第五話 第三十四部 夕日と共に、撫子のキス。
「またいらっしゃい。」
俺と撫子はおばあさんに手を振りながら店を後にした。俺たちは夕日に照らされている線路沿いの道を歩いていった。
「買ってくれてありがとうね。」
そういって撫子は笑顔を見せた。その笑顔は俺のためだけにあるかのような、そんな可愛らしさが見えた。いや、この表現はいろいろと変な気がする。けど…。そのぐらい可愛いのだ。
「ねぇ、こっちの奥の方いくと、どんなのがあるんだろうね。」
「そうだな…海とかありそうだよな。あと山もいいな。」
俺と撫子は次どんなところでデートするかをお話ししながら歩いていた。それにしてもどうして俺と撫子はこんな短期間で付き合うことができ、ここまで仲良くなってきたのだろう。すごく嬉しいのは本音だ。でも…それはよかったのだろうか。いやいや、それを言うなら生田たちだってそうだ。運命的な出会いはいつ起こるかわからない。それが今なんだ。そうだ。
「ねえ拓斗、なんか考え事してるけどどうしたの?」
俺の目の前に立って後ろ向きに歩きながら顔を覗き込んできた。
「いや、撫子と会えたのは運命なのかなーって。」
俺は顔を逸らしながら照れていた。撫子はフフッと笑って俺の横に移動して手をつないだ。
「ねえ拓斗。」
撫子がちょっと震えた声で俺を呼んだ。
「どうした撫子。」
すると撫子は急に俺の左手の袖を掴んでグッと引き寄せてきた。俺はその引っ張られる方向に重心が移動する。そして撫子が背伸びをして俺の顔に近づけた。
チュッ
え? キス…したのか? 俺はキスをされたのか? 時がゆっくりになる。撫子がまだ俺の頬に口をつけている。そしてゆっくりと顔を離していって背伸びを止めた。
「……えへへっ。私からキス…しちゃった。まだ口は勇気が出ないから…頬に。」
撫子は自分からキスをしたのに赤面してしまった。
「…撫子。」
俺は撫子に近づいて抱き寄せようとした。だけどその腕をスルッと抜けて小走りで前の方へと移動した。
「が、頑張って勇気を出したからっ…これ以上は恥ずかしいっ!」
そういってまた走っていった。その後ろ姿を少し見た後、ハッと気づき急いで撫子を追いかけた。夕日に照らされた撫子はよりいっそう美しかった。
今回は輪遊さんに描いていただきました!ありがとうございます!
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