電脳少女?
作者の趣味だ、良いだろう?
僕はゴーオクサーとヴァルシオーネで欲情します。あさみちゃんのインナーでも欲情します。
自分というものがない。
それは、常々自分で感じていた事だ。
……矛盾していると、そう思う人もいるかもしれない。確かに、字面だけで見れば、自分がないのを自分で感じているというのはおかしな話だ。
だが、ここでの自分は違う。ない方の自分は信念とか、思想とか、夢。そこらへんだ。ある方は自我とか思考とかそういうのだ。
そう、そう思っていたのだ。自分の自我で、自分がないと。
でも、いま、【俺】《僕》(あたし)「私はーー」
八神光一。
何の変哲もない、少しコンピュータとサブカルチャー(この場ではいわゆるオタク趣味の事を指す)に、少しばかり造詣が深いだけの、ごく一般的な大学生だ。
高知から東京へ。引っ越してきた彼は中学の時不慮の事故で両親を失い、その時に腹部に大きな怪我をーー今でも、トラウマになるような怪我を負ってしまっている
大学生となり、逃げるように東京へと引っ越して一人暮らしを、今年の2月から始めた彼であったが、安定したアルバイト先も見つかり、ようやく生活が軌道へと乗り始めていた。
そんな彼は今アルバイト先へと向かっている。秋葉原のどこかにあるそのアルバイト先での仕事は簡単だ。色々なデータの収集に協力するだけである。車の通行量の調査から、卵焼きは醤油派の人とソース派の人、どちらが多いかの調査、アニメの作画でキャベツに力を入れる必要があるかどうかについてのネットでのアンケートまで、様々な仕事をさせられているが非合法なものはないし、他にもアルバイトがいるが、彼ら彼女らとの関係も良好だ。
上京してきたばかりの大学生にはうってつけのアルバイト。そう思っていた。
(このまま、ここに就職してしまうのが、俺にはいいのかもな)
そんな事を思っていた光一だったが、大学を卒業しない事には始まらない事だ。学費を貯めるために、今日も彼はアルバイトに勤しむ。
今回はあるオーバーデータの解析のようだ。
オーバーデーターー2035年の現在におけるオーバーテクノロジー。オーバーネットワークと共にオーバーサイバー技術と呼ばれるそれは、2022年に起きた、とある研究所でのデータの暴走事故によって生まれた。まさに奇跡の産物。
その特性はデータを現実世界に実体化ーーいや、2035年の今風にいうなら、実体世界に、オーバーネットワーク内の物ーー電脳世界のものを電脳世界の法則そのままで実体化させる事ができるというものだ。
電脳世界の食料や植物、動物といった『生命』を実体世界に再現することはできない(厳密にいうとそのままの形で実体化させることは可能だが、食料は味がせず、動物は意思を持たない)が、実体世界の『生命』は電脳世界にそのままもっていけることもあり、瞬く間にその利便性は世界中に広まり、いまやオーバーデータは生活の根本にすら関わっている。
大学に入る前に仕入れておいた予備知識を思い出していた光一だったが、オーバーデータが実体化するための要であるデータコアを見つけたため、集中する。
集中しながら作業を続け一時間。ついにデータコアの解析が完了したその瞬間ーー
閃光、轟音、爆音、熱。
爆発事故によって、八神光一の日常は終わりを告げた。
今、調査しているデータに寄れば、あのアルバイト先では非合法な実験ーー電脳世界の生命を実体世界にそのままの状態で実体化させる実験を行っていたようだ。
いくらでも意のままになる兵士を生み出すことすら可能になるかもしれないそれは、しかし人道的な理由などで実験を禁止されていた。知らず知らずのうちにとんでもないことに手を貸していたのだと気付き、落ち込む彼ーーいや、容姿の上では彼女。
淡い紫のストレートの髪に青の瞳、バストとヒップ、引き締まったウエストを強調するような近未来的な服装に包まれた肢体は男のみならず、女ですら注目させるものだ。
だが、彼女ーー精神上は彼と呼ぶのが最も適切ーーにとっては、不満がある容姿のようだ。
元男であるから当然なのだが。そう、彼は八神光一その人である。
あの爆発事故に巻き込まれた時、気がついたら電脳世界でこんな姿になってしまっていたのだ。
なぜこんな姿になってしまったのかは光一には解らない、しかし、一つだけ解るまずい事があった。
それは、自分が電脳世界の住人と全く同じ体、データコアを持つ電脳体となってしまった事だ。この際性別が変わったことは横に置けたとしても、無視できない問題だった。
電脳世界の生命が実体世界で活動することはできない。実体世界の住人が電脳世界で活動することはできるが、それは実体世界の住人がもともと持つ心のようなスピリチュアルな部分の要因が大きい。実体世界の住人には電脳世界の住人にとっての心臓であるデータコアに代わるものを持っているからこそ、電脳世界でも活動できる。しかし、電脳世界の住人は実体世界でデータコアを動かす事はできない。パワーが足りないからだ。そして、今の光一の身体にはデータコアが宿っている。実体世界の住人には存在しないデータコアがだ。
ここで二度と自分が実体世界に帰れない事を自覚した光一だったが、そこまで悲観することはなかった。
どうにかなると思っていたわけではなく、単純に、電脳世界の方が実体世界よりも自由な活動が可能だからだ。電脳世界の方が危険度は高いが、そもそも光一自身は実体世界そのものに未練はあまりなかった。両親を失い。天涯孤独の身となっていたのもあるが、今の身体は、実体世界の時の身体よりも不思議と『合う』気がするのもある。
