奇妙な重なり
「おい。頼むから引き摺るのはやめてくれ!」
彩花は俺の頼みを無視して、学園内に入ってもそのまま俺を引き摺り続け、学園長室で捨てられた。
「おかえり!楽しそうだね」
「これを楽しいって言うのはやべえよ」
ジオは戻って来て早々、俺の姿にニヤついて眺めていた。
「学園長も宜しければやりますよ。ついでに焼却炉まで行きますので」
彩花は冷え切った目でジオの方を睨んでいた。
「怖いね!だけどやめておこう。僕はこれでも多忙でね。今からお仕事なんだよ。帰ってからにしようかな」
ジオは忙しさが見えなかったが、軽い挨拶だけでどこかへ向かった。
「珍しいな。あのジオが彩花の話に乗らないとは…って、帰って来たらやるのかよ」
「あれでも世界有数の魔法学園の長なので多忙なんですよ」
夜月の話には理解できたが、それ以上にジオの表情が険しくなっていたように見えたのが気がかりだった。
「学園長はこの時期になると、数日間居なくなることがあって事情を聞いても誤魔化されちゃって、答えてくれないんです」
「それっていつも通りのような気がするが…」
ジオの奇妙な言動がいつも可笑しく、何が変なのか分からなかった。
「まあ。いつか帰って来るでしょ。あの人」
「だな」
夜月の顔はどうにも晴れないがあのジオのことを心配することもないと思えた。
「それよりさっきーちゃんに涼さんの話を聞いた方が良いだろ」
「確かに…どうしてあんなにも避けようとしていたのか」
「お前たち、余計な探りはよせよ」
さっきーちゃんの話を廊下で話し始めると、背後から身長と違い、かなり大きな声が聞こえてきた。
「げ…さっきーちゃん、どこから湧いたんだ?」
「何を言っている。ここは私の部屋だ」
さっきーちゃんはため息を吐くと、話を切り出した。
「お前たち」
「麻樹先生、どうして涼さんから離れたのですか?」
夜月は急に出て来たさっきーちゃんに驚くことなく、質問を返した。
「別に話すこともないからな。むしろ、あいつから一生分の話をされて逃げられなくなるわ」
「それが理由?」
夜月はやけに逃げようとしていたさっきーちゃんの姿を見て気になっていたが、大したことない理由に呆気に取られていた。
「私も忙しいんだ。私はあのバカのお守りで、数日間居なくなる。余計なことを増やすなよ」
「どこに行くんだよ」
さっきーちゃんはため息を吐くと魔法で姿を消した。
「あのバカって、ジオのことだよな。何かあんのか?」
「先輩」
ジオの立ち去る姿とさっきーちゃんの口振りが奇妙に思えた。




