがスイッチを押すと…何も起きないな…

双眼鏡で見てみるか…


「どうっすか?」

「何かパチパチしてる…」

「パチパチ?」


ビルの周辺を何かがパチパチ弾けており、被害と言えば通行人ビビるだけだ。


「すいません…あれ爆竹でした…」

「何でもっと早く言わなかったんだ…」

「はしゃいでいたので、つい。」


けどまぁ騒ぎにはなっただろう…帰るか。

腹減ったし。

後日、言うまでもないが奴らからまた手紙が来た。


「ちくしょう、またかよ…当たり前か…」

「なんて書かれてますか?」


ふざけんなこの野郎!

お前のせいで窓ガラスの賠償をさせられたぞ!

金返せ!悪魔!

今度、お前の家に行って窓ガラス全部割ってやる!

ついでに2000ドルももらう!

覚悟しておけ!

PS カステラとロールケーキどっちが好きだ?


「だそうだ。」

「目的が変わってますね。」


今度って言ってるし直ぐには来ないだろう。

研究でも続けるか。

たまには珍しく科学者っぽい事をしてみたい。

そう意気込んでいると助手がやって来た。

嫌な予感が…


「面白い噂を聞いたっす。」

「噂?何だ?」

「サメっす。」

「サメ?」


サメって…フカヒレのだよな。


「それがどうかしたのか?」

「凄く凶暴な個体が見つかったらしいっす。」

「当たり前だろ?サメは肉食だ。」

「そうじゃなくて、何でも船を真っ二つに噛み千切るぐらいだとか…」


サメってそんなに大きかったか?

残念ながら私は魚に詳しくない…

フグとマンボウの違いも分からないのだ。

泳いでるかどっちも同じだろ?


「気になりますよね?」

「ならないよ(やっべぇ…人を襲うところとか見てぇ!)」

「行きましょうよ!」

「……そんなに言うなら…しょうがないな!」


助手がうるさいから行くのだ。

決して血が見たいとかではない。


「いやー!空がキレイっすね!」

「臭いしカモメも多いな。」


来てしまった…


「セーラー服を着るなんて久しぶりっす。」

「着なくて良いだろ…それより船はどうする?」


道具は一式持ってきたが、船は流石に用意できなかった。

置く場所無いし、運ぶ方法も無い。


「そこら辺の漁師からって…人っ子一人も居ないっすね…」

「レンタル…ってあるのか?」


街には人が全然おらず、荒廃している…

随分前に猟奇殺人が起こってから人が寄り付かないらしい。

宣伝文句には良いと思うが?


