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グロマギア  作者: ハナビ
暖かな摩天楼篇
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新しい暮らし

俺と美沙(みさ)が学園長室から出ると、夜月(やつき)彩花あやかが俺たちを待っていた。

「どうしているんだ?」

「え!そ…それは…」

彩花は俺の質問にあたふたした様子で夜月の方を見つめていた。

「先輩たちも行くかと思いまして待っていました」

「あーそっか。実は行くとか言って、どこに行くか分からなかったからな助かるわ」

「私もいるけど」

「美沙が案内してくれるのか?」

「しない」

俺と美沙の会話に夜月は微笑みを見せて歩み出した。

「それで(りん)さんの家ってどこにあるんだ?」

「話によると、香ノ木(こうのき)さんが働いているレストランのすぐそばにあるそうです」

夜月は楽しそうに場所の案内をし続けて目的地に着いた。

家の外装は何も変わっておらず、家がそのままこっちに移動したと言うのが正確な言い方だと感じた。

「凛さんに迷惑にならない程度で今日は抑えてくださいよ」

「凛さんに言ってくれないか」

夜月の控えめな冷静さに俺も落ち着いて答えを返す。

「みんな!待っていたよ!」

「わぁ!」

急に開いた扉から飛び出してきた凛さんは真っ先に夜月に抱きつき、頬を擦っていた。

「凛!変態行為はいい加減抑えろ!」

凛さんの背後から見えてきた見慣れた小柄な女性は一回り大きい凛さんの頭を叩き、注意した。

「さっきーちゃんもいたんだ…」

「おい!誰がさっきーちゃんだ」

久しぶりに感じる幼い担任の眼光に漸く家に帰ってきた実感を持てた気がした。

「全く、こいつはお前と違う意味で、世話が焼けるからな!今のうちに注意しにきたんだ!」

「さっきーちゃんも苦労するな」

俺がさっきーちゃんの頭を撫でると直ぐに振り払いいつものように睨みつけてきた。

「私は用が済んだからな。あとはお前たちに任せた」

「思っていたより早く帰ったな」

さっきーちゃんは言いたいことを言ったようでその場から去った。

「どうかしたのですか?」

「俺、初めてさっきーちゃんの怒られずに済んだから…」

良いことなのに物足りなさが俺を襲い、叱られ欲しさがあった。

「あんたは本当に変態ね」

「お前からは言われたくないわ!」

彩花は通常と変わらず、俺への罵倒を懲りずにしてきた。

「何でよ」

封魔(ふうま)くんと彩花ちゃんも入って」

「あ…はい」

俺と彩花のくだらない言い争いを見ていた凛さんは話に割り込み家へと案内してきた。

「ほら!」

凛さんは俺たちを無理矢理、家へと押し込み紹介してくれた。

「ここが私の家!どう?少し変わっているでしょ!」

「確かに…」

家自体が動いたと言っていたこともあり、何も変わっていないと思っていたが間取りが変わっており、凛さんも誇らしげにしていた。

「おう。鳳翠(ほうすい)じゃねえか」

「久しぶりじゃないけどな」

凛さんのテンションに対して鳳翠は黙々と荷物の整理をしていた。

「今日はみんなで歓迎会もするからね」

「母さん、みんなとは昨日もやったでしょ」

階段の上から降りてくる凰火(おうか)は困り顔で凛さんの方を見ていた。

「だってみんなにも祝ってほしいもの!」

「私たちが祝ってあげるから」

凰火は凛さんのテンションにも負けずに抑えようとしていた。

「凰火がそこまで言うなら…」

「ありがとう」

凰火も帰ってきたばかりで疲れているにも関わらず凛さんのわがままをどうにか叶えようとしていたのが感じられた。

「家族って良いな」

「何よ、急に」

俺が思わず言って言葉に彩花が敏感に反応してきた。

「何って。俺も感傷に浸っていただけだ」

「あんたがそんなことを感じていたなんて意外ね」

彩花は学園に帰ってきてからやたらと俺に対して当たりが強くなってきていると感じる。

「お前な…」

俺が彩花に言い返そうと振り向くと、彩花は両手で顔を隠して体を引いていた。

「何をやっているんだよ」

「え?」

彩花は殴られると思ったのか怯えた素振りを見せていた。

「まあ。家族がいねえのは事実だしな。彩花が言いたくなるよな」

「ち…違う…」

俺が弱気になると彩花も不安そうな顔をしてこちらを見ていた。

「家族…」

凰火と鳳翠の嬉しそうな笑い声を見て麻奈との暮らしを思い出した。

「俺も疲れたし、寮に帰るわ」

「待ちなさいよ」

玄関の扉を掴み開けようとすると彩花の手が俺の服の袖を引っ張っていた。

「ごめんなさい」

「疲れただけだから気にするな」

色々ありすぎて疲れが溜まっていたのもあり、(まぶた)が落ちていく。

「先輩…」

彩花の静止を振り切り、俺は蘆屋(あしや)家を後にした。

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