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謎魔法で奇跡を起こせ!  作者: みづどり
5/13

ヤバいです此処

日刊ランキングに入っていました。驚きましたよマジで。


これはやる気が出てきますね。

「……さて、と。うん、何処だ此処……」


現在絶賛迷い中。

いや、だってそりゃそうでしょ。ここら周辺を調べ尽くしてやると意気込んで動きだしたものの、先ずこの秘境が何処の何んなのかすら分かんないだぜ?

普通に考えろ。自分がどんな場所に居るのかすら分かんない状況で、どんな場所の何処に自分が居るのかとか分かる訳が無い。


「世界樹の場所は分かるけど、アレも見た目は只の木だし……」


鑑定使わないと普通の木と世界樹の違いなんて分かんねーよ。成長すればデカくなるらしいけど、アレまだ若木だから他の木と見分けがつかないんだよなぁ。……周り木ばっかだし。

とは言え、あの世界樹が現在の俺の生命線だ。見失ったりしたら確実に詰む。

だからこそ、あまり離れる訳にはいかない。


「……一旦戻ろう」


まだ偵察にでたばっかだけど、世界樹から離れ過ぎるのはマズイ。まだ十分くらいしか経ってないけど、選択肢が皆無な状況では安全第一を考えるべきだ。


「にしてもアレだな。特殊状態の持続時間を使えば、大まかな時間が分かるのは助かる」


時間というのは行動する為の一つの目安になる。指針らしい指針が何一つ無い今の状況なので、例えそれが些細な事であったとしても、助かるというのが本音である。


「えっと、さっき通った時につけた印が……あった」


来た道が分からなくなる事がないようにと、あちこちにつけておいた印を辿っていく。


「それでこの辺りに確か……と」

「グルル」

「で、次が向こうの方つけたから………ん」


いや待て。今何か多くなかったか?具体的に言うなら、俺しかこの場に居ないのに「」の数が一つ多い気が……。


「グルル」

「……」


うん、気のせいじゃないわ。明らかに第三者がいるよこれ。しかも後ろに。


「グルル」


アレだね。この独特の獣臭さに声。さっきから背中に掛かってくる生暖かい鼻息。人間じゃないね、うん。

あまり当たって欲しく無い予想だけど、これ四足歩行する系の生き物だよね。それも肉食っちゃう系の奴。


「……」

「グルル」


さて、と。そろそろ現実逃避は止めようか。

恐る恐る後ろを向いて、そこに居るであろう獣とご対面。


「グルル」

「……」


そこに居たのは、全長三メートル程の狼でした。


「(デケェ!?)」

「グル?」


想像以上の巨体を前に、危うく声を上げそうになった。これで気付かれたらと思うとゾッとする。

良くマンガやアニメで数メートルの化け物を退治するシーンがあるが、あんなの現実でやるのは不可能だと思う。

実際に見て分かった。三メートル級の狼の相手なんて無理。口はデカイし爪も鋭いし、それこそチートでも持ってないと戦えないって。


(まだ気付かれてる訳じゃない。そーっと、そーっと、ゆっくりと下がろう)


抜き足、差し足、忍び足。いっその事、深草兎歩(現実の忍者の歩法)でもかまそうかと思ったが、巫山戯てる場合じゃないと自重する。


そろ〜り。


ザッ。


そろ〜り。


ザッ。


(なんか付いてくんですけど!?)


気付かれていない筈なのに、何故か巨大狼は付いてくる。


「グルル(クンクン)」


コイツ匂い嗅いでやがる!?


「グルル」

「(あ、目があった)」


どうやら、気配消失は文字通り気配しか消えないらしい。

つまり、見えないという訳じゃなく、見えても気付かない。分かり易く言うとアレだ。ハンターさん達の『絶』みたいな物。

それでも、匂いや音といった物から違和感ぐらいは感じる事が出来るらしく、目の前の巨大狼は匂いで探っているらしい。


「(ヤバい……。取り敢えず、この狼の情報だけでも……!)」


勝てる見込みなど皆無なのだが、それでも狼の詳細ぐらいは知っておいた方が良いだろう。


=======


怪狼王 ザイロス レベル95


アクティブスキル

・崩哮

・惨撃

・鎧皮

・迅化

・幻爪

・衝波

・天壊顎

・乱撃

・流転

・界眼


パッシブスキル

・超覚

・威光

・物理抵抗

・魔法抵抗

・悪食

・蓄積

・吸収

・快復


エクストラスキル

・王威

・怪威

・覇握

・君臨

・王技《絶禍》

・深淵魔法


=======


無理ッ!!!!!


