その頃のお話
ちょっと親友たちのお話です。
時刻は夜。太陽が沈み、薄暗い闇がゆっくりと世界を覆っていく。だが、一箇所だけ、その闇を押し退ける場所があった。そこではパチパチと火花が宙を舞い、紅の光が周囲を照らす。
人の気配など絶無の秘境の夜。炎に炙られる熊肉の香りが鼻腔をくすぐり、視界の先には満天の星空が。
決して都会では見れない絶景を前に、抱く思いなど唯一つ。
「夜…怖い……」
絶望的な恐怖である。
「うぅ……目が覚めたら花ちゃん達が目の前にいそうだよ……」
気がついたら冥界にいた。つまり、寝ている間に死んでそうという事だ。
何故なら此処は人の気配が絶無な秘境、というだけで無く、魑魅魍魎が跋扈する魔鏡なのだ。
昼間の戦い。あの一方的な虐殺を見て、此処が如何に危険な場所かという事は嫌という程に実感している。
「ああ、何で俺がこんな目に……」
割と似た様な出来事には頻繁に遭遇しているが、やっぱりその都度そう思ってしまう訳で。それも今回みたいな場合は特に。
まあ、その時々で役立つかどうかが不明な無駄技能を習得しているのだが。今回の焚き火もその一つ。酷い目にあって覚えた技術が、次の酷い目で役に立つとかどんな皮肉か。
「あいつらはどうしてるかなぁ……」
思い出すのは一緒に馬鹿をやった三人。別れて一日と経っていないが、なんとなく心配になってくる。
花ちゃんが言うにはどっかの国に持っていかれたそうだが。
「勇者とかやるのかなぁ……御愁傷様」
もし勇者召喚とかが横槍の原因だとしたら、ちょっとその国の人たちには同情する。
守は兎も角、ズーやキクリンがなぁ。勇者補正とかあったとしたら、変な方向へ爆走しそうだし。
「守も可哀想に」
我らがストッパーの苦労が容易に想像出来る。何せ魔法とかがある異世界だ。勇者補正とかが無いとしても、あの二人がトラブルを起こさない訳が無い。
だが、それでもだ。
「あー、会いたいなぁ……」
変な事を起こすと予想出来ても、あの三人と一緒だったらどんなに良いか。
何年も離れている訳じゃない。ぶっちゃけ一日も経ってない。それでも、仲の良い三人の顔がみたい。
それはこんな環境だからこそ。何時死んでもおかしくない環境だから、心細さは一入で。死に慣れてると言うと可笑しいが、それでも寂しいモノは寂しくて。
「一人は辛いねぇ……」
見上げた夜空は、憎らしい程に澄んでいた。
####
時は少し遡り、宗馬が旧校舎へとダッシュしていた頃。
「やっぱりソーマって運悪いな」
「改めるべくも無い認識だがな」
「いや、そう言ってやるなよ。流石にあいつが哀れだ」
悲運の少年を笑うキクリンとズーを軽く窘め、俺、西野守はしみじみ思う。
「ソーマも本当、良く生きてるよなぁ」
さっきまでは揶揄いの種にしていたが、ソーマも運の悪さは本当に洒落にならない。
俺の知ってるだけでも、車に轢かれた事が十何回。何かしらの機材が倒れてきたり、落ちてきたりも十何回。本人談だが、本気で生死の境を彷徨ったのが七回だそうだ。
これだけでも恐ろしいが、一番恐ろしいのは全部の事故でソーマの落ち度がゼロだと言う事。大体が相手方の不注意か、偶発的な事故なのだから手に負えない。……まあ、事故のお陰でソーマの家はかなり潤っているそうだが。本人曰く、事故の大きさとかの割には軽傷が多いので、保険金や示談金でがっぽりだと笑っていた。
全く……。本人は既に開き直っているみたいだが、見ているこっちは未だにハラハラする。健康体なのに何時死んでもおかしくないとか、友人としては勘弁して欲しい。
「俺はソーマが死ぬとは思えんがな」
だが、キクリンはそう思っていないようだ。
「何で?」
「ソーマは死に掛ける事は有っても、死ぬ様な事は無いからだ。あいつは何だかんだで天寿を全うするだろうよ」
いやこう言っちゃなんだが、それは無理だと思うぞ?
