第八話:昇華の指導と白黒の衝突
第弐楽章 強くてニューゲーム「ブラックホールの救済」
(すみません不手際がありました。訂正いたします)
主題歌 動画配信中 https://www.youtube.com/watch?v=SfqQaXrT6Dc
(学園都市の中庭。ベンチに座り、いずみは光を浴び、ちえは日陰を選んでいる)
いずみは、昨日も学園の落ち葉掃きや、困っている下級生の荷物持ちなどを積極的に行っていた。ドンベクの影響を強く受けた、彼女なりの「無償の愛」の実践だった。
いずみ: 「あー!今日も良いことした!誰かの役に立つって、心が温かくなるね!」
いずみはエメラルドグリーンの髪を揺らし、輝くような笑顔をちえに向けた。
ちえは、母メーテリュの眼鏡をかけ、手元の多次元タブレットに表示されたコンダクターの「昇華の理論」を凝視していた。茶栗色の髪が、白銀の光を反射している。
ちえ: 「いずみちゃん。ちょっと待って」 ちえは、いずみに近づき、諭すように話し始めた。
ちえ: 「君の愛は、まだ**『真心』のレベル**で、完全に自己満足の範疇だよ」
いずみ: 「え?自己満足?」
ちえ: 「うん。昨日、君が手伝った下級生の話。彼は本当は一人でその課題を乗り越えるべきだった。君が先に手を貸したことで、彼自身の**『知識を昇華させる機会』を奪ってしまったかもしれない。君の行動は、哲学的に見れば『善意による搾取』**のリスクを伴う」
いずみの表情が凍り付いた。彼女の純粋な直感的な愛が、ちえの冷徹な知識による理論で否定された瞬間だった。
ガイア(妖精の声): 「ちえ様!ひどい!いずみ様の愛を否定するなんて!」 ミューズ(妖精の声): 「でも、ちえ様の言ってることは論理的には正しいわ。愛は知識で武装しないと、ただの自己満足で終わってしまうのよ」
ちえは、自身の黒の花嫁衣裳を連想させるような、理論の鎧をまとっていた。
ちえ: 「私たちが目指すのは、無償の愛を**『母の愛』、そして『創造の愛』へと昇華させること。そのためには、君の絶対音感で聴く『愛の音色』を、私が知識で分析し、設計し直す**必要がある」
ちえは、首元のダイヤのネックレスを握りしめ、強い眼差しでいずみを見据えた。彼女の行動の裏には、**「私は知識で君の力を支配し、君の愛されたい渇望を満たす」**という、ブラックホールの本能が隠されていた。
いずみ: 「ちえちゃんは、私が間違ってるって言いたいの?」
ちえ: 「違う。君の『真心』は尊い。でも、真理は感性だけでは掴めない。私には、君の愛を次元を昇るための『不完全な鍵』にする知識がある。だから、これからは私の指導で、君の愛を理論的に再構築する」
いずみは困惑した。彼女の白の花嫁衣裳の清らかさが、ちえの黒の理論によって汚されるような、強烈な不協和音を胸に感じていた。
(第八話終)