「……」


前言撤回。チートあっても勝てる気しない。

つーか、何なのこの狼!?名前に『王』ってついてるし、明らかに主だろ!!それとも何か?このクラスがうようよいるのかこの森!?


=======


怪狼王 ザイロス


世界有数の危険地帯である『天輪の森』の主。天狼と呼ばれる天輪の森固有種の突然変異個体であり、狼系の『王種』

数百年の時を生きた怪物であり、長い歳月を掛けて培った知性は人すらも超えるという。

今でこそ天輪の森の主として大人しく暮らしているが、かつては数々の土地を渡り歩い天災の代名詞。

かつて、ザイロスを討伐せんと乗り出した英雄を含む一万の軍を爪の一振りで切り裂いた。咆哮一つで大都市を瓦礫の山へと変えた、など逸話に事欠かず、当時から百年以上が経った今尚語り継がれる、御伽噺の存在。


=======


うん、流石にこのクラスがうようよ居る訳無いか。

それは安心した。でも言わせて。


どっちにしろ知りたくなかったよこの野郎!!!


どうすんだよこれ、もう完全に死んだじゃん俺。こんな化け物と巡り合って助かる自信なんか無いぞオイ!


「グルル」


そして未だに俺の事見つめてるんだけど!絶対俺の事気付いてるだろ!気付いてなくてもその内気付くだろコレ!


「………」

「グルル」


お互いに見つめ合う。ザイロスの方は恐らく違和感を感じて。俺は緊張のあまり指の先すら動かせなくて。


「グルル」


ザッ。


「グルル」


ザッ。


ゆっくりと近づいてくるザイロス。


「グルル」


ザッ。


俺は決してその場から動けなかった。いや、動かなかった。

もし一歩でも動いたら、身じろぎ一つしたのなら、すぐさま気付かれて殺されると直感した。

別にズーみたいに本能で悟った訳じゃない。ただ、人が知性を得る為に捨てた野生。極僅かに残った生存本能が、全力で動くなと命じていただけだ。


「グルル」


ザッ。


もう手を伸ばせば触れる距離にまでザイロスはやって来た。

恐らく、ここが分かれ目だ。

ザイロスが俺に気付けば全てが終わる。俺が空気に徹して気付かれなければ生き残れる。

文字通りのデットorアライブ。


「グルル」

「……」


伝説の怪物との超至近距離での見つめ合い。

はっきり言って、生きた心地がしない。

だが、気を抜けば終わる。


そして、その時はきた。


「グルルルル」

「……」


ザイロスがゆっくりと口を開け、数多の命を噛み砕いてきた牙を見せる。

牙の長さは俺の頭と同じ程。人間なんて丸呑み出来そうな程に巨大な口が、ゆっくりと俺に迫る。


(あ、終わったな)


どうやら賭けには負けた様だ。

数秒後には身体が噛み千切られる未来を幻視し、短い人生だったなと思いを馳せる。


(存外早く、花ちゃん達と暮らす事になりそうだ)


流石にこの怪物に喰われたら、幾らイザナミ様でも俺を冥府から叩き出すのは不可能だろう。


(せめて痛いのは一瞬が良いなぁ)


死ぬ程の痛みは何度も経験しているが、流石に慣れる事は出来ない。死ぬ程、というか現実に死ぬレベルの怪我なのだから当然だが。


(本当、運が悪いな俺)


