第拾六話:最初の妻と愛の探求のパートナー
(学園都市の部屋。コンダクターは目覚め、いずみとちえがその傍らにいる)
コンダクターは、いずみの無償の愛の波動と、ちえの救済の知識によって、魂の悲しみから完全に解放された。彼はゆっくりと体を起こし、まだ感情の余韻が残る二人を見つめた。
いずみは、白い花嫁衣裳の清らかさをもって、静かにコンダクターを見つめている。 ちえは、黒い花嫁衣裳を連想させる制服のまま、自分の渇望を隠すように冷たい表情を保っている。
コンダクター: 「ちえ……、いずみ。君たちの愛が、私を救った。しかし、君たちの心の中には、愛の不協和音が響いている」
ちえは、その言葉に顔を上げた。
ちえ: 「コンダクター。決めてください。私と、いずみ。どちらが、あなたにとって真に必要な妻ですか? 私の愛は、知識と昇華を伴う。いずみの愛は、感情と直感のみ。どちらが、あなたの真理の探求にふさわしい?」
コンダクターは、静かに頷いた。彼の瞳には、哲学者の叡智と、夫としての愛が混ざり合っていた。
コンダクター: 「私には、どちらの愛も必要だ。ちえ、君の愛がブラックホールの如く、知識と悲しみを吸収し、昇華させる力であるならば、いずみの愛は、ビッグバンの如く、無から光を生み出し、魂の根源に触れる力だ」
コンダクターは、まずいずみに手を差し出した。
コンダクター: 「いずみ。君こそ、私が最初に愛し、最も純粋な真心を捧げてくれた存在だ。君は、私の**『最初の妻』として、その無垢な愛**の光をもって、私の魂の指針となってほしい」
いずみのエメラルドグリーンの瞳が輝き、彼女は喜びで静かに頷いた。
次に、コンダクターはちえの冷たい手を取った。
コンダクター: 「ちえ。君は、母メーテリュの知識を受け継ぎ、理論と理屈で愛の真理を探求する。君は私の**『愛の探求のパートナー(ラブ・エクスプロレーション・パートナー)』だ。愛されたいという君の渇望**を、**愛の真理**の解明という使命に昇華させてほしい」
ちえは、**「最初の妻」の座を得られなかった悔しさに唇を噛んだが、「愛の探求のパートナー」という役割に、自身の知識**を活かせる道を見出した。彼女は涙をこらえ、使命を受け入れた。
コンダクター: 「では、次の課題を始める。ロジカ先生が投げかけた**『水槽の脳の問い』**だ」
コンダクターは、**三つの問い(魚、牛、ウイルス)**を二人に提示した。
コンダクター: 「これは、人類の謙虚さの喪失を問う、根源的な問いだ。いずみ、君は真心で。ちえ、君は知識で。二つの愛の視点から、この問いに答えを出すのだ。これが、私たちの乗愛の協奏曲の、本当の始まりだ」
いずみとちえは、最初の妻と探求のパートナーとして、複雑に絡み合った感情を抱えながら、新たな試練に立ち向かうことを誓った。
(第拾六話終)




