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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

安易な白い部屋の設定利用は危険

作者: クネロ
掲載日:2016/12/16

読み進める前に注意事項としてあらすじをご確認下さい。

『


 もはや日付(ひづけ)の感覚(かんかく)は無(な)かった。

 

 数(かぞ)えた食事(しょくじ)の回数(かいすう)も気(き)の狂(くる)いそうな周囲(しゅうい)の色(いろ)に溶(と)けた。

 

 どれだけ暴(あば)れまわろうが喚(わめ)き、騒(さわ)ぎ立(た)てようが全(すべ)て四方(しほう)の壁(かべ)が反響(はんきょう)もせずに吸収(きゅうしゅう)してしまう。

 

 時折(ときおり)表(あらわ)れる神(かみ)は悪魔(あくま)の存在(そんざい)を否定(ひてい)する言葉(ことば)を口(くち)にする。


 そうしたものを信(しん)じてはいけないと。


 そして「神(かみ)ではない。御使(みつか)いだよ」とも否定(ひてい)した。


 この空間(くうかん)と同一色(どういつしょく)の衣服(いふく)を纏(まと)った二人(ふたり)の従者(じゅうしゃ)も肯定(こうてい)する。

 


「君(きみ)が外(そと)に出(で)るにはもう少(すこ)し時間(じかん)が必要(ひつよう)だ。何(なに)より危険(きけん)が多(おお)い。君自身(きみじしん)の安全(あんぜん)のためにも暫(しば)く辛抱(しんぼう)して欲(ほ)しい」


 そう優(やさ)しく微笑(ほほえ)んで言(い)う御使(みつか)いの真っ直(まっす)ぐな瞳(ひとみ)に気後(きおく)れして視線(しせん)を外(はず)す。


 それでも自分(じぶん)が信(しん)じられるのは最早(もはや)彼(かれ)だけだった。

 

 目(め)が覚(さ)めると白(しろ)い天井(てんじょう)。


 気落(きお)ちして俯(うつむ)くと白(しろ)い床(ゆか)。


 この空間(くうかん)は明(あか)るさの強弱(きょうじゃく)で擬似的(ぎじてき)に昼夜(ちゅうや)を作(つく)り出(だ)せるようなのだが、寝(ね)そべるベッド意外(いがい)何(なに)もない。


 気温(きおん)も一定(いってい)に保(たも)たれる様(よう)で羽織(はお)る掛布団(かけぶとん)さえも無(な)かった。

 

 そうコレはアレだ。


 俗(ぞく)に言(い)われる“白(しろ)い部屋(へや)”。


 web(ウェブ)小説(しょうせつ)序盤(じょばん)に登場(とうじょう)するテンプレート的(てき)なアレに違(ちが)いないだろう。

 

 トラックに撥(は)ね飛(と)ばされる人(ひと)を目(め)の前(まえ)で目撃(もくげき)したと思(おも)った瞬間(しゅんかん)には身体中(からだじゅう)を打(う)ち付(つ)ける衝撃(しょうげき)を最後(さいご)に意識(いしき)は遠退(とおの)いていた。


 次(つぎ)に気付(きづ)いたらココにいたと言(い)うわけだ。

 

 そして現(あらわ)れたのは女神(めがみ)ではなく男(おとこ)で、彼(かれ)は神(かみ)でもなく御使(みつか)いだったが。

 

 此処(ここ)でチートを貰(もら)って異世界(いせかい)に転生(てんせい)ってまでがセットでテンプレートだと思(おも)っていたが、危険(きけん)だと言(い)う理由(りゆう)でこの部屋(へや)から出(で)る事(こと)が叶(かな)わない。


 何(なん)て過保護(かほご)な扱(あつか)いだろうか。

 

 

 もちろん、入口(いりぐち)から入(はい)った分(ぶん)当然(とうぜん)出口(でぐち)から出(で)るものがある訳(わけ)で、白(しろ)い壁(かべ)の切(き)れ目(め)の先(さき)に用意(ようい)されていたトイレと呼(よ)べる空間(くうかん)を利用(りよう)していた。