「とりあえず海沿いを歩いてみないっすか?」

「誰かいるかもな。」


海沿いに行くと黄昏た若者を見つけた。

何か怪しいが聞いてみるか。


「そこの君、ちょっと良いか?」

「何だお前?」

「観光みたいなもんだ。」

「マジかよ…こんなところに来るなんて…」


やっぱり此処に来る奴は珍しいのだな。

なんか新鮮だ。


「船を探しているんだ、良い所は無いか?」

「船か…俺持ってるよ、乗せてやろうか?」

「それは助かる、ぜひとも。」


船の確保はできた。

意外と楽勝だな。


「ところで何をするんだ船で?」

「魚の観察みたいな感じっすよ。」

「あー…無理だな俺の船。」

「何か問題でもあるのか?」

「俺の船、戦艦だから…自動迎撃付きの。」


戦艦か…サメに対しては流石に大袈裟だな。

だが何処にも戦艦なんて見えない。


「何処にあるんだ?見えないが?」

「特殊な電波を使ってね。今はカモフラージュ中だよ。」


若者が石ころを掴み、思いっきり遠くへ投げるとカーンと音がして跳ね返った。


「誰だ!やめなさい!」


何処からか声がする。


「俺だよ!カモフラージュを解いてくれ!」


若者が声を返すと、大きな戦艦が姿を現した。

結構、ボロいな。


「ホラな。間違ってぶつからない様にこのままにしとくよ。」

「そうか、悪いな。」

「あと、向こうの方に船のレンタルがあるよ。」

「何から何まですまない。」


若者の言っていた店に行き、無事に船を借りることが出来た。

小さいがよく動きそうだ。

船の準備をしていると、猫の親子が寄って来た。

魚を持っていると勘違いしたのだろう。


「可愛いっすね!」

「こいつらも連れて行くぞ。」

「何でっすか?癒しっすか?」

「餌だ、それにサメは猫を食べるか見てみたい。」

「それは気になるっす!」


ちょうどよかった、本当は人間のガキが手ごろだが見当たらないのなら仕方がない。

猫は小さいからな…少し不安だ。


「ところで…免許は?」

「持ってるわけないだろ、店主に見せたのは偽物だ。」

「操縦…大丈夫っすか?」

「安心しろ、さっきの店で良い感じの物を。」


バッグから先ほど購入した雑誌を取り出す。

月刊誌「良い親子」の今月号には…


「クソバカ低能でも分かる!船の操縦、これで君も船長だ!……完璧だな。」

「小さく、※真に受けないで下さいって書いてあるっすよ。」

「気にするな、嘘だから小さく書いてあるだけだ。」

「そうっすか…」


えーっと…まずは緊張をほぐすと書いてある。


「緊張をほぐす…奇数でも数えるか…2、4、6…あれ?」

「その手順はすっ飛ばしましょう、次はエンジンじゃないっすか?」


次にエンジンの換気や云々書いてあるな…分からん…

結局、意味が分からず10分ほど弄っていると、エンジンを動かすことに成功した。


「次に、レバーを前に…おお!動いた!」

「前に進んでる…すか?」


ちょっと前に進んだだけで動かなくなってしまった。


「最大スピードにしてみるか。」


レバーを目いっぱい前に押し倒すと後ろの方でバキィ!と弾けるような音がして猛スピードで進み始めた。


「そういえば縄を外すのを忘れてたっす…」

「灯台下暗しと言うわけか、まぁ良しとしよう。」


だが沖へ進む途中、重大な事を思い出した。

サメが何処にいるか分からない…


「ちょっと待て、サメは何処に居るんだ?」

「あー…この辺りっす、多分。」

「お前なぁ…」

「大丈夫っすよ、サメなんて数が少ないっすから。」


関係あるかどうかは別として、餌を撒いてみるか。

船に乗せた子供の方の猫を取り上げると、親の方が威嚇してきたが助手が親を持ち上げ船の床に叩きつけるとぐったりして動かなくなってしまった。

子猫の方はそのままは可哀想なので置いてあった工具で頭を叩いた。

間抜けな鳴き声を上げて気絶した子猫を少しナイフで切り、血を出させると釣り竿に巻いて海に投げ込んだ。


「一番丈夫そうなカジキ用の釣り竿をだからな…折れないだろうか?」

「これ以上、頑丈となると自分で作るしかないっすよ。」


船を停め、しばらく糸を垂らしていたが、一向に来る気配が無い…

釣りは待つのが良いと言う奴は居るが、釣りは釣れるから楽しいのである。

実際、釣れまくる所以外では人をあまり見ない。

それに釣り堀なる存在もある。

だから、待つより釣れる方が楽しいと私は絶対に思う…何を考えているんだ私は…


「サメは血の匂いに敏感と聞いたが…来ないな。」

「おかしいっすね…普通のサメすら来ないなんて…」


明らかにおかしい…普通の魚影ですら見ない。

なんだか薄気味悪くなってきたな…

空はこんなにも明るく、青いのにひどく不気味に感じる…


「おい!よくわからんがヤバイ気がする、陸に戻るぞ。」

「うっす、アタイが操縦するっす。」


慌てて釣り糸を上げると…


「これは!」


子猫の死骸の口に、何か小さいロケットみたいな物が刺さっている…

恐る恐る引っこ抜くと、カプセルの様に真ん中が開き、メモが出て来た。

メモには「下から見てるぞ」と書かれている。

下に何か居るのか…?


