表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

第一話

日下部(くさかべ) 賢人(けんと) : 主人公

花坂(はなさか) 美奈(みな) : 恋人

遠藤(えんどう) 彦太郎(ひこたろう) : 親友


「なあ、遠藤(えんどう)。ここが本当に……?」


「……噂によると、だな。嫌なら帰ろうぜ?美奈(みな)さんが病院で待ってるぞ?」


「……いや、いくよ。案内ご苦労。助かるよ」


ここは、ひらさか駅の地下。

関係者以外立ち入り禁止の区域。

目の前には、鉄筋コンクリート製の壁。

とてもとても、動かせるとは思えない。


……これが、《千引きの岩》か……。動かせそうにないな……。


岩というか、壁だ。動くものでもなさそう。

……というか、《向こう側》へ行くためには、この壁を動かす必要はないという。


ならば、どうするか?


それは、ただ、乞い願う。それだけだという。


それだけで、黄泉平坂(よもつひらさか)を下る人の魂を連れ戻す権利が得られるという。


……ただし、一度だけ。さらに、リスクもあれば、決まりごともある。


しかし、そんなの関係ない。

……いや、決まりごとを守らなければ美奈を連れ帰ることができないなら、きちんと守りますよ。


理不尽な事件に見舞われた恋人の魂を連れ戻し、病院で眠り続ける美奈が目を覚ますなら。


喜んで、そのリスク、受け入れよう。




※※※



俺、日下部(くさかべ) 賢人(けんと)と、花坂(はなさか) 美奈(みな)は、なんとも深い縁で結ばれていた。


家は隣同士で、

双方の親同士が幼馴染みの親友で、

産まれた日も同じで、

部屋の窓を開ければお互いの顔が見えて、

同じ幼稚園に通って、

同じ小学校に通って、

同じように周りから夫婦とからかわれて、

同じように将来結婚すると宣言して、

同じ中学校に通って、

同じ日に、お互いを意識して。


二人は、赤い糸で結ばれていると、お互い本気で思っていた。




……だと、いうのに。




暴漢がナイフを振り回し暴れた事件に巻き込まれ、俺を庇って美奈が刺されてから、一週間。


刺された美奈は、今も生死の境を彷徨(さまよ)っている。


そんなとき、ある噂を思い出した。



『ひらさか駅には、あの世と繋がる場所がある』



ひらさか駅とは、俺たちの住むところからだと、最寄りの駅だ。俺はあまり使わないが。


そこで働く親友の遠藤から、噂を聞いたのを思い出したのだった。


そこで、無理をいって頼み込んで、その噂の場所まで案内してもらい、今に至る。



「……なあ、遠藤。俺が戻れなかったら、後は頼むよ」


「バッカおめぇ、美奈さんが目ぇ覚ました時にお前が居なかったら、俺が寝取っちまうぞ?」


遠藤は冗談めかしておどけて見せるが、俺は、本気だった。


「……その時は、頼む」


そんな、本気の俺の顔をみた親友は、


「……ちっ!」


それはそれは嫌そうに、舌打ちしたのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 黄泉平坂……イザナミとイザナギのようなラストにならない事を祈りつつ、先を楽しく読ませて頂きます♪
2020/08/01 15:26 退会済み
管理
[一言] うわあああ、もう既に泣きそう……! 賢人頑張って……!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