ついてないですよ
機種変してめちゃ戸惑ってます。
まあ、あんまり関係無いんですけど。
第四
「はぁぁ……」
大体何分ぐらい黄昏てただろうか。何で木なのに鉄よりも硬いんだとか、色々と言いたい事はあるけれど、そうゆう仕様だからと諦めるしか無い訳で。
文句を言ってもどうしようも無いのだから、切り替えて次の事を考えよう。
「エニグマねえ……」
そう。次に考えるべきなのは、くじ引きで手に入れた謎魔法。ヘルメス様の説明から、ある種のブラックボックスみたいな印象の魔法だ。
「……鑑定したら分かるかね?」
はっきり言って、あの説明を聞いた限りだと使う気が起きない。けれど、この状況だと自分の出来る事を把握しとかないと、この秘境で確実に死ぬだろう。
その場合、地球の冥界で雪やマタタビ、花ちゃんや駄女神と暮らす羽目になる。
いや、別にそれ自体は良いんだけど、あそこ、流石は死者の世界って言いたくなるぐらいには環境がヤバイんだ。駄女神と皆が暮らしている場所や、地球で言う所の天国に当たる場所は比較的マシなんだけど、それでも触れるだけで悶絶する程の激痛がする霧とか出るし、地獄やその付近なんて言葉に出来無いぐらいにエグイ環境なんだわ。しかも、幾ら発狂しそうな程の苦しみを味わっても、既に死んでるから死ねないって言う、拷問よりも嫌な状態になりかねないんだ。
流石に、まだ俺にはそんな所に行って暮らす度胸は無い。
「大丈夫って言われても、あの景色は見るだけで無理……」
花ちゃん達には、イザナミ様に頼めば何とかしてくれるって言ってたけど、周りがエグイ事になってる時もあって、その時の光景はグロ耐性が相当についてる俺でも無理。
「気は進まないけど、やるっきゃ無いか……」
鑑定したら地雷的な意味で絶望しそうだけど、死にたくないので結局はやった。
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謎魔法
魔法系のエクストラスキル。
原初の神、混沌神カオスが創作したネタ魔法。
カオス自らが混沌の権能を切り離し創造した魔法の為、神の権能の力を宿した魔法となっている。
魔法の対象をランダムで特殊状態に変える。
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「……」
うん、地雷だわこの魔法。
説明文ではかなり壮大な事書かれてるけど、これ結局ネタ魔法なんだろ!?
てかコレあれだろ、よくRPGとかで出てくるランダム効果の魔法だろ?だったらせめて効果の系統ぐらいは書けや!特殊状態とかアバウト過ぎなんだよ!
つーか、原初の神の権能とかマジでヤバそうな代物で魔法なんか創るな!混沌の権能でなる特殊状態とか想像出来無いから!
「使いたくねー……」
ゲームだったらランダム効果の魔法は結構面白いけど、現実だと何が起こるか分からない魔法とか絶対に使いたくない。
「……その前に、自分自身を鑑定してみよう」
この問題は一旦棚上げだ。エニグマは使いたくなくても、いざという時は使わないといけないだろう。そんな状況に陥る前に、俺自身の手札を全て知っておかなければならない。
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天野宗馬 レベル1
アクティブスキル
・鑑定眼
パッシブスキル
・無し
エクストラスキル
・謎魔法
・運命の輪
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「リング・オブ・フォーチュン?」
予想外な事に、俺にはエニグマの他にもう一つのエクストラスキルがあった。
「……ああ。これがヘルメス様の言ってた幸運って奴か?」
運を弄るとは言っていたが、どうやらスキルとしてカウントされるらしい。
「どんな効果だ?」
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運命の輪
所持者の星の巡りを操作し運勢を変動させる。
最悪の事態はあまり起こらなくなる。だがその変わりとして、所持者の望みを半分程裏切る結果が大半を占める様になる。
ごく稀にだが、所持者の望む事以上の幸運が起こる事もある。
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「うわビミョー……」
エクストラスキルの割に効果がアレ過ぎる……。いや、確かに最悪の事態はあまり起こらなくなるってのは助かるから良いけど、半分程望みを裏切る結果って何よ?中途半端だろそれ。運が良いのか悪いのか分かんねえよ。
……って、そう言えばヘルメス様もそんな事言ってたな。幸運の様なそうじゃ無い様なって。何でだっけ?理由は確か……
「イザナミィィィ!!!」
思い出した、あの駄女神の横槍だ!くそッ、本当に碌な事しねえなオイ!?