「早く船を動かせ!」

「それが…進まなくて…!」


船のエンジンはフルで動いているが固定されている様に進まないのだ。

どうしようかと思っていたその時、急に船が激しく揺れ、大きな水しぶきを上げて何かが顔を出す。


「な、何すか…こいつ…サメ?」


顔を出したのはかなりの大きさのサメ。

だがそれはどう見ても生体では無く機械だ、機械鮫だ。

安い映画に出てくるような物だ。


「ハハハ!ざまぁ見やがれ!この密猟者どもめ!」

「サメが喋った…」

「違う!アタシはサメじゃない!いや、サメと言った方が都合が良いな…サメだ!」


喋るという事は中に誰か乗ってるな…

密猟者と勘違いしている様だな、話をしてみよう。

それにしても頭が悪そうだ。


「ちょっと待ってくれ!私達は密猟者ではない!」

「釣り竿を持っている奴が言う言葉か!問答無用、海に散れ!」


機械鮫は口を大きく開けると、シュレッダーの様なローラーを近づけて来る。

その間にも船は一向に進まない…


「待て!本当に待て!私達はお前に会いに来たんだ!」

「え?マジ?」


相手のローラーが止まる。


「マジ!本当に会いに来たんだ!」

「そうっすよ、釣り竿だってアンタを釣るために使ったすよ。」

「…話は聞いてやる、嘘だったら即、合い挽きハンバーグだ。」


機械鮫は口を閉じ、背中?のハッチらしき部分が開いて中からダイバーが出て来た。

ダイバーはこちらの船に乗り移る。


「アタシに会いに来た?何故?」

「凶暴なサメが出るって噂を聞いたからっす。」

「怖いもの見たさで来たんだが…ロボットだとは。」

「…密猟者じゃないのね?」


ダイバーはマスクを脱ぐ。

顔は…普通だ、ただの女性だ。


「アタシはキー…いや名乗るほどでもないか、ただの偽善者よ。」

「密猟者と言ったな、多いのか?」

「ここら辺は人が居ないからね、誰かが見守ってないと。」


確かにここら辺は人が居ない、密猟者にはうってつけだな。

魚の姿が見えないのもそれが原因か。


「あそこの漁村の人っすか?」

「いや、あそこは旦那の故郷。あの人機械音痴だから私が代わりに見守ってるの。」

「旦那?それっぽい人は見てないが。」

「え?居なかった?ボーっとしてる人。」


ボーっと…黄昏ていた若者が居たな。

結婚してたのか…


「居たっす。黄昏てましたね。」

「そう見えちゃう?あの人、虫歯の治療中なのよ。」


確かにあまり、元気が無いように見えたが…虫歯かい。


「じゃあ、アタシは巡回に戻るよ。拘束を解くから少し待っててね。」


女性は再びサメに乗り込み、再び潜るとガコっと音がした。

助手が船のレバーを操作すると船は何事も無かった様に動き出した。

ちなみに猫の死体は全部、海に捨てた、栄養になるかな?

船は店主にそこら辺に放置すれば良いと言われ、停泊所に着くと縛って放置した。

帰り道、サメはロボットだったが何だか見れて良かったような気がした。

世の中には見返りを求めずに善行を積む者も居たのだな。

虫歯治療中の若者も、その妻も、店の店主や戦艦に居たよくわからない人も頑張って欲しい。

と、ちょっとだけ思った。

それより、カジキ用の釣り竿の用途が無くなってしまったな…

適当に買ったのだが随分値が張る物だ。


「その釣り竿どうするっすか?」

「もういらん、欲しけりゃやるよ。」

「それを使えば釣れますかね、マンボウとか?」

「きっと釣れるさ、その為の釣り竿だ。」


私は助手に釣り竿を譲った。


「これでマンボウを釣ったら刺身でも作りましょうか?」

「お前、生魚は嫌いじゃなかったのか?」

「そういえばそうっす…ではフライに。」


そんなバカ話しながら私達は家へ戻った。


「よし、よし!完成だ!」


とある日、私はロボットと研究室で世紀(多分)の発明品を作った。

名前はまだ無いが、このポッドに入れた物は完璧に融合される。

計算上は…


「遂に完成しましたね!早速、テストしてみましょう!」

「そうだな…このリンゴと…ペンじゃマズイか…空のペットボトルで実験だ。」


ポッドの扉を開けると人間が一人ぐらいなら入れるスペースだ。

真ん中の縦線から右に置いた物が左に置いた物の性質を持つようにされている。

原理としては二つの物を電磁波に変換して、右の物をベースに再構築されるという感じだ…多分。

右にペットボトル、左にリンゴを置いてポットの扉を閉めた。

そして、一つしかないボタンを押せば、赤いランプが点灯してポッドが揺れ始める。


「すごいガタゴトしてますけど…大丈夫ですか?」

「洗濯機だってそうだろ、ガタゴト鳴るし、色映りするし。」


30秒ぐらいすると機械は鳴り止んだ。

それから数秒、蒸らして?緑のランプが点いたら完成だ。

恐る恐る、扉を開けると…


「これは…リンゴだなペットボトル型の。」


ポッドの真ん中にはペットボトルの形をしたリンゴ?が鎮座している。

丸くないリンゴってリンゴなのか?