 一応(いちおう)プライベートには配慮(はいりょ)してくれいるらしい。


 一層(いっそう)狭(せま)く白(しろ)い壁(かべ)に囲(かこ)まれたプライベートスペースには扉(とびら)はなく、洋式(ようしき)の便座(べんざ)とペーパーが有(あ)るだけ。


 勝手(かって)に洗浄(せんじょう)されるので匂(にお)う事(こと)も掃除(そうじ)をすることも無(な)かった。

 

 早(はや)く此所(ここ)から出(だ)して欲(ほ)しいと願(ねが)ったが此所(ここ)から出(で)ることは出来(でき)ずにいた。

 

 ココに来(く)る前(まえ)、あの衝撃(しょうげき)を受(う)けた時(とき)にキズを追(お)ったようで記憶(きおく)に障害(しょうがい)が出(で)ているらしいことも理由(りゆう)の一(ひと)つだったかも知(し)れない。


 あの優(やさ)しい声(こえ)で語(かたり)り掛(か)けてくれる御使(みつか)いの力(ちから)では治(なお)すことは不可能(ふかのう)らしく、福音(ふくいん)がどうのこうのと真剣(しんけん)に悩(なや)んでくれていた。

 

 初(はじ)めの頃(ころ)は無理矢理(むりやり)にも出(で)て行(い)こうと彼是(あれこれ)試(ため)したが無駄(むだ)だった。


 ここ暫(しば)くはそんな気(き)も起(お)きず、もて余(あま)した体力(たいりょく)を腕立(うでた)てや腹筋(ふっきん)背筋(はいきん)に費(つい)やした。


 少(すこ)しはステータスが上(あ)がるだろうか。

 

  

 ベッドの上(うえ)で膝(ひざ)を抱(かか)え、静(しず)かに壁(かべ)を眺(なが)める。


 そろそろ食事(しょくじ)の時間(じかん)だろうと思(おも)ったのだ。

 

 白(しろ)いキャンバスに黒(くろ)い長方形(ちょうほうけい)がスッと描(えが)かれたのに気付(きづく)くと、ヌッとトレーに載(の)せられた食事(しょくじ)が現(あらわ)れる。

 

 あの一瞬(いっしゅん)見(み)えた真っ暗闇(まっくらやみ)の先(さき)が異世界(いせかい)だろうか。


 流石(さすがに)にあの大(おお)きさでは腕(うで)が入(はい)るのがやっとだろう。

 

 

 そうして時間(じかん)を潰(つぶ)す。

 

 

 縦(たて)に大(おお)きく黒(くろ)い長方形(ちょうほうけい)が現(あらわ)れる。

 

 きっと彼(かれ)だろう。

 

「調子(ちょうし)はどうだい? よく眠(ねむ)れているかな?」 

 優(やさ)しい声(こえ)に安堵(あんど)する。やはり御使(みつか)いだった。

 

 よく眠(ねむ)れていると伝(つた)えると、御使(みつか)いはお試(ため)しで一度(いちど)外界(がいかい)に出(で)てみようかと聞(き)いてくる。


 もちろん出(で)たいと応(こた)える。

 


 

 

 外(そと)。

 

 木々(きぎ)に囲(かこ)まれた一画(いっかく)。


 土(つち)の感触(かんしょく)と匂(にお)い。風(かぜ)の揺(ゆ)らめき。日(ひ)の温(あたた)かさ。


 久(ひさ)しぶりに触(ふ)れる無機質(むきしつ)以外(いがい)の感覚(かんかく)と人工的(じんこうてき)でない明(あか)るさに心(こころ)が踊(おど)る。

 

 男(おとこ)。

 

 御使(みつか)いと従者(じゅうしゃ)以外(いがい)の者(もの)に合(あ)う。


 少(すこ)し変(か)わったイントネーションのその男(おとこ)は「土(つち)いじりって落(お)ち着(つ)きますよね」と同意(どうい)を求(もと)めてくる。


 此処等(ここら)で自分(じぶん)の焼(や)いたパンを売(う)っているらしいその男(おとこ)は幾(いく)つもの鉢(はち)に土(つち)を移(うつ)し、指先(ゆびさき)で孔(あな)を開(あ)けると手(て)にした種(たね)を落(お)としていく。