「無理じゃないさ。確かにあいつの運の悪さは筋金入りだが、普通とは別種のベクトルの運勢に関して言えばそうでも無いからな。寧ろ、数百年に一人の天運の持ち主だと俺は思っている。だからこそ生きてる……いや、だからこそ死なないんだろう」
態々生きてるを死なないと言い換えたのは、キクリンなりの考えがあってだろうか。
普段は馬鹿しかやらないが、キクリンは頭がずば抜けて良い。頭が普通の俺達なんかより、物事の本質を深く読み解いている。だからこそ、その言葉には重みがあった。
「ソーマは良く生きてると守は言ったが、本当は多分逆だ。ソーマだから生きてるんだ」
「ソーマだから?」
「そうだ。一応聞くが、守もズーも大型トラックと正面衝突して五体満足でいられるか?鉄骨が上から落ちてきて、後遺症も無く快復する自信はあるか?」
「それに避けるって選択肢は?」
「ある訳無いだろこの野生児」
うん、その選択肢はズーにしか無いから。普通の人が目視してからトラック回避を出来るのなら、年間の交通事故件数が多いはもっと減ってる。
「それじゃあ無理。良くて重症、普通に死ねる」
「ズーでも無理?」
「あのね守。何度も言ってるけどさ、俺も普通の人間だから!怪我する時は怪我するの!」
「「少なくとも普通じゃねーよ」」
「酷くね!?」
いや、当たり前の反応だろ。本能と第六感で雷を回避した奴と、普通の人間を一緒の括りにされたら困る。
「まあそう言う訳だ。普通の人間なら即死してもおかしく無い目に何度もあって、ソーマは未だにピンピンしてる。そんな奴が、普通の人間よりも早死にする訳が無い」
「成る程」
言われてみれば、俺にはソーマが死ぬ所なんて想像出来ない。それはズーも同じな様で、うんうんとしきりに頷いていた。
そんな俺達に、キクリンは小声で更に理由を追加した。
「それに、ソーマにはあの人外ロリ達を筆頭にした繋がりもある。あいつらがいる限り、ソーマに万が一なんてある筈が無い」
これには俺もズーも大いに納得した。
俺達四人は普通じゃない。野生児、マッドサイエンティスト、悲運の少年。割りかしマトモな方だと思うが、俺だって普通じゃない。そんな常識知らずの集まりの中で、最も奇抜な特異性をソーマは持つ。
それは、ソーマの不思議な交友関係だ。
確かにあれがある限り、ソーマを害する事など不可能に近い。何故なら、ソーマの友達は人外である。都市伝説、妖怪、挙句の果てには冥界の女神までもが友人だ。
恐らく、死という概念に対して、ソーマは人類史上最強の後ろ盾を持っている。
「最初に言われた時は何言ってんだコイツって思ったけどな」
初めは俺もキクリンも、間抜けなズーでさえソーマの言う事など信じなかった。だって非常識過ぎたし。だが、その後直ぐに『トイレの花子さん』が出てきて軽くパニックになったモノだ。他にも雪女の雪音ちゃん、猫又のマタタビちゃん、座敷童の弥生ちゃんなど。ソーマの人外の知り合いの多さには唖然とした。……ロリっ娘が多かった事にも驚いた。
「アレと出会うのもある種の運だ。こうして考えると、何だかんだであいつの運もバランスが取れてる」
通常の運勢がマイナスに振り切れている代わりに、普通じゃない方がプラスに振り切れている、と。
他人事だから気楽に言うが、あいつも本当に苦労してる。
何も知らない奴からすれば羨ましく映るだろうが、事情を知ってるこっちからすればそんな奴は愚かとしか思えない。代わりたければ代わってやれ。本当に。
とは言え、だ。
「まあ、昼休みに話す内容でも無いだろう」
まるで締め括る様に言うキクリンに、俺は言葉に出さずに同意する。
