とおりゃんせ
帰り道は電灯が等間隔で並んでいて、その間には数十メートルも影がある。
八月九日はもっとも通りたくなくて、通れば最後、渡りきらなければならない。
私はそこに足を踏み入れてしまったわけで、電灯の明かりの下、震えて先に進めないまま、どうすればいいか迷っていた。
「振り向けないし、明かりがないところで息すると大変なんだよな」
息をしたらどうなるのかは聞かされはしなかったものの、それが逆にここを避けるようにさせていたのだろう。
私はどうすればいいのかわからなかったが、息をせずに走って明かりの下を走ればいいのだと考えた。
息がもつかどうかは解らないが、社会人になってもそれくらいは出来そうだと思っていた。
そして息を止めて走り出してみたものの、聞かされる話は都市伝説程度だろうと気づいて、馬鹿馬鹿しくて足を止め、呼吸を整えて歩き出す。
「やっぱり何もないじゃないか」
そう思ったとき、肩が重たく感じた。
腹から込み上げてくる空気みたいで、首を走る脈の流れのように異様な雰囲気を。
「ゴヨウガナイモノ、カイリャンセェ」