それともこれは新種のリンゴ?

だが実験に使ったのは既存の種のリンゴだ。

つまりこれは…意味が分からないな。


「成功…ですか?」

「多分な、微妙なラインだが。」


物が悪かっただけだ、ほかの物で試してみよう。


「このクッキーとコルクでコルクッキーなんて出来ませんかね?」

「バカか…それならネズミとミトンのネズミトンの方が便利だ。探す手間が省けるからな。」


もうちょっと有用な物をだな…有用と言えば助手だ。

助手と何かを混ぜてみよう。


「ロボット、適当に虫を捕まえてこい。」

「何と混ぜるかは知りませんが取り合えず、了解しました。」


ロボットは何処かへ行ったな…次は助手だ。


「助手、ちょっと来てくれないか。」

「はい。」

「何だお前!?いつから後ろに居た…」

「呼ばれた時から。」


聞かれて無いなら良いか…


「ちょっとそこのポッドの中を見てくれないか。作ったは良いが不調なんだ。」

「なるほど…わかったっす。」

「特にこちら側から見て右側の方をな。絶対に線から超えるなよ。」

「…何ですか?」

「ホラ、あるだろ…床のタイルの線を踏まない様に歩くとか、そんな感じだ。」


とにかく誤魔化して、まんまと助手をポッド内部の右側へ誘導できた…

あとはロボットが来るのを待つだけだ。


「博士、イイ感じの獲物を取ってきました。何とミックスしますか?」

「特に不調は無いっすね…」

「絶対右側に居ろよ!絶対だからな!まだ2回しか言ってないから前フリじゃないぞ!」


ロボットは何かを察すると手に捕まえた何かを放り込んだ。

そして扉を閉じる。


「な、何すか?」

「テストで起動するだけだ。害は無いから安心しろ。」


無慈悲にも私は起動ボタンを押した。


「何かうご………」


ポッドが作業を始めると助手の声は急に途切れて、静かになった…

そして、1分経って10秒程蒸らしてポッドを開けた。


「何か凄かったっす。」

「嘘だろ…お前なんともないのかよ…」


中に居たのはただの助手だ。

なんとも変わらず、面白みも無い。


「いやーすまん…なんともないなら実験は成功だ、もう行って良いぞ。」

「そうすか、では。」


助手が部屋を出たのを確認すると、ポッドを見たが何も異常は見られない。

失敗か?

