チョコに想いを乗せて
少し長いです
こんなバレンタインあったらいいな
2月14日。
それは、多くの人が期待に胸を膨らます日。
そう、バレンタインデーだ。
本命や義理、友チョコにご褒美チョコ。最近では、男が自分自身にあげる俺チョコなんてのもあるらしい。
かく言う俺のバレンタインという家族、ともう1人、家族同然の関係である隣に住む同級生の幼馴染。
彼女の名は佐藤 ちこ。
ーバレンタイン前日ー
ピンポーン。
インターホンの音が鳴る。
「仁志、ちこちゃんが来たわよー」
母の声が響く。
俺は天野 仁志。高校2年生だ。
「今いくよ」
俺は急いで階段を降り、玄関に向かう。
「おっはよう!ひーくん」
「ちこ、おはよう」
俺は欠伸をしながらも挨拶を交わす。
彼女は俺を『ひーくん』
俺は彼女を『ちこ』と呼んでいる。
「おはよう、お二人さん」
「2人ともおはよう」
登校中の俺たちの目の前に現れたのは、俺の親友の阿木 友也。
そして、友也の腕にべったりとくっいている高原 由美。二人は恋人だ。
「相変わらず二人は仲良しだな」
「お前らには負けるよ」
「はは…」
俺が言葉を返すと友也は苦笑する。
教室に着くと、みんなざわついている。
女子は好きな男子に渡す計画を。男子は誰から、いくつもらえるのか楽しみと不安で仕方なさそうだ。
「いいよな、友也と仁志は貰う当てがあって」
「俺はそんなに貰えてないから。異性からなんて、ちこだけだぞ」
「それだよ!なんの自慢だ!」
恨みの篭った目でこちらを見てくる。
「俺だって…」
「彼女いる奴に発言権はない!」
友也に至っては発言権すら与えられなかった。その友也を見る高原さんの目は少し怖かった。
今日も一日が終わり、下校する。
「じゃ、明日は楽しみにしていてね。あともう一つ、今年でチョコ最後かもしれな いし…」
そう言うと、ちこは帰っていった。
ちこにも好きな人が出来たんだな。
そう思うと少し複雑だった。
そして、来たるバレンタイン当日。俺は今、焦っている。
下駄箱にある箱の数が二つ。
一つは毎年通り、ちこから。では、もう一つは誰からのだろうか。
その箱には手紙があり、放課後に校舎裏に来てほしいとのこと。
本命だと思うと心拍音が上がる。
「おはよう」
「あ、おはよう」
教室に着き、ちこと挨拶を交わす。
「好きな人には渡せたのか?」
俺は無意識にそんなことを言ってしまってた。
「う、うん」
ちこは顔を少し赤くして俯く。
俺はふと友也に目をやると、ぐったりとしている姿が目に映る。
「どうした?友也」
「いや、別に…」
俺が友也に声をかけると一人の女子生徒がこちらに近づく。
「あ、友也くん。これ義理チョコね」
「あ、う、うん」
友也は友好関係が広いためクラスの中でも人気だ。
友也がそれを受け取ると、急に寒気がした。
「友也、それ」
後ろから寒気を感じ、振り向くとそこにいたのは高原さんだった。
「どうぞ」
「よく出来ました」
その時の高原さんの笑顔が怖かった…。
そして、あっという間に放課後になってしまった。
授業中、俺の頭はあの謎のチョコのことしか頭になかった。
俺は書いてあった通りに校舎裏に向かう。そこで待っていたのは見覚えのある立ち姿だった。 佐藤 ちこの姿だった。
「え?」
俺は思わず声が出た。
「来てくれたんだ…」
恥ずかしそうに彼女は言う。
「でも、ちこはとっくに貰ったよな」
「うん」
俺の頭はもう働かなくなったのかもしれないと思えるほど頭が回らない。
「ひ、一つは幼馴染としてのチョコ
もう一つは…」
「私と付き合ってください。ひーくん」
俺に届けられた二つ目の贈り物は、彼女が異性としての俺に届けたものだった。
「へ、返事くれる?」
「わかった」
俺は幼馴染の方を開ける。中には一つのカップケーキが入っていた。それを半分して片方をちこに渡す。
「一緒に食べよ」
ちこは戸惑いながらも食べた。
俺もそれを一口で食べた。次は彼女の一番想いの詰まっている方を開ける。
中にはハート型の小さなチョコが沢山入っていた。
「ちこ、ありがとう。おれの方こそよろしく…」
不器用な言葉を彼女に送った。
帰り道。
「いやでも、まさかちこが好きな人が俺だったとは…」
「これでも今までのやつ全部本命だったんだよ」
ちこは頰を膨らまし、少しむくれる。
「うん、美味しい!」
本当に彼女のチョコレートはお世辞抜きに美味しかった。
「ほんとに!」
彼女は満面の笑みを浮かべた。
すると、ちこはハート型のチョコを一つ手に取り口にくわえると俺の肩を叩く。
俺が、ちこの方に振り向いた瞬間。
口に甘さが広がる。
「えへ、どう?」
彼女は悪戯に微笑む。
その一瞬は甘すぎて俺はちこを見る事ができなかった。
今年のバレンタインのチョコレートの味は2度と忘れることの出来ない味になった。
どうでしたか?
もし、希望があれば
ちこ目線や友也と由美の話も書きますのでその時は是非ご感想に書いてください
次回はホワイトデーに書きます
仁志はちこにどんな想いを届けるのでしょうか