無題1
気が付くと、私は檻の中にいた。
真っ暗で何も見えない。
――――ここは、どこ?
暗闇に目が慣れてくると、黒い人影が目に付いた。
「あなたは、だれ?」
「今のあなたには、私が誰だか知る必要はないのですよ。」
礼儀正しい口調の低くて荒々しい声が聞こえた。
――――どうして、私には必要がないの?
体感で何時間か経った。
立っているのが疲れたから、どっとそこに腰を下ろした。
それから、目を閉じて考えてみる。
――――私は、どうしてここにいるのだろう?
学校にいたのは私だった。
まるで表情がなく、うつむいている。
重い足取りで向かうのは部室。
部員が全員木を切っていた。
私は自分の仕事に付く。
――――独りだ。
ふと、手のひらを見る。そこには、こう書いてある。
『お前は必要とされていない
何調子乗ってんの?
どうせ目立たないのだから、
無理しなくていいんだよ?
バーカ。お前なんか
死んじゃえばいいんだ。』
正真正銘私の字。
私への、戒め。手のひらを見て、抑制している。
私が、私であるように。
私が、泣かないように。
それが、私。
言いたい事言えないで、言わないで、
周りに合わせて、顔色うかがって。
自分が前に出ても、みんな褒めてくれない。
そんなことを考えながら、私は今日も仕事を行う。
同学年の子は楽しそうに話している。
誰も構ってくれない、私だけの世界。
誰か助けて。私を連れてって。
はっ。
いつの間にか寝ていたらしい。
私は泣いていた。辛かった。
だけど、何で泣いているのか分からない。
「いい夢は見れましたか?っと……。
あなたは何故泣いているのですか?」
「あんな世界、どうでもいいと思ってた。
私がいなくても動く世界だって思ってた。
だけど、そんな世界にこうやって泣いてる。
まだ、絶望してない。私は生きてる。
檻から出して。私は……。」
私は、言うのを戸惑った。
そして、唇をきゅっと閉じてから、言った。
「逃げたくない。」
「そうですか。それなら結構。
ここはあなたの精神の境目。
あなたの辛い感情が閉じ込めてあるのです。
あなたの心が限界になりました。
だから、あなたはここに来た。
ここで諦めたら全てが終わっていました。
しかし、あなたは希望を捨ててはいない。
人生なんて80年くらいしかないのだから、
死ぬ事なんて諦めて生きたらいい。
辛いこと、悲しい事はこのさきだってあるでしょうが、
自分に絶望をしてはいけない。
あなたがあなたを信じなければ生きていたって
ただの抜け殻です。
自分に対しての敬意を失っている。
どうか、自分への敬意を失わないように。
あなたの幸福を心より願っております。」
「ありがとう。」
「それでは、いってらっしゃいませ。」
「さよなら。」
「さよなら。」
気が付くと私はベッドの上にいた。
もう夕方だ。どうやら一日中寝ていたらしい。
にしても、だ。
さっきまでなんだかリアルな夢を見ていた
よく思い出せないけど、私が、希望を持った夢。