いつの間にか自らの身体に対しての不満が消え去っていた事にも気づかず、これから何をするか考えだす光一。いや、電脳世界の住人となってしまい、身体も全くの別物となってしまった以上、その名はもはや彼女には不適切だろう。
新しい名前を考えなければならないな、私の名前はどんなものがいいかな、なんて事を考えながら電脳世界を放浪する『彼女』。自らの一人称の変化にも気づかず彷徨う彼女だったが、ふと、視線の先に激しい光を見つける。
なんだなんだと近づく彼女。そこでは巨大な赤のロボットと、これまた巨大な黒のロボット同士が戦闘していた。目を輝かせてその場面を見る彼女はロボットの動きからロボットには人が乗っているのだと確信する。
すると気になってくるのは彼らがなぜ戦っているのかだ。ロボットのデータになんとかアクセスして、コックピット内の会話を聞き取ろうとする彼女。しばらくして会話が聞こえだす。
『このやろー!神妙にっ!お縄につきやがれってんだ!こちとらえーと……正義の味方だぞ!』
『知るかそんな事!とにかく離せ!くそっ、こいつしつこすぎる!』
……どうやら、警察か何かと、悪人が戦っているようだ。ちなみに悪人の方が黒いロボットで、良い人そうな方が赤いロボットである。
このまま観戦していようかと考えていた彼女だったが、だんだん赤いロボットの方が押されてきていた。コックピット内の会話によると連戦でパワーが落ちているようだ、機体を構成するオーバーデータが足りないとも言っている。つまりはエネルギーが足りない状況だ。
赤いロボットに協力する義理は無いが、このまま赤いロボットがやられる所は見たく無いと思った彼女は、赤いロボットの援護をする事にした。
……といっても、彼女に戦闘の心得があるわけでも無い。あの赤いロボットのエネルギーだけでもなんとかできないかと思う彼女。オーバーデータの数が足りないと言うから、そこらへんから掻き集めてこようと思ったその時。
「え……?」
『な、なんだこりゃ⁉︎オーバーデータが、俺の機体に⁉︎しかも、調整までバッチシだ……司令!?』
『私にもわからないわ。でも、これは……』
『な、なんだなんだぁ⁉︎どうなってやがる⁉︎パワーがっ⁉︎』
『……まあいい、そんじゃ逆転といくぜぇ!』
【over drive】
赤いロボットが右手のドリルを唸らせて立ち上がる。その圧倒的なパワーに押される黒いロボットに対して、左の拳を叩き込む赤いロボット。黒の体躯に赤の拳がめり込む。
『データコアの位置は⁉︎』
『腹!コマンドー1から見て右の方に!』
『あそこか……よし!』
『ドリィィィィル!クラッ!シャァァァァァ!!』
………銀色の鈍い輝きを放つドリルが、黒いロボットの体躯を貫く。
それと同時に崩壊する黒いロボット。どうやら決着はついたようだ。
それを見届けて、見つからないうちに退散しようとする彼女。自分がなぜこんな身体になってしまっているかもわからないのに、悪人を捕まえる権限のある組織には見つからない方が良いと考えての行動だった、が。
『は〜いお嬢さま?ちょ〜っとご同行願えるかしら?さっきの事について聞きたいの』
……振り返った先にはピンクのロボット。そのロボットから逃げようとしてもーー
『おっと、俺もいるぜ』
ーー赤のロボットに阻まれる。万事休すである。
両手を上に挙げて降参の意を示す彼女。ピンクのロボットが彼女が何か隠してないかを調査し、安全だと判断するまでそのままのポーズで静止しておく。
これから、何をされるのか不安でたまらなくなってきた彼女。しかし、彼女の怯えに反して、彼らは彼女を害するつもりはないようだ。
『疑わしきは罰せず、だ。だからそんな怯えんなって!どーだ?かっこいいだろ?コレ。名前を決める前に出撃しちまったから、名前はまだないけどなー』
『こら、無駄話しない!こいつらを縛りつけておいたら、あとはいつも通り通報して帰りましょう』
『だな、そうするか』
………どうやら、彼らは警察組織ではないようだ。その事に安心しかける彼女だったが、よく考えると警察でもないのにあんな事をする組織に今から連れて行かれるのかと思うと、気が気でない彼女だった。
「私、これからどうなっちゃうんだろう……」
人と人との出会いは一期一会。どんな出会いが大事になるかは後にならなきゃわからない。
この出会いが彼女に何をもたらすのか?それはまだ、後の話だ。
※この彼女はこの作品の主人公ではありません。
主人公はあなたがかっこいいと思った誰かです。
次回予告
おはこにゃばちにんこ!li…「それ以上いけない」
とりあえずなんかよくわかんないけどなんかわかんない人たちに連れ去られてしまった名前はまだないよくわかんない彼女!ちなみに名前がまだないのは作者がめんどくさがったかららしい。ユグドラシルぜってぇ許さねぇ!もし私の未来が絶望がお前のゴールされたら次なんてないしてやるからなーー!なんでや!ユグドラシル関係ないやろ!……これ大丈夫?版権の心を滾らせてない?
というわけで、次回は「光一死す!絶望の未来へレディゴー!」じゃなくって「電脳犯罪特務対策室」らしいよ!うん!どっちにしろ凄まじいネタバレだね!それじゃ次回もーーオーバードライブ!