ぶっちゃけ重い。人様の運命に関する事など、学校の休み時間に語る様な内容じゃない。側から聞けば厨二みたいな会話だが、それが現実の事であるからタチが悪い。
かなり脇道に逸れていたが、元は『ソーマって運悪いよな』という雑談なのだ。だったら、この辺りで切り上げるのが妥当だろう。
「そろそろソーマも戻ってくるかな?」
「んな訳無いだろ。ソーマはズーじゃないんだぞ」
「今やっと旧校舎に着いた頃だろうな」
ズー程じゃないが、ソーマもそこそこ運動が出来る。かなり離れた旧校舎だが、それでも五分ちょいで着くはずだ。
「そんじゃあ、ソーマが戻ってくる前にトイレ行こうぜ?」
「やだ」
「連れションとか面倒」
「……まあ、予想はしてた」
なんとも言えない顔でトイレに向かおうとするズー。別に連れション断われたぐらいでそんな反応しなくても……。
「……って、あれ?」
「ん?」
唐突に聞こえてきた困惑の声に視線を向ければ、ズーがドアの前で何やらガタガタやっていた。
「どした?」
「いや、何かドアが開かない……」
ズーの腕を見る限り、結構な力でドアをスライドさせようとしていた。なのに、ドアは一向に動く気配が無い。
「カギでも掛かってんじゃない?」
「……いや、掛かってない」
鍵の確認をしても、掛かっていないとズーは言う。
ならば何故?そう俺は思ったのだが、キクリンはズーに憐れみの視線を向けていた。
「……ズー。ドアを壊したなら素直にそう言え。自首した方が罰は軽いぞ」
「ちょっ!?誤解だから!俺なんもしてない!」
「安心しろ。故意じゃなければ報告書程度の筈だ」
「人聞き悪い事言うなー!!」
泣き顔で否定するズー。まあ、確かに誤解にしてもタチ悪いけど。
「だったら何故開かない」
「いや、本当にビクともしないんだ、よっ!」
ふんぎぎっっ!と変な声を上げながらズーはドアを引っ張るが、本当にドアはピクリとも動かない。
ズーが奮闘していると、クラスメートも異変に気付いた様で騒がしくなった。
「え、あれ、こっちも?」
「本当に開かないの?」
皆がドアや窓を弄り、終いにはイスとかで破壊しようとするが、どちらもビクともしなかった。
最初は全員が困惑していたが、次第にそれはパニックへと変化していく。
「え、なんだよこれ!どうなってんだ!?」
「閉じ込められた!?」
「おい!外の様子も変だぞ!」
廊下を見れば、何人かの生徒が虚空を叩いていた。まるでそこには見えない壁がある様に、ある一定の地点から先には一歩たりとも進めていない。
「なあ、これって」
「やっぱりあれ?」
「だろうな」
俺達は小声で確認し合う。三人が共通の認識を抱いていると分かり、そして同時にため息を吐いた。
「どうする?専門家いないよ今」
「ったく、つくづく間の悪い」
「いや、原因俺達だから……」
まあ、キクリンの気持ちを分からなくもないけどさ。
現在の状況。それは明らかに普通では考えられない事であり、それ即ち普通の事が原因では無いという事である。
人外。
それは御伽の中の住人であり、現世の住人。存在が確認されていないモノであり、確かに存在しているモノ。
彼らは総じて超常の力を操り、人々を時に護り、時に脅かす。
今の状況が護る為のモノか、脅かす為のモノかは不明だ。だが、原因が人外にある事だけは確かである。
「ソーマは……」
「心配するだけ無駄だと思うよ」
「神出鬼没で何気に強いからな、あの人外ロリ達は」
キクリンの言葉で思い出すのは、以前行ったキャンプでの出来事である。
泊まりがけのキャンプだったのだが、真夜中に騒がしくて目が覚めると、辺り一面に悪霊と呼ばれる類の霊魂が蠢いていた。……後から知ったのだが、キャンプ場の近くの神社が土地開発によって解体されていたらしい。その所為で沈められていた悪霊達が湧き出てきたそうな。
