第三話 第五部 弁当食べて、元気になって。
六道のお箸を見る全く動いていない。手をみても止まっている。やっぱりさっきのことを気にしているのだろうか。ここは俺が声をかけるべきだろう。しかしどうやって? 六道の気持ちを前みたいに戻すためには…そうだ。
「なあ、昨日出た新刊どうたった?」
俺が言うと六道は腕をピクッとさせて小声で、
「面白かったよ。」
と答えた。まだそう簡単に気は上がらないか。そうしたら…。
「六道。」
「…なに?」
六道がこっちを向いてくれた。まだ目に少しだけ涙が残っている。俺は箸で自分の弁当の卵焼きを取ると、六道の口に近づけた。
「はい、あーんして。」
「えっ?」
六道は少し頬を赤く染めた。涙が止まった気がした。六道は自然に口をあけた。そこに俺が卵焼きを入れると口を閉じて食べてくれた。
「どう?」
六道がモグモグと口を動かす。ゴックンと飲み込むと六道は少し笑顔を取り戻して答えた。
「すごくおいしいよ。」
「ならよかった。今日は俺、手作りで頑張ってみたんだ。」
「そうなんだ!」
よかった、いつもみたいに戻ってくれた。きっとあいつらが戻ってきたらまた六道も悲しくなってしまうだろう。だから今のうちに話せることは話しておこう。
「あのね、私も頑張って作ったの。」
「まじか! 六道の弁当はいつも綺麗だけど、もしかして自分で作ってるの?」
「うん。もしよかったら私の卵焼きも食べる?」
「もちろんいただきます。」
俺は口をあける。そこに六道の作った卵焼きがススッと入っていく。俺が口を閉じるとほんわりと甘い味が口の中いっぱいに広がった。
「うおっ…うめぇ。」
「本当!? よかったー。」
六道はホッと一息入れた。それはそうだろう。食べてみておいしかったかどうかは気になるところだし。
「うわっ、六道の弁当綺麗だなあ。」
「俺も欲しいぜ…ちくしょう!」
生田たちが俺たちの周りによってくる。六道を見るとこれにはニッコリしていた。やっぱり、六道は普段の日常のように過ごしたいのだろう。俺は笑顔を返した。