運勢にまつわるエクストラスキルを貰ったのだが、やはり俺の運の悪さは筋金入りらしい。

今まではそれでもなんとかなったのだから、ある意味では運の強さも筋金入りではあるのだが、今回は不幸の方に運勢は傾いたみたいだった。

諦めの思いと、この先の未来への逃避が心を占める。


しかし、やはり俺の運も捨てた物じゃないらしい。


「グガアァァァッ!!!」


突如として響き渡る咆哮。

ザイロスのモノでは無い。目の前の巨狼は、まるで「またか……」と言いたげな表情をしていた。……狼の表情なので定かでは無いが。

それでもあながち違っている様には思えない。


「グルル……」


ザイロスはまるで溜息の様な声で一声鳴いた後、咆哮のしてきた方へと振り向いた。

背中から面倒そうなオーラが大量に出ている辺り、妙に人間味のある狼である。


「ガルググ」


ザイロスの振り向いた先に現れたのは、四本の腕を持つ五メートル級の熊だった。


(一応、鑑定してみるか……?)


大きさだけならザイロスすらも上回る四本熊。外見だけなら熊の方がヤバそうだったので、気になって鑑定を使ってみた。


=======


死腕大熊しわんおおぐまレベル46


アクティブスキル

・破砕

・剛拳

・威圧

・四面楚歌


パッシブスキル

・強靭

・回復力中上昇


エクストラスキル

無し


======


ああ、コイツもヤバいわ。


(こんなのばっかかこの秘境は!!)


ザイロス程じゃ無いにしろ、十分にヤバい存在だった。

だって考えてみて欲しい。レベルは魔力を持った生物を倒す事で上がる。つまり、レベルが高い奴は、レベルに比例する数の生物を殺しているという訳で。

ザイロスにしろ四本熊にしろ、レベル1の俺にとっちゃ狙われた時点で即ゲームオーバーの強敵だ。

しかし、


(……とはいえ、ナイスタイミング!)


戦えば必敗の敵であったとしても、今の状況では嬉しい乱入者である。


(意識が熊に向いてる内に……!)


明らかにあの熊はザイロスに喧嘩を打っている。

レベルからして熊などザイロスの敵では無いだろうが、だからと言って無視する訳にもいかない筈だ。

熊にザイロスの注意が向いてる間に、気付かれない様に移動すれば助かる……と思う。

確実に俺の存在に気づかれたという訳じゃ無いので、戦闘でもして気が逸れればそのまま立ち去るかもしれない。そうでなくても、戦ってる途中に距離を取れば逃げ切れる筈だ。


(ゆっくり……!バレない様に静かに動け!)


ゆっくりと、そろりそろりと移動する。

本当なら全力疾走で逃げだしたいのだが、そうすると確実に気付かれるので我慢だ我慢。

亀の歩みの如きスピードでジリジリとザイロスと熊から距離を取る。

勿論、怪物同士の戦いに巻き込まれるのは御免なので、二体の方にも意識を向けている。


「グガガガ」

「グルル……」


今は丁度二体が睨み合っている所である。

熊は緊張した様に身を強張らせながらも、全身から闘志を滾らせ。

ザイロスは気怠げに尻尾を振りながら、目の前の敵に面倒そうな視線を向けて。

あまりに真逆の態度であるが、それは両者の余裕の違いに他ならない。


(そりゃそうだ。文字通りレベルが違い過ぎる)


方やレベル90オーバーの絶対的強者。もう一方はレベル46程度の弱者。

勿論、熊も普通の基準からすれば強者の部類に入るのだが、今回ばかりは相手が悪い。

巨狼は必勝を疑っていない。四本熊は一撃でも当てれれば儲け物。

これが、二体の態度の差の理由。


「クガガルル………グガアァァッ!!」


(いった!)


四本熊がザイロスへと突撃する。

ザイロスの態度が気に食わなかったのか、それとも睨み合いに耐えられなかったのかは分からない。

だが、これで戦いの火蓋が切られたのは確かだ。


「ガァァァッ!!!」


熊が名前の由来となった四本腕をザイロス目掛け振りかぶる。手先から何かのスキルの前兆か、淡い光が灯っている。

マトモに喰らえば城砦すら砕くのではという一撃を、ザイロスはただ眺め、


「……グル」


煩わしそうに前足を振るった。


斬ッッッ!!!


