第一話 第四部 帰る約束を、頼みました。
「あのさ、俺と一緒に登校していて大丈夫か?」
俺は少々気になって六道に聞いてみた。
「え? あ、一緒にいるから勘違いされないんじゃないかってことですか? 逆に白羽根くんも大丈夫なの?」
「あ、えっと…。たぶんクラスの中で変な誤解生まれると思う。」
「そっか、わかった。」
そう言って六道は先に歩いていった。バカ、俺は一体なにをやっているんだ。こんなめったに無いチャンスを台無しにしてどうするんだ。ここは一緒に行くべきだろう。でも話題にされてしまうと彼女も大変だ。なら…。
「まって、六道。」
「何?」
俺は思い切って言うことを決めた。
「帰り、一緒に帰らないか? ここの河川敷の階段のところで待ち合わせれば。たしか六道さんって部活何もやっていなかったよね。うちのクラスほとんどが部活入っているから見られる確率も格段に減るとおもうよ。」
「えっ…うーん。わかった、いいよ!」
やった、一緒に帰ることが決まった!
「それじゃあ、また後で!」
そう言って六道はニコニコと歩いていった。いや、こっちのほうがニコニコしてしまう。むしろニヤニヤがとまらなくなってしまう。何でだろう。やっぱり俺はアイツのこと…
「こら、何ボーっとしているんだ!」
バシン!
「あがっ。」
俺は…いつの間にか授業中呆然としていたらしい。それもそのはず、ずっと俺はアイツのこと、六道のことを考えていたからだ。六道と席はそう遠くないが顔を合わせるようなことはめったに無い。
というか今、大事なことを忘れていた。帰りの話題、どうすればよいだろう? 最近のニュース? いやいや、そんな堅苦しい話しはあまり好きそうではなさそう。じゃあなんだろう。まてよ、アイツの趣味を聞けば俺もその趣味を調べられることができるんじゃないか? よし、今回はいろいろと聞いてみることにしよう。
「おい、白羽根! またボーっとしてるのか!?」
ベシン!
「いだっ。」
さっきより強く頭を教科書で叩いてきた。さすがに授業中に呆然としているのはダメだ。周りからは笑い声が聞こえる。ちょっと恥ずかしかったが、放課後六道と一緒に帰れることを思い出すとそんなことも忘れそうだった。