「だあーもうっ!何処までおちょくれば気が済むんだあの駄神は!?」
その目的が見て楽しむ為ってのがまた腹立つ!
とは言え、それに逆らう事が出来無いのも事実な訳で。ここはエクストラスキルを手に入れる事が出来たと考えた方が建設的だろう。
最悪の事態にはならないらしいしな。
そう考える事にして、目の前ウインドウを注視する。
「うーん……」
鑑定してみたはいいものの、はっきり言ってピンとこない。どっかのラノベやゲームみたいにステータス的な奴が出れば良かったんだけど、あいにくラーマーヤーナの世界にはステータスなんて存在しない。目の前のウインドウも、スキルやレベルは載っているけどHPとかは書いて無い。単純に俺の情報を映しているだけだ。
「レベル1なのは当たり前だけど、ここだと絶対ダメだろ……」
レベルなんて概念が存在しない世界で生活していたのだから、レベル1なのは当然だ。それでも、確実に危険であろう秘境でこのレベルは不味い。余裕で死ねる。
もちろん、この場所が秘境っぽいだけで実は大して危険じゃない可能性もある。でも、それは流石に希望的観測が過ぎる。幾らヘルメス様に運を弄って貰ったからって、そこにはあの駄女神の介入があったのだ。エニグマ同様に地雷な気がしてならない。
「やっぱり、問題はエニグマなんだよなぁ……」
この状況と場所で、俺がまともに生きれるかはエニグマに掛かっていると言っても良い。レベルが1で使用出来るスキルが鑑定眼しか無い以上、もしもの時の手段はエニグマしかない。
全力で使用は遠慮したいけど、手段が一つしかない以上は絶対に使用する事になる。だったら、確認出来る内に確認しておいた方が良い。……いや、ランダム効果の魔法なんて確認する意味が無い様な気もするけどさ。
対象はどうしよう?世界樹……は不味いか。やっぱり自分しかないよなぁ。
「……よし、やるぞ。エニグマ!」
覚悟を決めて、エニグマを発動した。
身体の中から何かが抜けていく感覚と共に、僅かに自分が発光した。
【状態・気配消失:百分】
目の前にこんな文字が浮かんできた。どうやら、エニグマの効果は目の前の小さなウインドウによって自動で分かるらしい。百分というのは、恐らく特殊状態の持続時間だろう。
……それにしても、気配消失ってまた変わった状態になったな。いや、この状況でスカウト系の状態は結構助かるんだけどさ。
どうやらこのエニグマ、本当に色々とランダムらしい。枠組みの様な物は存しなく、特殊状態だったら何でもありの可能性が高い。
「流石は神様の権能。良い感じにデタラメだ」
カオスとかいう神様が権能を元にして作ったネタ魔法らしいけど、それでもベースは神の権能だ。その効果は下手な奇跡よりも上だろう。
「やっぱり使いたくないなぁ、っと!」
世界樹から降りながら、改めてエニグマの使用に拒否感を覚える。リング・オブ・フォーチュンの効果で最悪の事にはならないと思うが、それでも効果がランダムという事には抵抗がある。
「まあ、今回はエニグマの恩恵を大人しく受けておくんだけどな」
折角の気配消失だ。効果が続いてる内に、出来る限りこの場所の情報を集めたい。
「鑑定眼のスキルもあるし、今の俺って理想のスカウトなんじゃね?」
気配消失によって気付かれず、鑑定眼を使えば相手の情報も分かる。正しく理想の斥候だろう。
「一時的とは言え、理想の斥候になれたんだ。効果が続く限り、とことん調べ尽くしてやる」
そして俺は駆け出した。
何故かこの作品は長文で駆けない。不思議。