表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

邂逅は、永遠の別れの合図

大変お待たせしました。


いろいろ諸事情あって一ヶ月間があきました。

強いて言うなら定期考査なんてもう知るか。


ごめんなさい。どうぞ



「……ユーリなの?」



約一週間ぶりに、この地に柔らかな風が通り過ぎました。


今にも泣きそうな顔をしてこちらを見下ろす彼を見上げて、私は風に花びらをそよがせます。


生まれ変わったこの身体と同じ蒼の瞳を持った貴方は、もう気付いてしまったようです。



「―――っ。ユーリの、匂い……」



私の香りを嗅いで、声が詰まった様子の彼。



ルーク。私は貴方のことが好きすぎるあまり、普通ではありえない蒼いユートキンスの花に生まれ変わってしまった見たいなの。



再び吹く風。香りが、舞う。



我ながら恐ろしい執着心だね。生への執着はあまりなかったのに、貴方への執着心は人並み外れてあったみたい。生まれ変わって初めて気づいたよ。驚きだわ。



まるで私から発する香りに酔うように吐息を漏らす貴方をみて嬉しさを覚える自分に、ああ私はこんなにもルークのことが好きだったのか。と懐かしさとほんの少し哀しさを感じました。



おそるおそるこちらに手を伸ばす彼の、血に塗れていても優しく温かい指先に、懐かしさのあまり人間なら泣きだしている所でした。



「……ユーリ。ユーリだよね、逢えた。ようやく、逢えた―――!」



ぽろぽろと涙をこぼしながら震える貴方。


縋りつくように私へ頬を寄せて私の花の香りを吸い込みます。



「逢いたかった。本当に―――! ユーリ……!! 」 


私の花びらを散らさないように気をつけながら、それでも激しい想いをぶつけてくる彼。

その瞳にまた光が差し込まれたのを見て私は安堵しました。


「ユートキンスの花に生まれ変わってたんだね。ユーリこの花好きだったもんね。生まれ変わって、ここで―――ここで俺をずっと待ってたんだね。」



……うん。私は彼が私がいなくても幸せになってほしいと思っていながらも、心の底では貴方に逢いたくて、ここに生まれ変わっていたのかもしれません。



「ごめんね。俺がもっと早く来ていれば、ずっとここで1人寂しい思いなんかさせなかったのに…! ごめんね、ユーリ。1人にして、ごめんね――――!」



でも、と彼は付け足す。



「俺も、ユーリがいないこの4年間。すっごい悲しくて、寂しかったよ―――。」



それはまるで幼い子供が母親に縋るようで、私は彼を1人残して逝ってしまったことへの罪悪感をまた感じました。



私がいないとまるで駄目な年下の君。



子供扱いすると怒るけど、今みたいにそれを武器にしてくる君のその声、表情に私はめっぽう弱かったのです。



くしゃくしゃに顔をゆがめて泣き笑う貴方に、私は思わず胸が打たれました。




もう昔のようには戻れないけれど、せめて、もう一度。



そんな分不相応な願いが生まれました。



人間だったころの、あの愛し合った時のように、少しの間だけでいいから戻りたい。と思ったのです。




逢いたい。



貴方と、本当の意味で再会したい―――。










大地に吸収された彼の血が、乾き切った生命の炎に息吹をもたらす。



巨大な魔力が含まれたその血は、花畑全体に広がって生命たちの魔力をこの上なく満たしていきます。



それは私の身体も例外ではなくて。


一時的だけどこれ以上ないくらいに自身の魔力が高まった私は次の瞬間、ぐんと視線が高くなったのを感じました。



光と温かな風が私を包み、それに呼応するかのように花畑の花びらが一斉に風に舞い上がる。



「あ…………あ………。」



花が綻ぶように、咲き誇るように、



懐かしい、人間だったころの感覚と似たようなそっくりの感覚です。



髪が、腕が、足が、伸びて、まるで前の私のように。でも、どこか違うように。



容を創り出して、貴方の瞳に映り込む。



やがて光が収束し、風も止み始めた時、私はゆっくりと目を開けました。



「……ルーク。」



喉が震えて、口が動く。

約四年ぶりに出す自分の声は恐ろしいほどに震えて、響きました。



目の前には呆然とこちらを見るルーク



その姿に私は思わず笑って。



「久しぶりだね、ルーク。」




感極まったルークが、それから私を無我夢中で抱きしめ、贖罪をし、愛を囁き、もう二度と離れたくないとそのまま私を彼の国へ連れ去るのを少し渋りながらも許容して、貴方の腕に囲われて遙か高い空を飛びながら、私はふと笑みをこぼしました。






ねえ、ルーク


貴方はまだ気づいてないかもしれないけど。



前世人間とはいえ今はもう私は色が少し珍しいだけの只の花です。


この人間のような姿は魔力をルークからもらったことで一時的に花の妖精になれた状態なのです。


寿命も人間に比べればほんの微々たるもの。



また、近いうちに私は貴方をおいていってしまうでしょう。



貴方はまた悲しむかもしれません。




それでも



それでも、前回の時のように自分勝手な死に方をして貴方をおいていくよりは、なにか貴方のためにできることがあるんじゃないかと思うんです。



いつまでもユーリという亡霊にとりつかせてしまうのは申し訳ないと思うけど



でももう、これで最後だから


この生が終わったら、私の魂は元の世界に帰るから。




最後だけ、私に甘い夢を見させてください。




辛く苦しい記憶ばかりだったこの世界の、最後の心残りである貴方の幸せを、祈らせてください―――。



次回、ユーリの前世時代の回想入ります。

ここで終わらせてもよかったんですが一応続けます。


詳しくは活動報告で、そこで更新停滞の謝罪という名の言い訳もしますw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