第六話 第七部 押すなよ、絶対に押すなよ。
「のーんびーりー。」
目黒はプカプカと浮き輪をかぶって流れに身を任せていた。なんともほのぼのした感じなんだろう。
「美幸ちゃん泳がないの?」
「私は泳げないー。」
撫子が水中から出てきて髪の水を首を振ってはらった。撫子の縛っていない髪は綺麗に輝いていた。
「なーでしこ!」
バシャァ!
「きゃっ!」
藤浪が撫子に水をかける。
「やったね!!」
水かけっこがはじまった。その光景をのんびりぷかぷかと目黒が見つめていた。そして俺たちはというと…。
「おい拓斗、学。いいか、押すなよ。絶対に押すなよ。」
「完全にフラグじゃねえか。」
ポンッ
「ためらいないなおい! うわああああああああ!!!!」
生田がポンと磯見の背中を押し、ウォータースライダーの中にすっ飛んでいった。この急傾斜滑り台からトンネルになっており、先が見えない怖さが体感できるウォータースライダーだ。そして最後にはジャンプが待っている。なんつう怖いスライダーなんだ。
「生田、先どうぞ。」
「いやいや、白羽根お前がいけ。」
俺たちは譲り合っていた。しかし並んでいる順序として生田が先にいくことになった。
「ぎゃあああああ!!」
バッシャアアアアン!
すでにそのころには下で磯見が飛んでいた。そしてものすごい勢いで水の中へとダイブしていった。それを見た俺と生田はぞっとした。
「や、やっぱ止めようぜ。」
「断る。」
ポン
「ふざけんなよ、おいぃぃぃいいいいいいい!!!!」
生田の悲鳴がトンネルの中でこだました。さて、俺はここから帰りますか。と思ったら隣の係員のおじさんがにっこりと笑った。
ザッパアアアア!
あ、生田が到着していた。これはまずい、逃げられない。
「二人のかわりにおじさんがおしてあげるよ。」
「えっ!? ちょっ!?」
係員のおじさんは俺の背中をチョンと押した。そして重力が無くなるかと思うぐらいの急な斜面を滑っていった。
「んなばかなぁあああああああああ!!!!」
目の前が真っ暗だ。途中で上が透明になってどの位置かがわかる。しかしすぐに真っ暗になってまた斜面が続く。俺の体がぐわんぐわんと動いていく。そして光が見えた。もしやこれってジャンプ!?
シューーーー バシャアアアアアン!
「ざまあないぜ。」
「かわいそうに。」
俺はダイブしたあと顔をあげてすぐに水から上がった。なんつう怖いスライダーなんだ。
「いやああああああ!!」
今度は別のところから女性の悲鳴か…。いったいどんなアトラクション…。
「おい、あいつら三人とも何乗ってるんだ!?」
生田が指をさす。その方向にはゴムボートに乗るウォータースライダーがあり、その中には撫子、目黒、藤浪がいた。
「ぎゃあああああ、たすけてえええええ!!」
あのすさまじい悲鳴は目黒か。思いっきり藤浪に抱きついている。その藤浪も怖さで顔が恐ろしいことになっている。
「ばかっ、抱きつくなバランス崩れる。うわああああああ!!」
今度は藤浪まで叫び始めた。あれ? 撫子は怖くないのか? 先頭でなにやらバランスを調整しているように見えるが…。
「…………。」
なにこれ、俺の彼女ってもしかして勇者? おそろしく無言なままゴムボートのバランスを整えている。俺たちはその光景をみて唖然としていた。