まあ、兎も角。そんな絶体絶命の危機に瀕した俺達だが、ソーマの呼び声によってひょっこり現れた雪ちゃんが悪霊達を氷漬けに。……ソーマが召喚士か何かに見えたのは俺だけじゃない筈。
「あいつが叫べばボディーガードが飛んでくるんだ。心配なんか必要無いだろ」
「確かに……」
「それに、心配するのは俺達自身だ」
やはりそうなるのか。いや、確かに俺達には人外への対抗手段は無いのだが。
キクリンもそれは分かっているのか、特にどうこうする気は無さそうだ。無駄な抵抗はせず、心構えだけはしっかりしろと言う事か。
「まあ、結果は神に祈るしかない。後はソーマが駆けつけるか」
「だったら神様で。ソーマはこの手の事で頼りになるけど、事態を悪化させそうで怖い」
「踏んだり蹴ったりな評価だね」
一概に否定出来ない辺り、ソーマは本当にタチが悪い。
苦笑を浮かべていると、教室のスピーカーからノイズが聞こえてきた。どうやら動きがあった様だ。
『ーーガ、ーーあーあ、テステス、ーーうん、大丈夫そうだね』
スピーカーから流れる声はとても中性的であった。
『こんにちは、海陵学園の皆さん。とても不幸な事だけど、君達は選ばれてしまった』
とても静かで、淡々と。
『君達にはこの世界から消えてもらう。これは神々の決定だ。拒否は出来ないからそのつもりで』
残酷な事実が告げられた。
「「「……」」」
俺達三人を除いて、直ぐにこの言葉の意味を理解出来た者はいない筈だ。そもそもの話、普通の人間からすれば今の状況ですら常識の外なのだから。
そして、人は受け入れられない事態に連続で遭遇した時、取る行動というのは一つだ。そう、大パニックである。
「どういう事だよ!?」
「巫山戯るな!!」
「そもそも何なんだよこの状況は!?」
「何で私達が!?」
怒号や悲鳴が飛び交った。空間ごと遮断されているのか外は静かであるが、恐らくは他の場所でも似たような事になってる筈だ。
まあ、いきなり消えろとか言われて納得出来る人間などいないだろう。
『まあ、君達が何故と思うのも当然だ。これにはちゃんと理由がある。君達人間は増えすぎたんだ。もうこの世界の許容量は一杯なんだよ。だから減らす』
「何でそれで俺達が消されなきゃいけない!!」
「そうだそうだ!!」
『何故君達なのか、ね。それは君達が選ばれたからだ。偶然、君達のいる海陵学園に白羽の矢が立ったのさ』
つまり、運が悪かったと。これは俺達もソーマの事を言えないかもしれないな。
周りを見れば、俺達を除く全員があまりの理由に絶句していた。これは偏に経験の差か、それとも俺達には希望があるからか。
『とは言え、だ。君達が何かしたのかと言う訳でもない。普通に生活してきた君達を問答無用で消すのは流石に神としても忍びない。だから君達には幾つかの異世界に跳んで貰う』
……ふむ。予想はしてたが、まさか異世界トリップとは。確かに状況としてはありがちだろうが、現実になるとは思わなかった。
とは言え、嬉しい誤算ではある。問答無用で消されそうになった場合、ソーマ経由でイザナミ様に直訴でもして助けて貰おうと思っていたが、これは半分以上が博打である。分の悪い賭けである以上、やらなくて済むならそうするべきだ。例え、この世界とお別れだとしても。
「二人はどう思うよ?」
「人生は命あっての物種だ。死ぬよりは、まあマシだろうよ」
「母さん達と会えなくなるのはツライけどね。それでも、生きれるなら生きたいさ」
敢えて具体的な言葉を使わなかったが、二人は俺の質問の真意をしっかりと汲み取ってくれた。流石は長い付き合いと言うべきか。