それより…


「ところでロボット、お前何を入れた?」

「トカゲです。でもポッドの中には居ませんね…逃げちゃったのかも。」

「逃げた…なら失敗するはずだ、1つだけの場合はなんとも変わらないのか。」


まぁ、変わらないならそれで良いか。

今日の実験はもう終わりにしよう、何だか疲れた。

ロボットと共に部屋を出た私だったが…この時見落とした事がある。

トカゲが逃げたなら何処かに居るはずだ、だが研究室には姿が見えなかった…つまり…

その日の夕食を済ませ、食後のコーヒーを嗜んでいると助手が話しかけて来た、ケツを掻きながら。


「博士、何故かお尻の辺りが痒くて…たまらないっす…薬無いっすか?」

「食後にやめろよ…まぁ薬なら自室にある、付いて来い。」


飲みかけのコーヒーを置いて、助手と部屋に行くが…その間もケツを掻く助手。

あんまり掻くと、体に悪いが私には関係ないので黙っておくか。

部屋に着くと棚を物色して、随分前に調合した万能痒み止めを取った。


「コレは量を間違えると大変な事になるぞ。」

「分からないので博士が塗ってください。」

「しょうがねぇ奴だな…」


気色悪いが塗ってやるか、量を間違えて苦しみ悶える姿は流石に見てられない。

自分はその苦しさを知っているから…


「腰の下の辺りっす…ここ。」

「ここか…え?」


助手が指した場所はポッコリと膨らんでいた。

何だこれは…明らかに寄生虫や病気では無い…


「早く塗って…グァ!」

「何だ!どうした!まだ塗ってないぞ!」


塗ろうとした時、助手が急にケツを抑えて苦しみだした。


「い、痛い!何かが…内側から!」

「ち…血が…」


助手が抑えている辺りから血が噴き出してきた…痔では無いな…


「グ…グガァ!ギャギャ…アアアァァ!」

「こ、コレは…なんという…」


突如として助手のケツからは背骨の様な細い骨が血と共に飛び出した。

血に濡れたその姿はまるで悪魔の様だ。


「全身が…痛い!」

「とりあえず誰かを呼んで来る!待ってろ!」


私は急いでロボットを呼びにダイニングへ向かった。


「ロボット!ちょっと来い!」

「何ですか急に、コーヒーでも飲んで落ち着いてください。」

「そうだな…この香りがなんとも…って飲んでる場合じゃねぇよ!」


私は持っているコーヒーを壁に投げつけた。

マグカップはバラバラに砕け、壁にコーヒーのシミが出来る。

コーヒーとマグカップを作った人に少し、申し訳なくなった。

結局、強引にロボットを自室へ連れて行った。


「こ…コレは掃除が大変そうですね…」

「特にこのカーペットに付着した血が…ち…違う!助手が!」


助手から飛び出した骨には徐々に筋肉が付いて行く。

そして口からは多量の血と共に歯が抜けている。


「まさかポッドに関係が?」

「多分そうだ…一体どうすれば…」

「見てください!皮膚が!」


助手の皮膚には鱗の様な模様が入る。

髪の毛もかなり抜けているな…


「爪も伸びていますね…ちょっと顔を…」

「い…一体…何が起きてる…すか?」

「歯が抜けた場所から牙が生えています!どんどん怪物に…」


遂に顔の骨格ですら変形し始めた。

まるでワニだ…ワニ人間だ。

私はとんでもない化け物を生み出してしまった。

元は助手だが。


「見ろ!体が紺色に染まって行くぞ!」

「鱗も固くなってます…」


そして尻尾も立派な鱗に囲まれた…


「ハァ…なんか急に気分が良くなったっす。」

「助手、何か痛い所は無いか?お前凄い事になってるぞ。」

「どうなってるっすか?」

「これで…見てください。」


ロボットは助手に手鏡を渡した。

そして鏡に写った自分をマジマジと見た助手は…


「カッコイイ!」

「は?…お前…それでいいのか?」

「トカゲ人間なんて気持ちが悪いだけですよ?」

「何言ってるすか、結構カッコイイじゃないすか。」


どうやら助手は自分の姿を気に入ったそうだ。

バカだな…私が言えた事では無いが。

それから私は助手にポッドの事を全て話した。


「そんな面白い物作ったならすぐ言ってくださいすよ。」

「それはそうとして本当に良いのか?そんな姿で。」

「実は前々から人間から変わりたいと思ってたっす。」

「そうとしても、トカゲ人間だぜ?」

「トカゲ人間は別に居ないわけじゃ無いすよ?」


確かにこの国にもそういう部族は居るが…珍しい事に変わりはない。

とにかく本人が気に入ってくれて良かった。

元に戻せなんて言われたらどうしようかと…


「ちなみに元には戻れるっすか?」

「え?無理。」

「さらっと言いましたね…」


無理な物は無理…では無いな。

分離装置も作れないわけでもない。

面倒くさいだけだ。


「しばらくはそのままで良いだろ?分離装置は後で作るよ。」

「特に不便さは無いっすね。」

「体の形は人のままですね…尻尾は取れるのでしょうか?」

「流石にそれはやめてくださいっす…」


何はともあれ助手も元気そうだ。

慣れるのに時間は掛かるが何とかなるだろ。

それより問題なのは床にびっしりついた血溜まりだ。

コレはかなり骨が折れるぞ。

その後、私達は幽霊に怒られながら掃除した。

ついでにポッドの使用も禁止された…


つづく

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