「……は?」


自分の状況すら忘れ、目の前の非常識な光景に間抜けな声が零れてしまう。

慌てて口を塞ぐが、幸いにしてザイロスには気付かれていない様だった。

その事実にホッと胸を撫で下ろすが、直ぐにそれ以上の混乱が頭を襲う。


(待て、今何が起きた!?)


あまりに信じられない事態に、思考がどうしても纏まらない。

少し整理してみよう。

熊がスキルを駆使して殴りかかった。ザイロスはそれを見て、無造作に前足を振るった。……ここまでは良い。

だが、


(何でそれだけで熊が千切れ飛んでんだよ!!?)


ザイロスがスキルを使った様子など無かった。それはつまり、五メートルを超える化け物熊を、ただの一動作で惨殺したという事だ。


(非常識にも程がある……)


熊が勝てるとは思っていなかった。だが、ここまで圧倒的なのは予想外だ。

怪物同士が戦っている内に少しでも遠くに移動する筈が、殆どその場から動けていない。


(クソっ!後は完全に運任せじゃねーかよ!)


心の中で舌打ちする。距離が取れていない以上、ザイロスがどう動くかによって生死が決まる。

絶体絶命。状況を表すならこれだろう。

人によっては神に祈る様な場面なのだろうが、生憎と知ってる神がアレだ。祈ったら最後、嬉々としてザイロスが気付く様に誘導してきそうだ。


(祈るとしたスキルだけど、アレって最悪の事態に殆どならないって効果だし……)


あくまで殆どなのであって、最悪な事態にもなる時はなるのだ。

そしてこの状況だと、相当な確率で最悪の事態になるだろう。


(どう動く、化け物狼……!)


出方次第ではエニグマを使う覚悟をしながら、ザイロスの一挙一動に注目する。


「グルル」


大熊を殺し、こちらを振り返るザイロス。

すると振り返ったザイロスは、キョロキョロと周囲を見回しながら首を傾げた。


「グル?」


すんすんと鼻を鳴らして、しきりに周囲に意識を向けるザイロス。


「……グルル……」


やがて諦めた様に首を落とし、千切れた熊の半身を咥えて何処かに行ってしまった。


「…………」


………。


「…………」


………。


「………ふぅぅー……た、助かったぁぁー」


ザイロスの姿が完全に見えなくなって暫くしてから、俺は大きく息を吐いた。


「あーびびった。寿命が十年縮んだわ」


助かったと分かった途端、安堵からか身体がドッと重くなる。

座り込んで全身の冷や汗を拭いながら、先ほどの出来事に思いを馳せる。


「……にしても、良く助かったな俺」


何故かは知らないが、ザイロスは俺の事を見逃した。

熊との戦い(というよりも一方的な虐殺)の後、こっちの方を向いたので俺を忘れた訳じゃない筈だ。


「……いや、あの反応だと、見逃したというより見失ったのか?」


しきりに周囲をキョロキョロしていたので、そっちの確率の方が高いかもしれない。

大して移動した訳じゃないのに何故と思ったが、その答えは風が教えてくれた。


「………ああ。匂いか」


風が吹いた事によって気付いたが、この辺り一帯が熊の血の匂いで充満していた。

ザイロスは気配が消えてる俺の事を匂いで追っていた様なので、血の匂いによって俺の匂いが紛れたのかもしれない。

そう考えると、熊様々である。


「……戻るか」


ザイロスとの遭遇によりメチャクチャ疲れたので、散策は終了して世界樹の元に戻る事にした。


「………あ、熊の肉ちょっと持って帰るか」


ザイロスが咥えていったのは千切れた熊の半身なので、半分程度がまだ直ぐ其処に転がっている。

食料すら危ぶまれる状況で、これを放置するのは勿体無い。


「ナイス熊。助けてくれた挙句、食料にまでなってくれるのか」


本当に熊様々である。

昨日、私のもう一つの作品の前書きで軽く宣伝してみたら、一夜にしてブックマークが三倍近くに...。

宣伝ってすげーと思った午後。

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