最終話
「澄江さん答えが出ました。」
希美から連絡が来たのは二日後だった。澄江は明日の午後事務所に来る事を希美に言った。
「エミリにも希美の答えを聞いてもらおうと思って。いい?希美」
希美は頷くと話し出した。
「私はずっと美冴さんに愛して欲しかった。どんなに人気者になろうが、美冴さんが振り向いてくれなきゃ意味がなかった。でも本当は心のどこかでわかっていたんです。美冴さんは私を娘だとも思っていないと。」
希美は悲しそうに澄江の目を見ていた。
「あの子に言ったんです。美冴さんは私の母親であることを嫌がってたから、謝れないと。でも本当は、謝まったら自分が本当にいらない子だって認めてしまう気がして。どうしても謝れなかった。」
希美の目には涙が溜まっている。
「美冴さんは私の唯一無二でした。美冴さんに愛してもらう、認めてもらう事が自分の存在理由だと思っていました。でも、もうやめます。これからは自分の人生を歩むことにします。」
そこに壊れそな脆さを持った少女はいなかった。
それから星空希は二ノ宮希美と名前を変えもう一度芸能界に戻ってきた。
芸能界復帰の話は瞬く間に広がり多くの人が喜びの声をあげた。
二ノ宮希美は晩年女優として数多の作品に出演し、数多くの賞を受賞した。だが彼女のプライベートは全く明かされる事はなかった。
彼女の訃報を報じた多くの記事や番組では
美しくも凛々しい女優、二ノ宮希美
と報道された。
壊れそうな脆さを持った女性は美しくも凛々しい女性まで成長を遂げた。