命の危機、そしてある種のフラグ
短め短め
それから一週間ほどたったころでしょうか。
ここ数日日照り続きのお天気の下で、喉が渇いて仕方なかった私はいつもよりちょっと萎れていました。
あづ~い……。水が欲し~い。日差しがキツすぎる――――。
雨が降ることを切実に望みます。
私が咲いている付近にあった小さな池はこの日照りでとっくにカラッカラ干上がっているのでもうこの身体に入ってくる養分はほぼありません。光合成できないよ。
きつすぎる日差しは、ただでさえ少なくなっている私の水分さえも根こそぎ蒸発させて持っていきます。
あー。このままでは死んでしまいます。
前世の記憶からこの地域一帯は確か温暖な気候でこんな灼熱乾燥地帯ではなかったはずです。日差しはあったかくて雨も適度に降るという植物にはパラダイスな場所のはずなのに、ここ数日は一体どうしたんでしょうか。
私が現在生えている場所はとある国の山の中腹くらいにぽっかりとあいた空間にあるまあ可愛らしいお花畑で、こんな状況は他のお花さん達も初めてらしくみんな一様にぐったりしております。
ああ、早くこの状況を改善しないと私もみんなも枯れてしまいます!!
今世最大の危機です。
――――――ガサッ
そう悲観してよりいっそう俯いていると、ふいに不自然な音が響きました。
ん? なんでしょうか。
遠くに聞こえたその音は、そこから序々にこちらに近づいてきています
よくよく聞けば草を踏み分ける足音のようです。
しかし、この音の様子からみるとどうやらこの山に住んでいる動物じゃありません。
この山に住んでいる獣類の動物たちはみんな四足歩行なのでバラバラの足音が4つ聞こえてくるはずなのに、今回のこれはふたつしか聞こえてきません。おそらく二足歩行動物です。
人間、でしょうか。
こんな辺鄙なところに珍しいものです。いや、生前の私もよくここに通ってたんですけどね。
しかもそこからにじみ出てきている魔力が半端ないです。植物は魔力に敏感ですからヒシヒシとなぜかうねりまくっている魔力をこれでもかと感じます。
他のお仲間さんも心なしか震えているように見えます。怖いですよね、確かに。
――――――ザクッ、ザクッ
大きくなっていく足音
序々に匂いもわかってきました。
あれ。なんだかとっても覚えがある様な匂いです。なんでしょう、とっても懐かしい匂いです。
………あるフラグが立った気がします。
いやいやまさかそんな馬鹿な。
ここはあの国からだいぶ遠いし、もう彼のような身分の人が簡単にこれる場所じゃないですよね?
いやでもこの香りは確かに彼の匂いです。
いやでも彼の香りにしてはいつもより少し生臭く感じます。
いろいろ必死になって考え込んでいるうちに、ついにその足音はすぐ近くまでやってきました。
足が踏み分けたことで香る草の匂いが花の蜜の匂いに変わった時、その足音はピタリととまって
「ああ、懐かしい―――。何も変わってない………。」
「ここに来るの、何年ぶりかな。」
ねえ、ユーリ?
ああ。
その記憶より幾分低くなった声を聞いた瞬間、前世以来の、今世で初めて感じる、世界が揺れる音を、私は聞いてしまいました。
なんで なんで なんで
なんで貴方がここにいるんですか。
どうして
死んだ私の名前を呼ぶんですか――――――。
こんなこってこての王道モノに多数のアクセスありがとうございます。
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