 他愛(たあい)のない話(はな)しをしながら、穏(おだ)やかな時間(じかん)を過(す)ごす。


 きっとこの世界(せかい)は優(やさ)しい世界(せかい)なのだろうと思(おも)った。


 いったい何(なに)が危険(きけん)だと言(い)うのだろうかと少(すこ)し憤慨(ふんがい)した時(とき)だった。

  

 「危(あぶ)ない!!」


 突然(とつぜん)の叫(さけ)び声(ごえ)に横(よこ)を見(み)ると本当(ほんとう)はファーマーに成(な)りたかったと語(かた)ったパン屋(や)が血塗(ちまみ)れで倒(たお)れていた。

 

 倒(たお)れた彼(かれ)の頭部(とうぶ)から流(なが)れる血(ち)とその原因(げんいん)であろう大(おお)きめの石(いし)が転(ころ)がっている。

 

 ドンという衝撃(しょうげき)でまたしても気(き)を失(うしな)った。

 

 

 

 都合(つごう)二度目(にどめ)だろう。

 

 やはり目(め)が覚(さ)めるとまた、白(しろ)い部屋(へや)だった。

 

 農家(のうか)志望(しぼう)のパン屋(や)は無事(ぶじ)なのだろうか。

 


 御使(みつか)いはちょっとした手違(てちが)いが合(あ)ったことを謝罪(しゃざい)してきた。


 此所(ここ)から出(で)るにはまだ早(はや)かったことも含(ふく)めて。

 



 

 あの優(やさ)しい世界(せかい)を知(し)ってしまった今(いま)、耐(た)え難(がた)い衝動(しょうどう)に駆(か)られる。

 

 

 もう一度(いちど)彼処(あそこ)に行(い)きたいと。

 

 

 だから、じっと機会(きかい)を伺(うかが)っていた。誰(だれ)にも気取(けどら)られる事(こと)なく、ひっそりと。

 


 

 そしてチャンスは唐突(とうとつ)に訪(おとず)れる。

  

 閉(と)じられる筈(はず)の縦長(たてなが)に伸(の)びた黒(くろ)い空間(くうかん)がホンの僅(わず)かだけ残(のこ)ったままだった。

 

 チートなど無(な)くとも、彼処(あそこ)まで行(い)ってやると、決心(けっしん)する。

 

 白(しろ)い壁(かべ)に手(て)を掛(か)け黒(くろ)い空間(くうかん)を押(お)し広(ひろ)げる。

 

 その空間(くうかん)操作(そうさ)能力(のうりょく)によって拡(ひろ)げた黒(くろ)い空間(くうかん)が閉(と)じる前(まえ)に身(み)を滑(すべ)り込(こ)ませる。

 





 

 黒(くろ)い隙間(すきま)の先(さき)は……ダンジョンだった。

 



 体格(たいかく)の良(よ)い人型(ひとがた)に終(お)われ逃(に)げる。今(いま)のはオークだろうか。

 

 通路(つうろ)の行(い)き止(ど)まりで呻(うめ)きながら小刻(こきざみ)みにツ、ツ、ツと爪先(つまさき)だけで回(まわ)り続(つづ)ける人影(ひとかげ)。


 無感情(むかんじょう)とでも表現(ひょうげん)できるであろう弛緩(しかん)した顔(かお)に恐(おそれ)れおののくく。

 

 

 硬(かた)く閉(と)ざされたダンジョンの扉(とびら)の前(まえ)で進退(しんたい)窮(きわ)まると、二度目(にどめ)と似(に)た衝撃(しょうげき)。








 この部屋(へや)で気(き)が付(つ)くのは三度目(さんどめ)。



 死(し)に戻(もど)りってやつだろうか。



 目映(まばゆ)い程(ほど)の明(あか)るさだけで色(いろ)のない部屋(へや)に狂(くるい)いそうだ。

 


 

 

 

 

 

』 

 そう言うことがあってはいけないなと、設計士は間接照明と引戸案を捨て、色合いを変更した。

この手の妄想オチは既出だとは思いますが、何かを参考にしたとかはありません。


あまりにも似通っているものがあれば、余計なトラブルを避ける為にも内容の削除を行いますのでご連絡下さい。

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