第一話 第二部 藍いバラのような目をしたあの子を見て、恋に落ちました。
「あ、どうも。」
俺は軽く会釈をしたが、六道はこちらを見向きもせずに慌てふためいていた。一体どうしたのだろう。
「あ、えっと。」
彼女は視線の焦点をあわせずに話しかけてきた。そんなに動揺しているのか。ここは何を言うべきなのか。すると俺は思わず彼女の左手に持っていた本を確認した。そうか、これ最後の一冊なのか。頼めばいつでもやってくるものだ。ここは彼女に譲るべきだろう。
「えっと、その本最後の一冊ですよね。そっちが先に買って大丈夫ですよ。」
すると彼女は驚いた様子でこちらを見てきた。やっと焦点があった。
「あ、でも私、こんなのを趣味にしているわけでは。別にオタクではありませんよ。」
あれ? もしかして話しかみ合っていない? 俺の言葉通じていなかったのだろうか。
「すみません。私まいっちゃって。えっと、この趣味があるってこと学校の人には内緒にしてくれますか?」
彼女は必死に問いかけてきた。隠すことなんてひとつも無い。
「大丈夫だよ。それに俺も同じ趣味だと思うし。俺もその漫画が目的で本屋行ったんだ。」
「えっ?」
ようやく話しが理解できたようだ。最初はどうなることかと思ったが、なんとか通じてよかった。
「すみません。え、でも私が先に買ってもいいのですか?」
「かまわないよ。予約とかしちゃえば必ず届くから。」
「本当に申し訳ありません。」
そういうと彼女はペコペコとお辞儀をした。なんて礼儀正しい人なのだろうか。
「えっと、確か同じクラスの…。」
「あ、俺? 白羽根拓斗だよ。」
「白羽根くんね、よろしく。私は…」
「六道撫子さんでしょ?」
「えっ。私の名前覚えててくれたのですか。」
彼女は目を細くして驚いた。そんなに驚くことなのだろうか。
「そりゃあ同じクラスだから覚えてるに決まってるじゃん。」
「そ、そうなんだ。私影薄いからてっきりわからなかったのかと…。」
「いやいや、それはないよ。」
「ならよかった…あ、本買ってきますね。」
そういうと彼女はテッテとカウンターまで移動した。すごくやさしい人だ。彼女はニコニコしながら支払いを行っていた。俺は…特に他には買いたいものがないので、新作何が出ているか確認しよう。
「あの、白羽根くん!」
支払いを終えた六道は俺を呼んだ。
「今日はありがとう! 明日も学校でね!」
俺は元気な表情と笑顔にドキッと来た。藍いバラのような目をした彼女はどこかひきつけられるものがあった。学校で見る彼女とは全く別のようなものに感じられた。もしかして…。これが恋なのだろうか。
彼女は本屋を出た。その後もずっとドキドキしている。彼女のことで頭が一杯になっている。俺は恋に落ちてしまったのだろうか。