二人の答えは俺と同じだった。似た者同士、そんな言葉が頭をよぎる。
『さて、君達が跳んで貰う世界だけど、剣と魔法のファンタジーな世界って言えば分かるかな?一応、君達の年頃が好きそうな世界を選んだけど』
剣と魔法のファンタジー。正しく異世界トリップだな。何人かは反応したが、そいつらは多分オタクの気があると思う。
そして、そういう奴等が次に考える事は。
「チート!チートはあるのか?」
「そうだそうだ!そっちの都合で跳ばされるんだから、何か力を寄越せ!」
やっぱりか。異世界トリップと言ったらチート。そう考えるのは、その手の奴等なら当然だ。
とは言え、あいつらは状況が分かってんのか?生殺与奪権が握られていると言っていい状況で、良くもまあ要求なんて言えるものだ。呆れる程にお気楽だ。
『まあ、確かに向こうは危険だ。安全な場所に跳ばす予定だけど、直ぐに死なれるのも気分が悪い。だから、最低限の身体能力は与えるつもりだ』
「うおっしゃーっっ!」
「俺Tueeeキタコレ!」
騒ぐ馬鹿達。神が最低限と言ったのは聞こえなかったのか?
『念押しするけど、あくまで最低限だ。向こうの世界の平均的な兵士と同等ぐらいだから』
ほら、釘刺された。
「何でだよ!?そんなの弱っちいじゃねーか!!」
「こっちはお前らの都合で振り回されんだぞ!誠意ぐらい見せろや!」
あーあ、逆ギレしやがった。消されても知らねーぞオイ。
他の奴等は気づいてないが、スピーカーの方からほんの一瞬だけ怒気が漏れたぞ。見ろよ、ズーなんて本能的に震えてんじゃねーか。
「……大丈夫か?」
「……一応は。なんか全身に寒気走ったけど」
「お前ら、良くそんなの気づいたな」
キクリンが呆れながら言ってきた。いや、だってそれが俺の領分だし。
そして未だに馬鹿は騒いでるし。そろそろ死ぬんじゃねあいつら。
『……ったく、仕方ない。そんなに言うんだったら種をやる。後は自分でなんとかしろ』
あ、神の方が折れた。そして種って何?
『向こうについたら、君達の資質を開花し易くする。あくまでし易くだから、努力しないと開花はしない』
つまり成長補正か。まあ、あって困るモノじゃないな。
それでも馬鹿は納得してないみたいだったが、神は先手を打ってきた。
『別に君達に何かやらせる訳じゃないから、生きる事で必要以上の能力は与えない。向こうで大成したいなら、自分で相応の努力をしな』
努力無しで大成出来ると思うなって事か。
『必要な能力しか与えない代わりに、神々は君達には不干渉だ。向こうでは自由に生きろ。例え外道に堕ちたとしても、神が君達を裁く事は無い』
代わりに人間には裁かれると思うけどな。
『それじゃあ、そろそろ転移を始めよう。向こうの知識は頭の中に叩き込んでおくから、文字が書けない、読めないなんて事は無い』
それは助かるな。向こうの世界の識字率なんて知らないが、話せたり文字が読めるだけで大分違ってくる筈だ。
『転移先は安全な場所へランダムだ。僕が受け持つのはそこまで。そこから先は君達の人生だ。それぞれの才を活かし、自由に生きろ』
徐々に教室の床が輝きだした。どうやら、これが転移の兆候か。
『ーー?……おや?』
ん?
『……ごめん、予定変更だ。何処からか横槍か入ってきた。転移先は向こうの世界の国の王城に変えられた』
……。
『一応、危険が無いのは確認したけど、君達はとことん運が無いね。どうやら自由に生きるのは大変そうだ』
……。
『まあ、頑張れ。変な事にならない様に祈ってはおくよ』
神が祈るってどうなんだろうか?
そして、やっぱり俺達はソーマの不運が移ったみたいだった。
最後にそう思って、俺の意識は途切れた。
彼らのその後は、また後日に。