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第五話 第十部 誰が見ても、上手すぎる。
「すげぇ…。」
俺の後ろから声が聞こえた。生田が撫子の絵を見ていた。その顔はやはり、何か取り込まれてしまったかのような様子だった。
「なんだよこれ…すげぇ。」
「お前、すげぇしか言ってないだろ。」
「だって表現できねぇんだよ。」
俺は少々あきれて自分の絵に取り掛かった。
「ぷぷぷ、お前の絵。」
「人のこと言えるか!」
そういって俺はサササッと描き始めた。俺は六道を見ては描いたりしているのだが、藤浪がチラッと見えた。そして書き始めてまた見ると今度は磯見がいた。また目を離している隙にクラスメイトの何人かが見ていた。おいおい、いくらなんでも集まりすぎだろ。
「これは…すばらしい…。」
ちょっと! 先生まで見てるってどういうことなの! でもこれが撫子のすごいところなのだろうか。
「終わったよ。」
そして速い! いくらなんでも速すぎるだろ。完成した絵を見ると…。まあ、鏡を見ているのと同じ感じだった。
「どう?」
「なんというか…俺が二人いるみたいだ。」
「ありがとっ。でも本物の拓斗の方が好きだよ。」
「やめろ、照れるだろ。」
俺はややテレながら撫子を見て描こうとした。
キーンコーンカーンコーン
…………時間になってしまった。




