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012、家族の話

 食事をしながらの話は当り障りのない家族の話になった。


「とまぁ、僕の家族はそんな感じだよ」

「なるほど、可愛らしいお母さんと妹と……あと、お兄さんはオーサカ?の空気に負けないのか呑まれるのかどうなのかしらね、経過観察が気になるところね」

「人の兄を実験動物みたいに表現するのはやめてほしいんだけど」

「……多分、先に実験動物のように紹介したのはあなただと思うわよ」


 それはさておき。


「じゃあ、シャルの家の話も聞かせてくれる?」

「ええ、勿論」


 シャルは冷めてしまったカップの中の珈琲を飲み干すと新しい一杯を注ぎ、四つ目のドーナツに手を伸ばした。


「まぁ、ちょっとした家系な分、『家族』の話と『家系』の話でそれぞれ長くなっちゃうから、家族の話にしましょうか」


 ちょっとした、どころではないと思うのだけれど、それを口にするのも野暮だろう。とりあえずは彼女の言葉に耳を傾ける。


「まず兄弟の話をするなら、兄が一人に妹が一人の三人兄妹の真ん中よ」


 納得できるような納得できないような、微妙な感じ。確かに、末妹基質でもないし、長姉っぽい感じでもない。


「んー、ちょっとした家庭の秘密だけど。アイゼナッハの宝石使いの性質は母系遺伝と考えられていて。うちの母様が今当主なの」

「それは……うん、なんか聞いたことがあるような気がする」


 宝石使いがどう、ではなく、あくまでも組織の長が女性だ、ということをニュースか何かで聞いただけだが。


「うちの三兄妹は勿論全員宝石使いなんだけど、兄様の子は宝石使いになるとは限らないの……だからおそらく」


 何とも面倒な話であるが、こと自体は単純だ。経済的な組織としてのアイゼナッハは兄が継ぎ、宝石使いとしてのアイゼナッハは妹、というかシャルが継ぐ……無論、このままいけば、だが。


「とはいえ、仲は良いのよ……、あ、少なくとも私はそう思っている、のよ」


 その表情、曇りのないのを見ていれば恐らく何の問題もなくそうなのだろうと思わせる。ただ、曇りないものを曇らせるくらいに金の嵩がかかっているのが問題だが。

 切り替えよう、とばかりに手を叩いて声を張るシャル。


「父様と母様はねー。母様はさっきも言った通りのアイゼナッハの長・通称『宝石庭の女帝』らしいわ」


 その通称は一体誰がどういう経緯でつけたものだか知りたいが危険な気もするので欲求だけにとどめておこう。


「父様は……んー、説明しにくいけど、アイゼナッハの組織の中で成果を出して、後は母様と幾つかのイベントを通じて親交を深めたのだ、と聞いているわね。やり手で敏腕で腹黒目でかっこいい、とそんな感じ」


 何となく、言葉を聞けばイメージ的にはニヒルなヒーローだが、言葉と裏腹のシャルの語り口を聞いている限りとても娘に篤い愛情を注いでいる父親の様だ。あと、娘が父親を格好いいと評するのだから、相当なカッコよさに違いない。ただ、シャルの父親であるというならさもありなんという感じもするが。


「あとはおじいさまね。おじいさまは……面白い人、趣味人」


 彼女のいうおじいさんとは、母方の祖父、らしい。聞けば宝石使いとしての才能はあまりなかったが、代わりにものを作るのが好きだったということで、かなり早くに隠居したらしい。


 才能の云々については彼女の曾祖父が、息子であるそのおじいさんを飛び越して孫であるシャルの母に当主の座を送ったというエピソードから何となく察せられる。


 そこを聞くと難儀な人を想像しがちになるが、シャルからすれば、孫に甘い優しいおじいさん、というところに収まるようだ。


「この子はおじいさまから継いだんだからね」


 そういって見せられたのは初めて見た時に髪を縛っていたリボンのチャーム。ついている石はオパールらしい。

 その嬉しそうな表情からこの子はきっと家族のことが好きなのだろうと、納得する。


「よし、それじゃあ、シャルの願いをかなえるためにも……研究を開始しよう」

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