失った”もの”
「ここは…廊下か?」
「先輩!走ってきているのは!」
「魔王!夜月!無事だったのね!」
俺たちに声をかけてきたのは捕まったとされる彩花と美沙、香ノ木さん。それと鳳翠だった。
「鳳翠!」
「俺はお前たちを…」
「違うの!夜月。鳳翠もそれなりに事情があって」
彩花は何も言っていないうちから俺たちから鳳翠を庇い出した。
「大丈夫だ」
「大丈夫って」
彩花は俺たちが怒りもしないことに驚いて状況が読み込めないでいた。
「それで現在の状況を」
「今は敵の追っ手から逃げている所です。」
俺は心配そうな顔をする鳳翠を見て何を考えているのか分かった。
「敵を倒すぞ。」
「しかし、ここは敵の本拠地。何が来るか分かりません。」
「鳳翠。助けるぞ。もう一人を…」
俺がそう言うと鳳翠は武器を構えて頷いた。
「悪い。俺の勝手に巻き込んで、家族を助けてくれ!」
「当然です。私と先輩はそのために来たのですから!」
夜月も前に立ち攻撃の陣形をとって進む。
「彩花さん。私たちも手伝いますよ」
「分かったわよ。鳳翠の家族がいるのでしょ!」
彩花と香ノ木さんも攻撃に加わり、敵を探す。
「不明な魔力を確認。こちらに来ています!」
「てやぁぁ!」
先制の一撃は彩花だった。
「全く。構えて損したわ。倒せば良いじゃない」
「彩花さん。油断は大敵です。撃ち漏らしが出ています!」
「あなたがやるじゃないですか!」
彩花は香ノ木さんに言うと残っていた敵も倒していく。
「俺たちいらねえな」
「ですね」
「退屈…」
彩花の活躍に俺は眺めるだけだった。
「お…おい。お前たちもう少し…警戒をだな…」
鳳翠は警戒を解くことなく注意深く相手の動きを見ていた。
「悪い。そうだな」
俺は注意に素直に従い攻撃の姿勢を向けた・
「おい!彩花。俺たちが変わる」
「遅いわよ!」
彩花は敵を全て倒しており、先へ進むだけになっていた。
「この先は俺の家族が隔離されている部屋がある。気をつけろおそらくだが、敵も集まっている」
俺は鳳翠の注意を頷くと扉を開けて部屋へと入った。
「よう。こんにちは諸君。それにしてもあなたには失望したよ。全く目の前に家族を見捨てて仲間を助けるのですから。」
「だまれ!」
鳳翠は憤りが隠せない様子で怒りのままに怒鳴り続けた。
「貴様こそ!最初から俺たちを騙しやがっただろうが!それに俺の家族までも!」
「全く。十年前の話をこの年になって。お前たちは私のものなのだよ。これまでもこれからもな!」
男はチャンではなかったものの鳳翠の表情が今まで以上に険しい顔になっていた。
「久しぶりに話すと言うのに俺のことを嫌いになるなんて悲しいなあ。いつから男まさりになったんだい。それとも意図しているのかな?実の弟には優しくするんだよ。凰火…」
「おう…か」
俺は一瞬、誰のことだったのか分からなかった。だが、漸く全ての糸が解けていった。今聞こえている主の正体それは…
「ちゃんと返事してくれないか?お父さんは悲しいぞ」
鳳翠…いや。凰火の父親であることに。そして本物の鳳翠が今は父親に捕まっていることも。
「最近。義姉の調子はどうかな?あれ?どうしたのかな?もしかしてお父さんの声が聞きたいの?じゃあチャンさんに代わってあげようか?」
「ふざけないで!あなたのことをお父さんなんて一度として思ったことないわ!それにそんなお母さんを捨てた男なんて会いたくないわ。そういえばあなたも義母さんを捨てたわね。全くあなたたち、最悪に似合いね。あなたたち人間のクズと家族なんて最低ね」
鳳翠は聞こえてくる声だけの主に真っ向から対抗しており、罵詈雑言を吐き続けた。
「侵害だなぁ。俺はこの世界の王として君臨しているだけに過ぎないのさ。それにあんな屍にもものにも興味がなくてね。」
「おい。鳳翠…」
「良い加減にして下さい!鳳翠さんは私たちにとって大切な人です。そんな人をあなたたちはゴミでも扱うように!」
夜月の堪忍袋の尾が切れてしまったようで関係に横入りして怒鳴った。
「何だい?きみも分かるだろ。そこにいるのは鳳翠ではない。義姉の凰火だ。きみは今まで騙されていたのだよ?騙しはいけないことだよね?」
「あなたたちが言えるタチじゃないわよ!そんな顔も見せずに子をもののように扱う連中に言えた義理じゃないわよ!」
彩花も夜月に連れてプツリと切れて怒り出した。
「仕方ないなあ。あれを出すか」
「楽しみだ…」
そう言う二人は嬉しそうに指示を出した。
部屋の奥の大きなシャッターが開き出し、黒く染まった姿の何かが現れた。
「これこそ。私の傑作。そして私の息子!鳳翠マークツーさ。マークワンは実験の初期でダメになってね…ああ。君たちも見たかい。下の研究室の散らかり。全く散々だったからね処分したよ。全く大変だねえ。人間を止めるのも…」
「貴様ら!!!!!!」
凰火は声が部屋を響かせて震える程に怒り狂った。
「おい!冷静になれ!」
凰火は感情のままに人間の形を保っていない鳳翠の方へと飛び出した。
「さあ。君たちも実験の糧になってもらおう」
鳳翠の体は機械仕掛けになっており、右手にはチャージビームを取り付けられており、今にでも撃って来そうな光が溜めている。
「危ねえ!!!!」




