第一話 第五部 弁当、そして話題。
「すまねえ、今日部活会があるから昼一緒に食えねえわ。」
生田が声をかけてきた。今日は部活参加者が全員昼休みに集まる予定らしい。周りの人たちがどんどん席を離れ、教室から出て行く。そして…残ったのは俺と六道だけ。あれ?これって結構チャンスなんじゃないか?今なら二人で弁当を食べることができるのでは…。俺は勇気を振り絞って六道のところに向かった。
「なあ、一緒に弁当食べないか?」
「えっ?」
六道は驚いた様子をした。
「だってさ、いまなら教室に俺と六道しかいないじゃん。だったら弁当一人で食べるの寂しいだろ?」
「私…いつも一人だよ。」
「えっ?」
俺は寂しそうな様子になっている六道をみて自分の心が辛くなってきた。
「だったらさ、なおさら一緒に食べたほうが良くない? いろいろお話しすることもできるしさ。」
俺は自然と声をかけてきた。それなら一緒に食べたほうがなおさら良い。
「……うん、食べよう。」
そういって六道はうれしそうに俺の机のところに弁当と椅子を持ってやってきた。六道は椅子に座ると弁当をあけた。そこには綺麗に敷き詰められた弁当があった。
「おお! もしかして自分で作ったの?」
「うん。」
「す、すごいな。」
俺なんて自分で作ったためしがない。本当に親に感謝だ。俺もいつか弁当を作って六道に食べさせたい。
話題がなくなってしまい、少々無言の食事となってしまった。何を話せばよいだろう、この子の楽しんで話せる話題…そうだ。
「そういえば、昨日の買った漫画はどうだった?」
俺がそういうと彼女は驚いた様子をすぐに見せた後、楽しそうに話しかけてきた。
「あ、うん! とてもよかったよ!」
「おお、俺も早く読みたいなあ。」
「そうだ!」
そういって彼女は鞄の中から昨日の漫画を取り出した。
「私、もう読んだから借りていいよ!」
彼女はニッコリと本を手渡ししてくれた。