表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

死への渇望と、届けたい想い。

御無沙汰です。ちょっと流血表現があります。



まあもちろん、声なんて届くはずもなく。



「―――――っう―――…」




次の瞬間にはかつて私が愛していた人の腹部に深々と短剣が突き刺さっていました。





『ルーク!!』



一瞬息をつめた彼は、数秒の間身体にそれを突き刺したままでしたが、一呼吸置いた後ぐっとそれを抜き出しました。



遠目からでもわかる、この淡い色で満ち溢れた花畑には似合わぬ、異様なまでに紅いそれ。



抜き出したことで彼から決壊した堰きとめのような紅がおびただしく流れ出てきました。



私は、ただただそれを呆然と眺めることしかできません。




うっとりとした表情を浮かべている彼は、死を待ち望み、愛する只一つのものを渇望し、そのために命を差し出そうとしたのです。




「ユーリ、ユーリ、ユーリ」




彼から流れ出た血が、ここ一週間日照りで乾き切ったこの土地に染み込んでいきます。


むせ返るほどの甘い匂いのする彼の血。




私は、やってしまった。と激しく後悔しました。

己が前世でやったことは、最悪の結果しか招かなかったと。





しかし、彼はいつまでたっても倒れる気配がしませんでした。

それどころか、流れ出た彼の血がまるで蒸発したようにまた肌に吸い込まれて傷を見る間に修復していきます。




私は思わずホッとするのと同時に、彼の血に流れる膨大な魔力はどんな傷や病も癒す万能薬であったことを思い出しました。




しばらくして、痛みが引いて行くのがわかったのでしょう。閉じていた眼を開けた彼は己の傷が瞬く間に癒えていくのを見て、絶望とも悲しみともあるいはそれをごちゃまぜにした表情を浮かべ








「あ……ああ―――――――――あああああああ!!」






ドスッ ザクッ ブスッ





突然発狂したように、何度も何度も、刃物で自分を刺し続けました。




『―――!?』



あまりのことに、声が出ませんでした。



何かに取りつかれたかのように自分の身体を傷つけ続ける彼。



やめて、やめて!!




彼の狂気に、私という存在を切望するその姿に、生前自分が見てきた彼とは明らかに変わってしまったなにかに、恐怖さえ覚えました。







「こんな、ときまで…………なんで、なんっで!」




真っ赤な血潮が空中に踊るように飛び散って




「ユーリが死んで、もう生きる希望など欠片もないのに!!」




傷は現れては消え、現れてはまた消えていく。





「それでも俺は、俺の邪魔をするのか!!」








「うわああああああああああああああああああ!!!!!!」







救えなかった。


助けられなかった。




守るといったのに。




一生守り愛すると、きみに誓ったのに。




ただその悔しさが、僕の不甲斐なさが後悔と罪悪感になって身をえぐる




僕の目の前で、すり抜けるように逝ってしまった。



僕のせいで。




死ぬべきだったのは自分。




それなら死のう。




どんな罰でも受ける。



それが罪だから、甘んじて受ける。




その先で君に逢えるなら



ユーリの笑顔に逢えるなら。




地獄に堕ちてもいい。逢って抱きしめて、キスがしたかった。




でも、死ぬことも許されない。



相変わらずこの血は、魔力は、この死の選択を拒んで邪魔をする。





死にたくても死ねない



それがこの罪の罰なら………










ユーリ。本当に君は――――







もう、どこにもいないの――――?











――――――いるよ。




気づけば、そう答えていました。



届くはずのない声。わかっていても応えずにはいられませんでした。



ここにいる。貴方をずっと見てる。見守ってるよ。



だから、元気だして。前を向いて。




ルークのこと、ちゃんと覚えてるから。







忘れないよ――――。




少しでも、ほんの少しでもいいから。この想いがルークに届けばいいのに……










「………ユーリ?」



ピタリと、時間が止まった感じがしました。



「そこに、いるの―――?」



自分を傷つける手を、ようやく止めて。血まみれになった彼はまた泣きそうな、か細い声で“私”に話しかけました。



今、私の声が、届いたの、で、しょうか―――?




「ユーリ―――! いるの?」



呆然と立ちあがったルークはよろよろと歩き出しながらこの花畑を見回し始めました。




「ユーリユーリユーリ。どこにいるの? 声をだして。」




どうしてだか、さっぱりわかりませんでした。


さっきまでどれだけ叫んでも届かなかったこの声が、どうして今彼に届いたのか。


でも、今それはどうでもいいことです。


半信半疑、恐る恐る、私は声にならない声で呼びかけました。



「…………ルーク?」




バッと、彼がこちらに振り向きました。




「ユーリ!!」



泣きそうな顔をさらに歪めて、一瞬でこちらに飛んできた彼は一心不乱に花畑の花々をあさり、



「蒼い、ユートキンスの花……? 」




とうとう私を見つけました。



ようやく再会を果たしました。

本当はもうちょっとこの先まで書きうpしたかったのですが、作者が書いてる時間的に遅くなりそうだったのでここまでにしました。

一区切りつけませんでした。ごめんなさい。

 

石とかは投げないでくれるとうれしい……です。でも甘んじて受け入れます←


誤字脱字等などがあったらすみません。

ルークの一人称が途中で変わっている点については誤字ではないのであしからず


ご感想もよければお待ちしています。

もらえたら感極まって更新スピード上がります(多分←


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